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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
22章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、喧嘩爺ちゃんに会いに行く。

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魔王ちゃんと約束されたエンカウント

「珍しいメンバーだよね」



 僕は振り返り、後ろ向きに歩きながらミーシャとガイル、アルマリアとロイさんに目を向けて言った。

 バイツロンドさんの居場所が判明した翌日、僕はこのメンバーで彼の下に向かっていた。

 街道から少しそれた道で、あまり人が通らないのか鬱蒼とした森と同化しかけている。



「まあ珍しいっちゃ珍しいな。特にルナとアヤメが付いて来ないなんてな」



「そうなんだよね。特にルナちゃんはバイツロンドさんのことを知っているのか、何とも微妙な顔をするんだよね」



「ラムダ様もそうですね。狂仁のバイツロンド=ルクシュ……私も何度か話には聞いていましたが、こうして会いに行くのは初めてですね」



「女神様と知り合いなんて聞いたこともないですよ~、ガイルさんはどうですか~?」



「いや俺も知らねぇよ。そもそも俺はあの爺さんがヤバい強いジジイという情報以外持ってねぇんだよ」



「あとパルミールと好んで一緒にいるってくらいですね~」



「パルミールがガキの頃から一緒だったよな?」



 ギルドで一緒に過ごしていたはずのガイルとアルマリアでさえ、バイツロンドという人物に関しての情報はこの程度だった。



 僕とミーシャとロイさんはバイツロンドさんとは完全に初対面で、こうして話しを聞くことしか出来ない。

 ただ向こう側からしたら、僕とミーシャに限ってはアリシアちゃんから多少聞いているかもしれない。



 ふと、僕の横目にミーシャの不機嫌顔が目に入った。



「おやミーシャ、ご機嫌斜め?」



「……この面子、戦力過多なのよ。魔物が一切寄ってこないわ、暇」



「あ~」



 ガイルが喉を鳴らし、アルマリアが自信満々に胸を張り、ロイさんが控えめに頭を下げた。

 確かに現在僕が集められる最強メンバーではあるな。



「これならリア・ファルで移動しても良かったかもね。ついでに魔物の間引きでもしようかななって思ったけれど、確かに誰もこっちに来ないねぇ」



「リア・ファル……確かお前さんの変形魔剣か? ちょっと乗ってみたかったんだよな」



「あ、私もです~。乗り心地がどうなのか知りたかったんですよね」



「エレノーラがまた乗りたいと何度も話していましたよ」



「それじゃあ帰りはそうしようか」



 みんなの頷く顔を見て、僕はクルリと前を向いて歩みを元に戻すのだけれど――。



「そういえば――」



 僕が前を向いたまま談笑を続けようとするけれど一瞬、その一歩をためらう。というより、一切足を踏み出せなくなる。



「ん、リョカ?」



「……こう無防備に足を踏み込んで良いものか迷っちゃうよねぇ」



「リョカさん、私が先行しましょうか?」



「んにゃ、交渉しに来たのは僕だしね、人任せには出来ないよ」




 僕はその一歩を踏み出した。

 しかしそれと同時に遠くから聞こえる咆哮、獣とは違う人の声だ。

 だがこの声、とんでもない戦闘圧が込められており、空気が破裂するように震えている。



 そして次の瞬間、どこからかは今の一瞬では判断できなかったけれど、大岩が飛んできたから、僕はすかさず素晴らしき魔王オーラを数十放ち、そのまま岩に向かって歩き出す。



「ふんっ!」



「よっと~」



 飛んできた大岩をミーシャが黒くなった拳で粉砕し、粉々になった欠片をアルマリアがグリッドジャンプでどこかに飛ばす。



 そして僕の前で岩を粉砕したまま腕を伸ばしている体勢でミーシャが嗤いながら口を開く。



「リョカ、このジジイはもらうわ」



「へいへい、勝手になさいって」



「おいおいミーシャ、俺もジジイと久々に喧嘩してぇんだよ。混ぜてくれや」



「まとめて顔面へこませてやるわよ」



「ハッ、上等」



 ミーシャとガイルが飛び出して行ったのを横目に、僕がため息をつくと背後のロイさんに意識を向ける。



「一応大丈夫だと思うけれど、ロイさん、アルマリアのことお願いね」



「ええ、本当に手のかかることで」



「なんですか~もう、私は大丈夫ですよ~っと、グリッドジャンプ――」



「精霊使いを舐めすぎです」



 途端ロイさんがアルマリアに駆け寄って抱き寄せ、現闇で生成した葉と茎で編まれたマントを翻し、空から広範囲に降ってきた岩の飛礫を防いだ。

 僕も片手間に頭上に盾を作り、それを防ぎながら前に進んでいく。



 まあ戦闘は4人に任せて問題ないだろうと、僕は岩の飛沫が止んだのを確認して木陰に腰を下ろす。



 ルナちゃんに無理を言ってついて来てもらえばよかったと後悔しつつ、僕は欠伸をしながら薬巻に火を点すのだった。

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