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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
21章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、故郷の戦いを思い出す。

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魔王ちゃんと変わり始める星の輝き

「それじゃあリード、お願いね」



「ほいほいお嬢様、このリーデッヒ=カロナ、そして極星ギルド……いや、グエングリッター壱の商業ギルド、『星呼びの道具屋(ミルキーウェイ)』が責任を持って請け負いました」



「頼りにしているよ。リードの手腕で、スピカとフィムちゃんが笑顔になれるかどうかかかっているんだからね」



 スピカやフィムちゃん、マルエッダさんたちがジュウモンジのところに行っている間、僕は現極星たちのギルド運営の見直しに携わっていた。



 リードのいるミルキーウェイの流通の確認や売り上げのデータ記入、サンディリーデとの取引を煮詰めていき、それをリードへ引き継ぎ。

 教育に携わっているギルドへの教科書の提案、そして教育の一本化等々。



 さらにキョウカさんのいる『秩序を守る星の瞬きランバイルアストライア』には、私のいた世界で言う交番の役割を持つ施設の設置を提案した。



「ふ~ん、国中にギルドの支店とは違う、小さな建物をね~」



「秩序を司るランバイルアストライアが目に入るところにいるだけで犯罪の抑止力にもなるし、街の中で何か起きてもすぐに対応できるでしょ? キョウカさんのところはグエングリッターで一番大きくて人も多いから適任だと思うんだけれど、どうかな?」



「……うん、でもこれ、あたしたちの仕事評価されにくくないか? 別に犯罪が起きてほしいってわけじゃないんだけれど、これじゃあうちから極星が出しにくい」



「そっ、だからキョウカさんのところの基準は減点式で行きたいの」



「減点?」



「何か起きたら評価を下げる。でも隠されてしまうと問題だから、定期的に外部のギルドと協力して調査を行なう。って感じでどうかな?」



「なるほど、つまり何も起きないことを目指せばそこを評価してくれるってことね」



「うん、でもそれだと退屈になっちゃうだろうから、ランバイルアストライアとヘカトンケイルに限っては――」



 僕はヴェインの代わりに来ているランガさんに目をやる。

 すると彼が頷いてくれてキョウカさんに近づいた。



「ブリンガーナイトへの人材派遣もお願いしたいです」



「ほ~、あたしらのギルドは秩序の維持だけでなく、ブリンガーナイトが担当する魔物退治も評価に加えてくれるっつうことか?」



「そういうことです」



「だがヘカトンケイルもか?」



「ヘカトンケイルには、キョウカさんたちが入り込めない場所の秩序、というより、あんまり表に出てきたくない人たちを纏めてほしいんですよ。それで最終的に、ブリンガーナイト、ランバイルアストライア、ヘカトンケイルをグエングリッターの防衛の要にしたいっていうのを考えています」



 キョウカさんが考え込む素振りを見せると、すぐに頷いてくれた。



「なるほど、あたしらが街の防衛、ブリンガーナイトが街の外の防衛、ヘカトンケイルが日の当たらない場所の防衛――この間のような大きな事件の際はあたしらが先頭に立てばいいってことだな?」



「そういうことです」



 まあ細かいことはまだまだあるけれど、そんな認識で十分だろう。

 僕は大きく伸びをして、薬巻に火を点すと煙を吐き出しながら改めて辺りを見渡す。



 何をやっているのだろうか僕は。



「しっかしリョカちゃん、もうグエングリッターのボスだね」



「……僕のいない間は、みんなで協力して進めてね」



「ああそうか、お前は帰っちゃうんだったな」



「すでにリョカさんがいなくなると回らなくなりそうなほどには依存している人がいますが」



 ランガさんが苦笑いで、すでに僕からの指示をずっと待っている極星に目を向けていた。



「僕、まだか弱い学生だよ」



「リョカお嬢様、そりゃあ無理ってもんですよ。さっき見せてもらった戦いの記録、これだけの極星を纏められる統一力、問題を解決するための発想力、ただの学生と名乗るのには無理がありますよ」



「確かにな。あんたは他所から来たにも関わらず、極星が極星たらしめるためのあらゆるを提案してくれている。しかも魔王でありながら人や女神を正しく導こうとしている。これで自分は学生だからなんて放り投げるなんていくらなんでもズルいだろ」



「……ちゃんとお家に帰りますからね?」



「そりゃ残念」



 キョウカさんが豪快に笑っている間に、僕は幾つかの書類を書き終えて、それをそれぞれの極星に渡した。



 この書類はギルドごとの役割に沿った僕からの提案であり、どの提案なら受け入れることが出来るかを記入してもらえるようにした。



「出来ることと出来ないことは当然あるからね。それを見てどのくらいなら実現できるのかを教えてほしいです」



 極星たちが頷き、書類へと目を通し始めた。

 そうして僕が肩を竦めると、傍にお茶がおかれた。



「ああ、ウルチルくんありがとう。雑用みたいなことをやらせちゃってごめんね」



「いえいえ、リョカさんたちのおかげで姉さんが夢に近づけたんです。だからせめてもの恩返しに、自分に出来ることはしておきたくて」



「ウルチルくんは良い子だねぇ」



「そ、そんな! それに自分はあまり強くないし、こうやって事務仕事の方が向いているっていうか」



「やっていて楽しい?」



「はい、姉さんがあんなのなので、自分はいつも裏方でしたし、姉さんが楽しそうならそれでいいかなって」



 僕は少し感動して、ウルチルくんを抱き寄せる。

 セルネくんがいなくて本当に良かった。



「本当にいい子だねぇ。それじゃあウルチルくんはこれからはランガさんにたくさん学ばないとね」



「ランガさんにですか?」



 首を傾げるウルチルくんに、微笑みを浮かべたランガさんが近づいた。



「それはいいですね。ウルチルには、ぜひ振り回され方というものを教えたいと考えていましたし」



「ヴェインって何だかんだやらかしますからね~」



「ええ、事の治め方が嫌でも身に付きますよ」



「……あ~、姉さんもそうなるのかなぁ? リョカさんたちと旅に出る前は、自分は普通のまともな人ですからみたいな雰囲気出していたのに」



「もう遅いかなぁ」



「遅いですね。ウルミラはすでに1つのギルドで抱えられる要領を超えるほど強くなっています。これから彼女を通じて厄介ごとが舞い込むようになりますよ」



「ウルチルくんが支えてあげないとね」



「はい、頑張ります!」



 やる気のある返事に、僕もランガさんも顔を見合わせて微笑んだ。

 こうして若い子たちが頑張っていると、何だかやる気が出てくる。

 当然僕もまだ若い乙女だけれど、生きた年数で言うとそれなりのためにどうしてもこの状況に和んでしまう。



 僕は改めて辺りを見渡し、今僕が出来ることをしていこうと決意するのだった。

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