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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
21章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、故郷の戦いを思い出す。

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魔王ちゃんと太陽と豊穣

「なんというか、リョカとミーシャがとんでもなく強い理由がちょっとわかるわね。サンディリーデの人たち、異常よ」



「ここからでもビリビリするな。戦闘に参加していたらどうなっていたのやら」



 スピカとヴェインがガイルとロイさんの濃い戦闘圧に恐々としていた。



 好きなだけ暴れては良いけれど、あれ大丈夫だろうか。本気でやり合う気満々の顔してらぁ。

 少しは体を労わってほしいところだけれど……無理だろうな。



 僕が指を鳴らすと、ガイルとロイさんに近づいた映像が観戦席の目の前に現れた。

 ルナちゃんの鏡を参考にしたもので、話しも良く聞こえる。



 するとそのルナちゃんがスピカに向かって口を開いたのが見えた。



「あ、サンディリーデが異常なのではなくて、リョカさんとミーシャさんが出てきてから異様に強くなったが正しいですよ」



「……リョカ、あなた」



「え、風評被害」



 ルナちゃんの頭を撫でていると、ガイルとロイさんが動き出した。



 ロイさんが血思体改め、ブラックラックレギオンを生成し、一気に100ほどの分体がガイルを囲った。



「この戦法は相変わらずかよ」



「これくらい抜けてもらわなければ、私と相対する勇者としては力不足なので」



「相変わらず鼻に突く言い方しやがるなおめぇはよ」



 飛び掛かってくるクマの分体をガイルが聖剣を生成して迎え撃つ。

 ロイさんのブラックラックレギオンは血思体と違って、元々の力も強力になっており、あれに傀来とアークブリューナクを付与されれば、さすがのガイルでも厳しいのではないだろうか。



「しゃらくせえな! そこにいると一緒に燃えちまうぞ!」



 しかしガイルの聖剣が金色に……いや、なんだあれ? 聖剣から漏れ出た光がパチパチと弾けている。



「もろともぶっ飛べ」



「これは、ルイス(・・・)の――」



 まるで光が燃料にでもなっているかのように次々と炎を煽る。



 聖剣に吸収された月と星の光がまるで太陽のように高圧のエネルギーを発生させ、そのエネルギーを地へと叩きつけた。



「マズっ――」



 目を覆うほどの閃光、それは皮膚を焼き尽くすほどの圧倒的な熱で、僕はすぐにガイルとロイさんの周りに盾を作り上げた。



 盾から亀裂が走る音、月の光で延々と強化を繰り返しても何度も続く爆発に耐えるのがやっとだった。



「どんな火力してんだあの馬鹿」



「というかロイは」



 煙が収まり、僕も盾を解除するとその場にガイルとロイさんが立っており、2人とも一歩も動かなかった。

 けれどこの爆発で分体はすべて蒸発しており、2人の間には妙な緊張が走っていた。



「無傷かよ」



「いえ、肝を冷やしましたよ。さすが今期最良の勇者です」



「はっ、そう言ってくれても俺にはお前さんが今何したのかもわかってねぇんだ。倒すつもりだったんだがよ」



「早々手の内など明かしませんよ。それに今のあなたの聖剣、ルイスが交じっていますね。彼の信仰ですか?」



「ああ、あいつの信仰が俺の中でお前をぶん殴りたいだとよ」



「でしょうね。本当に厄介な力を付けてきましたね」



「お互い様だろうが」



 ロイさんがクツクツと喉を鳴らして笑う。それに合わせるように、ガイルも大口を開けて豪快に笑う。

 そして空気が張り詰めて、それが破裂した瞬間、2人同時に飛び出した。



「ブッ飛ばす!」



「如何様にも――『芽吹く麦は信仰の如く(オメガブリューナク)』」



 ロイさんが立っていた場所の土が急速にやせていくのが目でもわかる。あれは――。



「神官のスキルをあたしの加護で強化しているね」



「あれ、大地から力を得ていますね。膨大な力を体に付与しています……ラムダお姉ちゃん、お姉ちゃんの信徒強すぎでは?」



 胸を張るラムダ様にテッドちゃんが肩を竦めた。

 そりゃあそうか、ブラッドヴァンばかり強化されているからそっちに目がいっていたけれど、あのひと生粋の神官だ。



 ガイルの聖剣がロイさんを襲おうと繰り出されたけれど、あのパパ魔王はあくまでもクールに、それでいて余裕を感じさせる空気感で、腕を上げた。



「『現闇・大地は我が支配に在り(ハイフォルト・ロウ)』」



 ロイさんの足元を覆った闇が大地に融けていき、そこから突然彼の手に伸びるように木が生えた。

 その木を掴んだロイさんが大地からそれを引き抜き、ガイルの聖剣と打ち合わせた。



「うんな棒っきれが――」



 ガイルの聖剣が炎を上げる。

 あんな棒だけではさすがに伏せぎきれないと僕が身構えると、その棒から大きな葉っぱが伸び、ガイルの腕を聖剣ごと包んでしまった。



「なに」



「燃やせる物なら燃やしてみるが良い。ただしこの植物、加工済みですよ」



 爆発音、けれどそれは葉の中でだけで、モクモクと煙だけが上がっていた。

 そしてロイさんは棒を――いやあれは武器なのだろう。長さ2メートルはあるロッド。そのロッドをガイルに放つ。



「がっ!」



「武器など使うのはいつぶりでしょうか。神官の時分、随分と頼っていましたからね」



 ガイルが吹っ飛んでいき、彼の通り道に砂煙が上がっていた。

 それを視界に入れながら、ロイさんがロッドをクルクルと回し、まるで舞っているかのようにロッドを構え直した。



「うをぉぉっ! 師匠かっけぇ!」



「ええ、あれが本来のロイ様の戦い方なのですわね」



 ロイさんガチ勢が少しうるさいな。

 それよりも……あの植物、ガイルの炎を浴びて一切燃えていなかった。というかあれって植物か?



「いや違う。そもそも爆発を防いだってことはとんでもなく硬い植物?」



「リョカちゃん正解だよ。あれ、こっちにはない植物」



「というより竜界にある植物ですね。竜の住む地は人が生きていけないほど暑いので、そもそも熱に強く、溶岩に晒されても生きていけると言う進化をした……植物の名前はありませんが、以前竜界に紛れ込んだマルティエーターが竜草と呼んでいましたね」



「っつうかロイの奴、世界に存在する植物なら全部生成可能になってねぇか? 現闇で模倣しているとはいえ、あれほぼ純度100%植物よ」



「そもそもあたしの加護で植物は生成できるようになっているからね。そこに現闇で加工したんじゃないかな? あたしの信者最高すぎる」



 女神さま大絶賛のロイさんに、ガイルが立ち上がって口から流れた血を拭って嗤う。



「やっぱこうじゃなくちゃな。魔王とやり合うんだ、これほどの昂ぶりがなきゃよぉ!」



「ええ、私も、魔王として初めて戦う(・・・・・・・・・・)のがあなたで良かったですよ」



 またしても笑い声を上げて、次の瞬間には姿を消した2人に、僕はため息を吐く。




「ガイルもいい意味で相手に影響を与えるからなぁ。まあ楽しそうだしいっか」



 2人の戦いを横目に、僕はもう一方の問題児に目を向けるのだった。

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