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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
20章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、勇者に再会する。

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魔王ちゃんと膨れ上がる意欲

「ふ~ん、バイツロンドね。いいんじゃない」



 会議も終わり、円卓から出てアストラルセイレーン本部の広間に顔を出すと、外に出ていたみんなが戻って来ていた。



「リョカさん、ちゃんと父さんのこと捜してくれていたんですね~。正直私はもうずっと楽しいのでいいやってなってましたぁ」



「いやお前、今ギルドをマナとオルタ、クレイン、タクトとジンギで回してるが、ギルドマスターっつう肩書がないと出来ないことも多くて愚痴ってたぞ」



 流石オタクたち、出発前にマナさんを助けてあげるように言っといてよかった。

 それにしてもジンギくんもギルドを回しているのか、少し意外。



「ジンギが意外ですの?」



「うん、そういうの苦手かと」



「苦手ですわよ。でもあれがやっているのは依頼の調査、ガイルさんやテッカさんからもお墨付きの危機察知を存分に発揮しているのですわ」



「ジンギ、他の冒険者さんたちからも高評価なんだよ。ギフトがギフトだし、守りの要として新人冒険者や力の足りない冒険者さんについて行くこともあるし」



「ゼプテン冒険者ギルドがどんどん潤っていきますよ~」



「アルマリア、ギルドの層が厚くなるのは喜ぶべきですが、自身のやるべきことを手放しで喜ぶのはよろしくないです」



「む~……じゃあロイさんも手伝ってくださいよぅ」



「そのつもりですよ。ですが、甘えさせるつもりで手伝うわけではありませんよ」



 お父さん力を発揮しているロイさんをほのぼのとして見ていると、ガイルが小さく笑っていた。

 この関係はさすがに予想出来ていなかったのだろう。



「甘えん坊と甘やかしたがりが一緒だとこうなんだな」



「しかもエクストラコード2つ積みという生粋の甘えん坊だよ。ガイル今アルマリアと真正面から戦って勝てる?」



「まだまだ負けてやんねぇよ」



「言いましたね~? 超強くなったギルドマスターの力に慄くと良いですよ」



「お姉ちゃんお姉ちゃん、エレと一緒に打倒金色炎さんです!」



「いいですね、一緒にガイルさんをボコボコにしましょ~」



「……エレノーラは補助役として強すぎんだろ。それなら俺ソフィア連れてくるわ」



 チーム戦か。あっちに戻った時、また学園主催で何か企画を提案しても良いかもしれない。

 と、サンディリーデ組で会話を弾ませていると、グエングリッター……主にヴェインが頭を抱えていた。



「え? 俺の知らないところで極星の選出方法が変わったんだが」



「ロイといつまでも遊んでいるのが悪い」



「遊んでないです~、修行してました~」



「腹立つわねこの男」



 呆れるスピカだったけれど、マルエッダさんが心配気な顔で彼女を見ていた。



「スピリカ、本当にいいのですか?」



「はい、現段階で極星を名乗れるほど私は厚かましくないです。それにそもそも今回の事件、私が勝手な行動をしてジュウモンジに捕まったのも発端ですし、やっぱりまだまだ学ばせてもらいたいです」



「リョカさんとミーシャさんが良い影響になりましたね。ですがわたくしも強い聖女とはまだ言えません。ですから一緒に極星としての強さを探していきましょう」



「はい――っと、ウルミラ勝手に決めちゃってごめんなさい」



「いえいえ、ギルドを通さない極星の選出なんて考えもしなかったので驚いていますけれど、私は何だか楽しみです」



「あんなにブリンガーナイトが好きだと言ってくれたウルミラはもういないのか……」



「ボス、人聞きの悪いことを言わないでくださいよ。今でもボスのこともブリンガーナイトも大好きですよ。でも、私のなりたい極星に近づきやすくなったかなって。正直、私はボスに勝てないので、ボスを押し退けて極星にはなれないですから」



「いやだが、お前は本当に強くなっているだろう」



 僕は首を横に振り、ヴェインにそうじゃないと言う。



「そういうことじゃなくてね。ウルミラは腕力云々じゃなくて、10年前のエクリプスエイドで自分を助けてくれた極星に憧れているって言ってんだよ。こんな可愛い部下をいつまでも幻滅させるのならヴェインの基準を厳しくするよ」



「……うぐっ、リョカは本当に痛いところばかりつくね。わかってはいるんだけれど、さっきガイルと戦っていたウルミラが本当にすごくて、俺もちょっと焦っているんだよ」



「ヴェインくん、あなたの強さは純粋な腕力ではありません。今のウルミラさんなら、勝つための道筋はざっと思いつくだけで10以上はあります。それを瞬時に頭に思い浮かべ、実行する力――君が伸ばすべきはそこです。今はまだ実感しづらいでしょうが、着々と身に付いていますよ」



「みんなが俺を甘やかしてくれる」



「ヴェインさんも一緒に甘えん坊系ギルドマスター目指しますかぁ?」



 適度な蜜は体にいい。

 ならばこそ、甘やかされて強くなるのもまた道理ではないだろうか。



 今のところ甘やかされて良い結果に進んでいる子たちに目を向けて、僕はホッコリと息を漏らす。



「楽しんでいるところわりぃがよ、バイツロンドの爺さんが手を貸してくれんのかね?」



「大丈夫じゃない? 話を聞く限り、僕は彼が欲しいものを用意できそうだし。報酬で釣るつもりはないけれど、正直アリシアちゃんのこととかもあるし、目の届くところにいてほしいんだよね」



「なるほどな。まっ、俺も久々に会いたいし、お前について行くかね」



「あいよ。ところでさ、なんでみんなここにいるの? 僕に用事?」



 もっと外で遊んでくるのかと思っていたけれど、どういうわけか同じタイミングで戻ってきたからなにかあるのかと勘ぐっている。

 するとミーシャが傍に来たかと思うと、突然僕の両肩を掴んできた。



「リョカ、絶界」



「はい?」



「セルネと魔王種倒しに行ってくるわ」



「待て待て何の話?」



「おっ、噂の絶界とやらが見れんのか? おいロイ、お前ちと俺と遊んでくれよ」



「……本当に好戦的な勇者ですね。まあ、私も少し運動したい気分でしたので付き合いますよ」



 僕が女神さまーズに目を向けると、それぞれが一様にその瞳を逸らしていた。



「OKわかった。君たち鬱憤が溜まってるってことだね? スピカとウルミラ、グエングリッター組はどうする?」



「いや見ているだけよ。そんな危険地帯足を踏み入れたくないに決まっているでしょう」



「う~ん……」



「ウルミラ駄目よ。今日は見学だけにしておきましょう」



「は~い」



 僕がため息を吐くと、ルナちゃんが僕を見上げてきた。

 心配してくれているのだろう。

 でもやりようによっては、また3日寝続けるなんてことを回避できるかもしれない。それを試してみようと思う。



「大丈夫ですか?」



「大丈夫ですよ。それにこんだけ熱気を纏わせているこいつらを放置する方が毒ですし」



「わかりました。わたくしも少し手伝いますね」



「ありがとうルナちゃん、終わったら一緒にお茶しようね」



「はいっ」



 そうして、僕は戦いたいだけの戦闘大好きっ子たちを満足させるために、世界を生成するのだった。

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