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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
20章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、勇者に再会する。

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聖女ちゃんと花より団子より闘争

「それでミーシャ、一体どこに向かっているの?」



「魔物に詳しい奴に話を聞きに行くのよ」



「魔物に詳しい?」



 コテンと首を傾げるセルネの頭を一撫でし、あたしはミーティアにある公園の噴水前で優雅にお茶をしている一団を目に入れた。



「あれって」



「アルマリア、ガイルが来たわよ」



「うぇ? ってセルネさん、お久しぶりです~」



「こんにちはアルマリアさん……周りの方は?」



 アルマリア、エレノーラ、マルエッダ、ラムダ、そういえばセルネはエレノーラの姿を見たことがなかったのだった。



「ん、いや、ロイさんの戦いを見た時に……」



「あっ、セルネお兄ちゃんだ。エレだよ~」



「エレノーラ? クマじゃなくなってる」



「エクストラコードがとんでもなく強力だから、あんた戦う時は気を付けなさい」



「……使えるのか」



 大袈裟に肩を落としたセルネが、ぴょこぴょこと歩んできたエレノーラを撫でた。



 そしてあたしはセルネを紹介しようと彼女らが座っている席に同席しようとすると、ラムダが興味深そうに勇者を見ている。



「ふ~ん、君が銀獣の勇者、魔王に銀を授けられた勇者、魔王の膝元勇者……随分と興味深い聖剣を持っているね」



「えっとミーシャ、この方は?」



「ラムダよ」



「ル・ラムダの女神で、ロイとエレノーラを信者に持つ豊神よ」



「精霊女王様」



 セルネが驚いたのも束の間、すぐに頭を下げた。



「いいっていいって、ルナやアヤメと同じように気軽に接して。しっかし聞いてはいたけれど、本当にリョカちゃんからだけの信仰で聖剣を作っちゃったんだね」



「え、ええ、俺はまだ半人前の勇者です。だから世界を担うほどの力なんてないので、たった1つの約束を剣にしました」



「そっちの方が面倒なはずなんだけれど、いやリョカちゃんの信仰があってこそか。あの子人1人に向ける感情が大きすぎるんだよね」



 きっと難しい話だ。

 あたしは適当に聞き流し、エレノーラを膝の上に呼んで頬をこなる。



「むにゅむ~にゅ。ミーシャお姉ちゃ~ん?」



「ラムダの話は年寄り臭くてつまらないのよ」



「……ちょっとアヤメ~、信者の教育どうなってるのさ~」



「実際ババア臭いからなお前」



 笑顔のまま額に青筋を浮かべたラムダに、エレノーラがあたしの腕から身を乗り出して口を開いた。



「そんなことないです! ラムダ様とっても優しい匂いで、故郷を思い出す暖かい匂いなんです」



「エレノーラは良い子だね~。ギフトをやろう」



「おいやるな。ポンポンポンポンやって良いものじゃねぇんだよ」



 アヤメも席に着き、ラムダを咎めていると、マルエッダも頭を抱えた。



「ミーシャさんの在り方はとても強い人のものですが、女神さまに対するあれこれには未だに慣れませんわ。っと、わたくし、マルエッダ=フローレンと申します」



「え~っと、俺が昔聞いた極星の……先代の星の聖女様?」



 マルエッダが頷き、セルネも自身の名を名乗った。



「ルーデル様ですか。確かサンディリーデ……王都や街道の防衛を司っている」



「はい、そのルーデルです。とはいえ、それは父や祖父の功績なので、俺のことではありませんけれど」



「けれど勇者の道に進んだのでしょう? それならお父様方も鼻が高いのではないですか?」



「……う~ん?」



「マルエッダ、さっきの話聞いてたろ? こいつリョカに首ったけなんだよ」



「あ~……」



「普段は優秀なのですけれど~、リョカさんがいるともうまっしぐらですよ~」



「そ、そんなにひどくは――」



「あ、リョカ」



「えっ――」



 尻尾と耳を生やし、ブンブンと振りながら辺りを見渡すセルネに、女性陣が生暖かい視線を彼に投げた。



「も~ミーシャぁ」



「はいはい悪かったわよ。さっきもヴェイン殺そうとしていたものね」



「こ、殺さないよ」



「あの男また何かやったのですか?」



「スピカにやらかしたことを暴露されただけよ」



 マルエッダがなるほどと納得した後、セルネをそっと見ていた。



「つまり、彼はヴェインより強いのですか?」



「強いわね。リョカからの信仰のせいで変わった聖剣を持っていて、尚且つガイルに扱かれているから今はジュウモンジとどっこいくらいかしらね」



「サンディリーデというか、聖グレゴリーゼ学園は戦争でもするのではというくらい戦力が偏っていますわね」



「別にグエングリッター落とすだけならあたしとリョカとソフィアで事足りるわよ」



 マルエッダが顔を引きつらせており、それを見たアヤメがあたしの頭をはたいてきた。



「聖女が国を落とせるって自慢気にするんじゃないわよ」



「ジブリッド、グリムガント、カルタスっていう国の重鎮が強い国なんですよ」




「聞いただけで目眩がするような顔ぶれですわね」



 セルネもまたマルエッダから顔を逸らしており、あたしは首を傾げる。



「それでミーシャさん、ここにはガイルさんたちが来たことの報告ですか~?」



「あら、あんたならガイルと喧嘩でもしに行くのかと思ったけれど、そうでもないのね」



「私だって場所くらい弁えますよ~。というか今は客人なので、あまり暴れ回るとゼプテンの信用が下がっちゃうですよ~。というかガイルさんとセルネさんだけですか?」



「あとはランファね」



「ランファさんですか?」



「フィムが見初めた勇者だぜ」



「そうなの?」



「七つ星の極星。さっきフィムの奴が強引に加護を与えやがった」



「七つ星っ!」



 マルエッダが驚き声を上げたのだけれど、あたしはよくわからずアヤメに説明を求める。



「マルエッダとスピカでも三ツ星だ。その倍近くの素質をランファは持っていたのよ。ちなみにミルドで五つ星だ」



「へ~、やるじゃないあの子」



「え、ランファさん勇者になったんですかぁ?」



「いやランファすっごい強いですよ。まず火力がヤバい。次に冷静な判断力、そしてリョカ並みに柔らかい思考。俺すぐに追い抜かれましたよ」



「そんなことないでしょ。あんたもさっきの見る限り、相当強くなっているわよ」



「ありがとミーシャ。でもランファの場合、近づくのが本当に困難なんだよ。雷が常にバチバチしているし。ガイルさん……というかテッカさんが近づけなくてランファに百壊投げまくっていたよ」



「相変わらず大人げないわねあの男」



 向こうの話ももっと来ていたかったけれど、あたしは目的があったことを思い出し、ラムダに目を向けた。



「っとそうだわ、あたしラムダに用があったのよ」



「ん~? あたしに?」



「そっ、魔王種出して」



「はい?」



 せっかくの機会だ。あたしの拳も、セルネの聖剣も、どれだけ役立つのか確認しておきたい。

 けれど並の魔物では確認すらできずに塵になってしまう。

 そこでアルマリアとロイが倒したという魔王種に目を付けた。



「あのミーシャ、魔物を倒しに行くと言っていたけれど、もしかしてラムダ様って」



「つい最近魔物を司るようになったのよ。ほら、早く」



「ちょ、ちょっと待とうかミーシャちゃん。さすがに何もないのに魔王種を作り出すのは怒られちゃうよ」



「ルナの許可がいるのね? アヤメ」



「……ラムダ諦めろ。このケダモノ、やると決めたらマジでどんな手でも使ってくるわよ。最終的に神格奪われっぞ。その方が問題だろ」



 ラムダが頭を抱えてため息を吐いたけれど、すぐに呆れたように息を吐き、わかったと答えた。



「ミーシャちゃんにはテッドの件でお世話になったからね。でもこんなところで出せないよ」



「リョカ連れてくるわ」



「絶界使わせんなよ。また3日寝込むことになるわよ」



 そんなことはわかっている。

 あたしはラムダの手を取り、彼女を連れて行こうとすると、アルマリアもエレノーラもマルエッダも立ち上がった。



「あんたたちも来るの?」



「面白そうなので~」



「エレも魔王種見てみたいです」



「わたくしもミーシャさんの戦いには興味があるので」



 結局、全員でリョカの下に戻ることになったのだった。

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