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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
20章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、勇者に再会する。

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魔王ちゃんと他国交流

 ガイルとセルネくん、ランファちゃんと合流し、スピカが3人の案内を買って出てくれたために、その間に僕はお出迎え用の食事とお菓子を用意していた。



 食事が出来上がり、ずっと調理を見ていたフィムちゃんにご飯が出来たことをガイルたちについて行ったアヤメちゃんに伝えるようにお願いし、僕はルナちゃんとフィムちゃんテッドちゃん、そしてロイさんとウルミラに手伝ってもらい、食事を広間へと運んだ。



 すでにガイルたちは席に着いており、僕はテーブルに食事を並べる。



「リョカママ腹減った、早く」



「この獣少し見ない間に堕落し過ぎだろ。テッカが見たら泣くぞ」



「最近テッカさんがテルネさまを見て羨ましいなとソフィアに言っていましたわね」



 アヤメちゃんがビクと肩を跳ねさせ、スッと目を逸らした。



「ま、まあまあ、アヤメ様も偉大な女神様の一柱ですし、仕事も大変だろうからここくらいではね」



 セルネくんの精一杯のフォローに、ルナちゃんが首を横に振った。セルネくんも苦笑いで目を逸らす。



「サンディリーデの女神様への信仰、一体どうなっているのかしら?」



「リョカとミーシャがなぁ」



「ちょっと僕たちのせいにしないでくれる?」



 スピカのふとした疑問に、ガイルが答えたけれど、少なくともこれだけ親しいのは僕たちのせいではない。

 アヤメちゃんが甘え獣になったのも僕のせいではないと声を大にして言いたい。



「ランファ、後であたしと戦いなさい」



「嫌に決まっていますわ。先ほどスピカに聞きましたけれど、あなたまた聖女離れしたことをしたようですわね」



「良いじゃねぇかランファ、俺が代わってほしい位だぞ」



「なら代わってあげますわ。戦闘狂は戦闘狂同士で戯れていなさいな」



「ガイルとやると国の形が変わるわ。嫌ならセルネで我慢するわ」



「国の形が変わるほどの火力とどう戦えと? 俺だって嫌だよ」



「さっきのあんた、中々良かったわよ。ほらすっかり極星の1人が隅で震えているわ」



 ミーシャの言う通り、ヴェインがロイさんの背に隠れていた。



「ヴェインくん、セルネくんは心優しい勇者ですよ。そんなに怯えることはありません」



「いやさっき絶対殺そうとしてきたって!」



 セルネくんがヴェインから顔を逸らした。

 あの子も悪いことをしたという認識はあるようだった。

 しかしガイルは随分と2人を仕上げてきたな。多分ヴェインとサシでやっても余裕で勝てるだろう。



「サンディリーデには強い人がたくさんいるのね。リョカとミーシャが特別だと思っていたわ」



「わたくしたちでもまったく相手にならない人もいますわよ。ソフィアとか」



「ソフィアはテルネの加護を受けてからさらに伸びたな。正直何も考えないで戦うと俺でも厳しいな」



「テルネ様って、知識と静寂の女神様よね? 加護を与えるのも珍しいと聞いたことがあるのだけれど」



 スピカの問いに、お菓子に手を伸ばしていたフィムちゃんが頷いた。



「ソフィア=カルタス、リョカお姉さまとミーシャお姉さまとの出会いで運命がまるっと変わった方です。しかもルナお姉さまと並ぶほど力のあるテルネ姉さまの加護持ち」



「ルナ様、テルネ様が加護を与えるのはいつぶりでしたっけ?」



「数百年ぶりですね。相当ソフィアさんが気に入ったようです」



 上手くやっているようで僕は安心する。

 そして手を叩き視線を集め、おしゃべりも良いけれど。と、食事の手を止めている面々に料理を食べるように促した。



「あとは? 他の奴も随分強くなったんでしょう?」



「……カナデ」



 ランファちゃんが苦々しい顔を浮かべた。

 あの子何かやったのだろうか。



「というかカナデのエクストラコードはズルいですわ。しかもあれで精霊使いだって言うのですから手に負えないですわ」



「カナデはねぇ、間合いに入っちゃうと何も出来なくなるよ。テッカさんが付きっ切りで技を教えているし、それにあの性格でしょ? 止めるのが大変」



 多分カナデを止める役割を押し付けられているだろうセルネくんとランファちゃんが深くため息を吐いていた。



「そういえば普通に流すところだったんだけれど」



 セルネくんの目がロイさんに向けられていた。

 そういえばロイさんのことどうしようか。と、頭を悩ませていると、ランファちゃん肩を竦めて微笑んだ。



「ガイルさんとテッカさんから話は聞きましたわ。それとテルネ様からもあの戦いを見させてもらいました」



 ロイさんが顔を伏せたけれど、ランファちゃんが首を横に振った。



「わたくしを救ってくれた恩人に、今さら刃は向けませんわ。それは、わたくしの騎士道に反します」



「ロイはこの手の話本当にビクつくわよね。この国では今や英雄なのだから、もう少し胸を張ったらいいじゃない」



 ロイさんが照れたように頭を掻き、小さく頭を下げた。



「しっかし英雄ね、ここに来るがてらアヤメから話を聞いたが、本気でやり合うなら広い場所がいるな」



「僕が絶界張ってあげようか?」



「……あんだそれ?」



「この世界に全く影響がないリョカだけの世界の生成だよ」



「ちょっと何言ってんのかわからん」



 ガイルが頭を抱える中、ウルミラがセルネくんとランファちゃんを見ていた。



「ウルミラ、2人に興味があるの?」



「うぇっ、あ、いえその、さっきのセルネ様とランファ様の戦い、自分ならどうするかなって」



「セルネで良いよ。ウルミラ、だったよね? ウルミラもその極星なの? こっちに来て出会った人の中で一番強いよね?」



「うぇっ! わ、私なんてまだまだですよ! ボスにだってまだ勝てないですし」



「そうなのですの? 少なくとも戦いに向けられる意欲はヴェインさんより多いと感じましたけれど」



 セルネくんとランファちゃんに褒められたけれど、ウルミラは勢いよく首を横に振って否定した。

 けれどそれを聞いていたヴェインが顔を引きつらせてロイさんの体に顔を埋めた。



「俺極星辞めるぅ」



「アルマリアみたいなこと言わないでよ」



「そうですよヴェインくん、あなただってまだまだ成長できます。ここ数日間、私の指導にもしっかりついて来ているでしょう?」



「でも師匠――」



「お前ロイに師事したのか? だがロイは人が良くなっちまってるからな、俺が一発気合入れてやろうか?」



「人には人の速度というものがありますよ。ヴェインくんもしっかり身に付いています」



「やっぱぬるい感じがするな。ヴェインに教える時、俺も一緒していいか?」



「ええ、構いませんよ」



「あ、あの! 私も」



 ガイルとロイさんの指導に、ウルミラも声を上げて志願した。

 ヴェインが複雑そうな顔をしているけれど、ブリンガーナイトの強化につながるし、良い話ではないだろうか。



「それじゃあ僕は……ランファちゃんとスピカを貰おうかな。ユニット、組ませたい」



「拒否したいですわ」



「着せ替え人形にさせられるわね」



「まあまあそう言わずに。ランファちゃんの聖剣、僕の旧式ダーインスレイブを参考にしてるでしょ? あの時一番近くで見てたもんね」



「……そういうのは黙っている方が良いですわ」



 照れているランファちゃんが可愛らしく、食事中でなければ抱き締めに行っていた。



「じゃああたしはセルネと魔物でも倒すわ」



「えっ!」



「なによ嫌なの?」



「……また無茶振りしないですか?」



「するに決まっているでしょう。せっかく一緒に連れて行ってもぶっ壊れない奴と一緒なのに、無茶しない方がおかしいわ」



 セルネくんが涙目で僕に視線を向けてきた。

 ミーシャの発言が危なすぎることに今は目を瞑るとして、これではあんまりだろう。



「セルネくん、無事に戻ってきたら2人きりでどこかに出掛けようか?」



「――っ! ミーシャ! どこに行けば良い? 何を倒す? 俺頑張るよ!」



 チョロいなぁ。

 僕が目を細めていると、スピカがランファちゃんに耳打ちをしているのが聞こえた。



「私、今日彼と初対面だけれど、随分とその」



「彼、リョカさんが絡むと本当に駄目になるのですわ。普段はそれなりに統率力のある勇者なのですけれど、いざリョカさんの影が見え隠れするとあの尻尾も耳も隠さなくなるのですわ」



「リョカって本当、罪な女というか、人たらしというか」



「まあ、わたくしたちも人のこと言えないようですけれどね」



 ランファちゃんとスピカの仲が良くて何より。

 僕が食事をしている面々を見渡すと、隣のルナちゃんが僕の手を握ってきた。



「グエングリッターに来てからずっと忙しかったですし、暫くはのんびりしましょう」



「ですね。ルナちゃんもどこか行きたい場所があったら言ってくださいね。どこへだって連れて行きますよ」



「はい。セルネさんの後はわたくしがデートに誘っちゃいます」



「楽しみにしていますよ」



 未だにアルマリアのお父さんの情報はないけれど、あの子自身がまだのんびりとしているようだし、僕もこの何でもない時間をゆったり過ごそうと決めるのだった。

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