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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
17章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、その宵闇に踊る。

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魔王ちゃんと極星の実力は如何に1

「リョカさん、少し良いだろうか?」



「はいはい、どうしましたヴェインさん」



 スピカたちの本拠地、聖女の治める女神様を慕う街・ミーティア。

 僕たちはミーティアへと向かうための準備をしており、その途中でヴェインさんが話しかけてきた。



「リョカさん、あなたはジュウモンジと戦ったのだろう?」



「ええ、結構強かったですよ。ガイル……金色炎の勇者よりちょっと迫力がない感じかな」



「……旅立つ前に1つお願いをしてもいいだろうか」



 神妙な顔のヴェインさんに僕が頷くと、荷台に座っていたミーシャが立ち上がった。

 彼のお願いはその空気感で察することが出来たけれど、聖女様が出てくるのは些か面倒だろうと彼女を視線で制す。



「俺と戦ってくれないだろうか?」



「本気で?」



「……本気を引き出せれば引き出してみせるさ」



 僕は思案顔を浮かべる。

 きっとジュウモンジと比べて自分がどれだけの力を持っているのか試したいのだろう。それと多分彼について言いたいこともある感じがする。



 戦うのは構わないのだけれど、どうやって組み立てるべきか。と、僕が悩んでいると、ミーシャがテトテトと歩いて行き、スピカとウルミラ、それとランガさんを引っ張ってきた。



「とと、ミーシャどうしたのよ」



「ミーシャ様、私はまだ準備が」



「……あれれ? ヤな予感がしてきましたよ」



「ウルミラ、その感覚は大事になさい。今回は逃がさないけれど」



 幼馴染が不穏な発言をしており、僕とヴェインさんが首を傾げる。



「丁度良いわ。あんたの実力も見ておきたかったし、ついでにこっちの3人も混ぜてそっち4人とあたしとリョカとでやりましょう」



「え?」



「は?」



「ん?」



 スピカとウルミラ、ランガさんが口を開けて呆然とした顔を浮かべた。



「さっ、やるわよ」



「……待ってミーシャ。せめてランガさん1人に」



「駄目よ。ウルミラは当然前線だけれど、スピカも戦う義務があるわ」



「え? 何故?」



「あのおっさん、聖女を嘲ったわ。聖女が脆弱なんてぬかしやがったのよ。だからあのおっさんには目に物見せてあげなければならないの。だからスピカも当然最前線よ」



「……うん、そっかぁ」



「ちょっとリョカ諦めないで!」



 スピカが涙目になって方々に視線を向けて助けを求めるけれど、僕たちよりのルナちゃんとアヤメちゃんはすでに応援モード、ヴェインさんとランガさんはミーシャの戦闘圧に押されて顔を逸らしている。



 そして頼みの綱だったマルエッダさんが目を瞑っており、その瞳を開いたと同時に頷き、ミーシャに手を伸ばした。



「ミーシャさん、スピリカは教会に籠りっきりだった箱入りです。どうか、あなたの聖女としての在り方を教えてあげてくれませんか?」



「裏切られたぁ!」



「あら失礼な。私はいつだってあなたのことを考えていますよ」



「リョカぁ……」



「終わったらたくさんおやつあげるから。ね? ああなるとミーシャ止まらないんだよ」



 涙目のスピカを撫でてあげるのだけれど、あまりにも可愛らしく見上げられるものだから、僕は魔剣を幾つかだし、それをスピカに付けてあげる。



「こらリョカ」



「いやいや、仮にも国を代表する聖女様だし、このくらいは、ね?」



「今リョカさんに頼ったのも、そうやって旅の間頼ってばかりだったから甘え癖が付いてしまっているのですね」



「うっ……だってスピカが可愛くて。つい甘やかしてしまうんですよ」



「気持ちはわかりますけれど、今着ているものだって相当な力がこもっているでしょう? スピリカ、この先もリョカさんの助けがある保証などないのですから、ここは自分の力で戦うべきです」



「普通の相手だったら私だってそうします。けれどミーシャが相手なのですよ? 口からヤバいもの吐き出すミーシャですよ」



「人のこと酔っ払いか何かみたくいうのは止めてくれる?」



 酔っ払いがドラゴンブレス吐く世界線など死んでも行きたくない。

 そうしてスピカが頬を膨らませながらもマルエッダさんの説得に寄って渋々戦闘に加わることを同意した。



 すると苦笑いをヴェインさんとランガさんが浮かべていたのだが、ミーシャが2人にトンっと拳を当てた。



「あっちの2人には加減するけれど、あんたたちは当たったら死ぬから躱すか何とか受け止めなさい」



「え、死?」



「……あの、私は副官という立場ですが、ブリンガーナイトではどちらかといえば斥候の役割なので――」



「あんたは技を使いなさい。如月流、使えるでしょ?」



「それは……」



 ランガさんが顔を伏せた。

 テッカと同じ理由で技を封印していたのだろう。



「テッカはもう使い始めているわよ。殺す殺さないはあんたたち次第でしょ、技のせいにすんな」



「……」



「まあ、今は良いわ。ただし、この戦いであんたはそれを使わざるを得ないわよ」



 相変わらず強引な幼馴染に、僕は肩を竦めると未だに呆然としているウルミラに目をやる。



「ウルミラも全力でね」



「あ、あの、私のスキルが通用するですか?」



「するわけないじゃない」



「今のままだとね、でも大丈夫だよ。ミーシャはこの間、強引だけれど1人の男の子の力を引き出したから」



「……ちなみにミーシャさんはなにをしたんですか?」



「街一個消し飛ばすほどの威力の何かを放って受け止めろって言って見事に受け止めていたよ」



「引き出せなかったら死ぬやつじゃないですかぁ!」



 泣きついてきたウルミラを抱きしめて撫でていると、ブリンガーナイトのギルド員たちが興味深そうに僕たちに目をやっていた。



 しかし彼らの評価は極星に挑戦者(・・・)が現れたらしいというもので、まさかヴェインさんが挑む者だとはつゆと疑っていないようだった。



「どこか広いところはありますか? 闘技場、作っちゃいますから」



「作る? え~っと、一応この街に闘技場はあるよ。俺たちブリンガーナイトの昇進やら入団試験やらで使うものがあるからそっちを使ってくれて大丈夫だよ」



「なるほど」



 もっとゆっくりと観光もしたいところだけれど、今は出発前の……ミーシャ、手加減してくれるんだろうか。今からフィリアム様に会いに行くということを忘れていなければ良いけれど。



 と、僕の心配をよそに上機嫌な幼馴染にどうにも嫌な予感がするのだった。

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