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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
2章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、冒険者ギルドにて仕事を受ける。

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魔王ちゃん、聖女ちゃんとロリ眼鏡ちゃんに任せる

「あ~びっくりした。ソフィアちゃん、あのおっさんのこと知ってる?」



「はい、ガイル=グレックさんという勇者様です。私がお会いした時はお酒が好きという印象でしたが、お父様曰くとても強い勇者様らしいです」



「でしょうね。学園のひよっこ勇者と比べると天と地ほどの差がある感じだったね。それと1人じゃないでしょう、もう1人いた」



「えっと、テッカさんというお仲間がいたと思いましたが、いらっしゃいました?」



 思い切りいたね。隠密系のスキルだろうか、魔王オーラを指先とそれと辺りに展開するという無茶をしたから精度に関しては半信半疑だったけれど、薄くしている者程度なら居場所を判別出来た。

 これは常時魔王オーラを展開しておいた方が良いかもしれない。



 そこでふと、不機嫌な聖女様に目を向ける。



「で、ミーシャはなんでそんなに機嫌が悪いのさ」



「……別に」



 どう考えても別にという態度ではない。どうしたら機嫌が良くなるだろうか思案しているとミーシャの頬が膨れた。

 ああこれは。僕がなにかしたところでどうにもならないやつだ。ミーシャが頬を膨らませるなんて可愛い怒り方をしている時は大抵自分に腹が立っている時だ。



 今回の場合だとあれかな。何も出来なかったことに腹が立っているのだろう。

 僕は肩を竦ませ、足を止める。



「リョカさん?」



「ああうんわかった。ミーシャ、ソフィアちゃん、この依頼に関して僕はもう何も手を出しません。相当なことが起きない限り、今回は見守っています。これで良いかなミーシャ」



「……別に、あんたに何もしてほしくないわけじゃないわよ」



「わかってる。せっかくの初冒険者だもんね、出来ることを探るのも大事だと思う」



 するとミーシャが近寄ってきて僕の肩に頭を乗せて、小さく「ありがとう」と声を漏らした。

 このくらいしおらしいと可愛らしいけれど、まあレア中のレアってところかな。



「わあ、リョカさんとミーシャさんって本当に仲良しですよね。学園でもみんなが噂してます」



「え、噂されるようなことはしてないけど」



「いえいえ、そんな2人みたいな仲良しになりたいですねって噂です」



 真正面からそんなキラキラまなこっていうかシイタケまなこで言われると、普通に照れる。僕は同じく照れているミーシャを横目に映して、そろそろ行こうと声を掛ける。



「依頼内容は……はい、2人ともこれ読んで」



 僕は2人に依頼書を手渡し内容を確認するように言う。

 依頼は至ってシンプルな採取依頼。指定された素材を持って帰るだけ。なのだけれど、その採取する物が魔物の内臓。

 クリムイーターと呼ばれる魔物の胆のうなのだけれど、クリムイーターはクリム草を主食にしている魔物で、その胆のうが薬、漢方みたいな効能のあるものであり、薬としてはポピュラーな部類の所謂常備薬としてご家庭に行きわたっているために、頻繁にこの依頼は冒険者ギルドに依頼される程度のもの。



 ミーシャとソフィアちゃんが依頼書を見て、2人でどのように行動しようかを話し合っていた。



「クリムイーターってどんな魔物? ソフィアは知っている?」



「はい、図鑑(・・)で見たことがあります。弱い魔物だと記載されていましたから私たちでも達成できる依頼だと思います」



「そう。それなら特徴を教えてもらえる」



「えっとですね――」



 そんな話を聞きながら、僕は何とも親鳥の気分を味わっていた。

 弱い魔物ね、うんそれは間違っていないけれど、はてさてどうなることやら。と、ミーシャが爆発する未来を想像して小さく笑みをこぼす。

 というか図鑑って……情報を残すことがないこの世界で随分と珍しい言葉を聞いたな。



「どの辺りにいるの?」



「森の中、特に綺麗な水辺の傍にいるらしいです。この辺りだと来る時に通った森の中でしょうか」



「それじゃあすぐに行きましょう」



「ミーシャお昼は?」



「あんた作ってきてるでしょ? 森の中で食べれば良いでしょ」



「歩きながらでも食べられるよ~。さんどい――春のパン挟み」



「はる?」



「気にしないで」



 森へと向かって歩き出す2人に、僕は鞄の中から昼食を取り出し、今朝作ったサンドイッチ改め春のパン挟みを彼女たちに手渡した。



「お茶飲みたかったら言ってね。いつでも用意するから」



 ミーシャが手を上げて返事をしたのを見て、僕はどうにもはやっている2人の背中を追いながら、コップ2つに茶を淹れ、パン挟みのいくつかを別の容器に移して近くにある箱の上に置いた。



「いらないんなら別の人にでもあげちゃって」



 と、ギルドを出てからずっと魔王オーラに感知されている2つの気配に告げて、改めてミーシャとソフィアちゃんを追いかけて森へと足を進ませる。



 どういうつもりかはわからないけれど、護衛としては上々だ。

 なにか問題が起きたとしてもこれならば大丈夫だろうと、僕は最早遠足気分でこの依頼に挑むのだった。

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