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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
14章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、初めてのギルド。

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魔王ちゃんとやっと始まる新天地

「ウルチルくんごめんね、流石にこの状況で2人を連れてくのは悪いかなって。だからお姉さんを指名したんだけれど、なんだか押し付けたみたいになっちゃって」



「いえいえ、自分もついて行くと大所帯になっちゃいますし、女性ばかりでちょっと肩身も狭いですし、大丈夫です」



 ウルチルくんは本当に聞きわけが良い。セルネくんといい勝負できる小動物系だ。

 昨日の事件から宿で夜を過ごし、早朝ブリンガーナイト本部へと出発するために集まっていた。



 僕が彼に礼を言うと、ウルミラさんがげんなりとして弟の肩に手を置いた。



「変わる?」



「ヤダ。それに姉さんいつか極星になりたいんでしょ? リョカさんたちに鍛えてもらいなよ」



「へぇ、良い目標じゃない。あたしが扱いてやるわよ」



「……何で今言ったの、なんで今言ったの?」



 ウルチルくんに泣き顔で詰め寄ったウルミラさんを横目に、僕は昨日から泊まっていた宿屋に目を向ける。

 そろそろ彼女の着替えが終わるころだけれど、どうにも時間がかかっており、ルナちゃんとアヤメちゃんに2人の着替えを渡して様子を見に行ってもらっている。2人に行かせたのはもちろん逃がさないためだ。



 そうして待っていると、顔を赤らめたスピリカさんが自分の体を抱きしめて、女神さまたちに連れられてやってきた。



「諦めろ、俺はもう諦めた!」



「アヤメ可愛いですよ」



「う~……」



 せっかくの新天地、僕はわた毛のおばあちゃんに幾つかの服と服を作るための道具を持って来ていた。

 ルナちゃんには、少し露出が多いけれどショートパンツにTシャツ、ブーツと三日月型バックルのベルトに、白のスカーフ、盗賊っぽい見た目だけれど、可愛い子が着ると悪戯っ子な雰囲気の仕上がりになる。



 そしてアヤメちゃんには真っ白ワンピースと麦わら帽子、虫かごと虫取り網を装備させた。ネタ枠。



「俺とルナ逆じゃね。とかも言わない。だって無意味だし、文句言って次出てきたのがフリフリのドレスとかもあり得るから、俺はこれで良いのよって言い聞かせるのよ」



「ドレス着たかったんですか?」



「お願いだからルナは俺の言葉に耳を傾けてくれよ」



 蝋で固められたかのような固定された微笑に、どうにも不憫さが漂っているけれど、別に僕たちは神獣様をイジメているわけではない。可愛いのが悪いのである。



 そしてニヤケ顔が隠せないほど、出来上がっているスピリカさんに目をやる。

 捕らえられていたから寝巻のような服を着ていた彼女、他の服がないというから、僕はルナちゃんたちを着替えさせるつもりでいたから一緒に着替えておいでと言った。



 もちろん昨夜からそのつもりだったから夜なべして彼女の服をこしらえた。おかげで僕の目はギンギンだ。

 ちなみにスピリカさん、軍服ミニスカートの悪の女幹部みを覚える服装である。



「ぎゃわいい!」



 3人纏めて抱き締め、僕は溢れんばかりの愛をルナちゃんとアヤメちゃん、スピリカちゃんに注ぐ。



「……リョカさんなんか雰囲気変わりました?」



「いつも通りよ。あいつ慣れてくると誰これ構わず可愛くさせてくるのよ。あんたも気を付けなさい」



「え、私も――」



 僕は手に作りかけの服を出現させ、ウルミラさんに笑みを向ける



「イヤだったら力で抵抗なさい。あたしはそうしているわ」



「魔王にどう抗えと?」



 3人の可愛さを十分に堪能した僕は、体を離し、膨れているスピリカさんに目をやる。



「むぅ……意地悪な魔王様ですね」



「まあまあ、それにその服、デザイン……見た目はともかく、ちゃんと理由だってあるんですから」



「一応聞いてあげましょう」



「まず。星の聖女様と言う役職を隠す目的です。そんな奇抜な格好、聖女様がするはずないですから」



「……やはり奇抜なんですね」



「次に――」



 僕はスピリカさんにも見えるように素晴らしき魔王オーラを指に込めた。

 そしてそれを軽く弾き、彼女に当てる。しかしオーラは霧散し、彼女に一切の衝撃が加わっていない。



「月神様の加護を付与しました。並の攻撃でも危険はないですよ」



「あなた今、加護を付与したと言いましたか?」



「本当なら星神様の聖女様であるスピリカさんにルナちゃんの加護を与えてしまうのはマズいかなと思ったのですけれど」



「文句を言われたらわたくしが黙らせます」



「だそうなので、少しの間それは着ていてください。身を守るための目的もありますので、これは守ってくださいね」



 スピリカさんが両手で覆った顔を伏せた。



「逃げ道1個もねぇ!」



「言葉で勝てないから力で説き伏せるのよ」



「ウルミラ、お前には俺の加護付きよ。良かったわね」



「難攻不落の砦に閉じ込められましたが!」



 大袈裟なウルミラさんに僕が笑っていると、空間が揺れ、アルマリアが両手に買い物袋をぶら下げて現れた。



「準備を任せちゃってごめんね、アルマリア本当にありがとう」



「いいえ~、ここにいたら色物にされそうだったので早いとこ離脱しただけですよ~」



「アルマリアの服もちゃんと用意してあるからね」



「絶対に捕まらないですよ~」



 ジリジリと距離を詰める僕に、アルマリアが絶対に捕まるものかという気概で徐々に離れて行く。



「……なるほど」



「あんたがリョカから逃げるのはまだ無理よ。あの子アルマリアと同じでグリッドジャンプ使えるし」



「あのこの魔王様強すぎません?」



「お前たちは知らないかもしれないけれどな、グリッドジャンプを使っている内はまだマシだぜ? 魔剣まで持ち出されたら逃げることは不可能だと思えよ」



「魔剣って何ですか!」



「絶慈までいくと世界の果てまで追いかけられると思いますよ。ちょっと見てみたい気もしますけれど」



「最終スキル持ち! というか月神様良い性格してる!」



 恐れ入りますと笑うルナちゃんを撫で、僕はウルミラさんを指差す。



「それじゃあ2人はまずそれだね」



「それ、ですか?」



 スピリカさんが首を傾げるから、僕は彼女に視線を合わせる。



「スピリカさん、嫌だったら言ってくださいね」



「衣装の変更を――」



「うちのルナちゃんもアヤメちゃんもそうなんですけれど、スピリカさんは星の聖女様です。もし敵じゃなくとも誰かにあなたの存在が露見しますと、それだけ危険になります。だから愛称呼びやもっと砕けた感じで接したいのですがよろしいですか?」



「え~、リョカさんこれ以上砕けると多分バラバラになりますよ?」



 僕はウルミラさんを手招きし、口を塞いで抱きしめる。



「どうでしょう? イヤなら別の方法を考えます」



「……わかりました。いえ、わかったわ」



「ありがとう――じゃあ、2人にはとりあえず」



 僕はルナちゃんに目配せをし、アヤメちゃんに手を伸ばす。



「へ――」



「え――」



 ルナちゃんがスピリカさんに飛びつき、引き寄せたアヤメちゃんをウルミラさんにくっ付けた。



「2人はルナちゃんとアヤメちゃんです。旅の仲間で、みんなと同等の冒険者です。良いですね?」



 宇宙聖女と宇宙支部長が完成した。

 懐っこく頬ずりするルナちゃんにスピリカさんは体の動きを止めている。

 悪戯っ子なアヤメちゃんはウルミラさんの耳元で「俺女神なんだ」と何度もつぶやいている。



「相変わらずえげつないことしますね~」



「いやいや、ちゃんとスピリカさ――スピカにも許可とったから」



「良い愛称ですね。私もそう呼びます」



「騒がしい道中になりそうね」



「楽しいはずだよ」



「そうね、ウルミラには戦い方、スピカには聖女の何たるかを教えてあげるわ」



「ハっハっハっ」



 僕は乾いた笑いを漏らし、今から向かう方角に目を向ける。

 新しい場所で、僕たちはまた大地を鳴らす。

 それが福音になることを祈り、胸躍るはじめの一歩を僕はかき鳴らす。



 様々な思惑が絡んだ状況だけれど、それでも僕は楽しむことを止めたくない。

 この楽しさが、可愛さにつながることを信じて、僕は先頭を歩き出すのだった。

ウルミラ=セイバー


 ギフトはまだ不明、極星ギルドであるギルド・ブリンガーナイト所属の17歳の女の子。ペヌルティーロのブリンガーナイト支部を任される程度には優秀。基本的に金属鎧とショートソードを装備しており、戦い方は型に忠実でリョカ曰く演舞のようで見ている分には綺麗、ミーシャ曰くつまらない戦い方と評されている。

 リョカとミーシャの2人の行ないを常に驚いており、少々リアクションが大袈裟であるが、そのリアクションとツッコミをルナが気に入っており、ムードメーカー的立ち位置に落ち着いた。

 見た目は黒髪のショートで、ミーシャよりも身長は高いがリョカよりは小さく、耳にイヤリングをしている。それ以上の特徴はないが、目立った特徴がないから色々と可愛くし甲斐があるとのことである。

 最近の悩みは、他国の魔王と聖女に振り回され、挙句に任せてもらえた支部を崩壊させてしまったことである。



スピリカ=メルティート


 ギフトは聖女で、ギルドは極星ギルド・アストラルセイレーン。星の聖女と呼ばれる極星の1人で、グエングリッダーでは女神様に近い聖女として人々からの信頼も厚い。

 ある事件でリョカたちに助けられ、彼女たちと旅をすることになったが、月神様と神獣様との接し方がわからず、すぐに委縮してしまう程度には信仰心が高い。

 聖女としても優秀であるが、その力は癒し特化ではなく、強化に特化したもので、戦場に出るタイプの聖女である。

 見た目は長い茶髪の美少女で、儚げな雰囲気と相まって男性人気も高い。身長はミーシャと同程度だが、本人は隠したがるが胸が大きく、それを隠すために体を丸めてしまう癖がある。

 しかしリョカから渡された黒一色の衣装(悪の女幹部風)のおかげか、諦めたからか、体を丸める回数が減った。

 最近の悩みは、他国の魔王が女神様をけしかけてくるのと、他国の聖女がわけのわからない奇跡を覚えろと強要してくることである。

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