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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
13章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、女神ちゃんたちと日常を歩く。

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魔王ちゃんと次の目的地(不明)

「は~……」



「お疲れ様ですわ」



「うん、お茶淹れてくれてありがとうランファちゃん」



 相変わらず無事な人間が少ない学園生対上級冒険者との戦い。

 なおほとんどの犠牲が、どこに向かっているのかわからない超攻撃的な聖女の覇王色のせいである。



 ヘリオス先生に締めてもらい、気絶した生徒を治療し、舞台を消し……それらを速攻で終わらせ、僕はやっと一息ついていた。



 椅子に座っている僕はランファちゃんが淹れてくれたお茶を飲みながら、しがみついて離れないアルマリアを空いた手であやしながら疲れた表情を浮かべてしまっていた。



「魔王って、大変なのですわね」



「僕が特殊なのだと信じたい。っとそうだ、ジンギくんはもう平気?」



「……死ぬかと思ったけれど、何とか生きてるってところだ」



「本当、僕の幼馴染がごめんね」



「いや、うん、本当に。というかあれなんだ?」



 先ほどのあれを思い出しているのか、ジンギくんが体を震わせた。

 彼の問いに興味があるのか、一緒にいたガイルも目を輝かせながら前のめりになった。



「この戦闘狂め。ガイルも一緒にアルマリアを宥めてよ」



「断る。こいつそうなると面倒なんだよ、俺は二度とごめんだ。で、ありゃあなんだ? それとお前の盾」



「ったく、まあいいや。えっと、ミーシャのあれはクオン様の神核で作られた新しい信仰の吐き出し方だね」



「クオン様?」



「竜神様、でいいのかな?」



「はい、クオンは竜の女神ですね」



「この間、竜神さまと初めて会った時、あの子ばっちり力を奪い取っていて、それをどうするのかこの間話していたんだよ。まさかあんな高火力ドラゴンブレスを吐くとは思わなかったよ」



「人の身で竜を模倣するとは、ミーシャさんは本当に底なしですよ。多分クオン大喜びしていますよ」



「待て。竜神さま? 竜の模倣? あいつ馬鹿か?」



「脳まで筋肉で出来てるから馬鹿だと思うよ。ガイル今度あのブレス真正面から受けてみなよ」



「死ぬに決まってんだろ。というかお前はよく防げたな。ジンギもやるじゃねぇか」



「俺はもう死んだかと……というか本当に危機的状況じゃないと出てこないんだよなぁ」



「オリハルコンは稀少だからねぇ。聖剣にも使われている金属だから」



「ほ~、そうなのか」



 ガイルが感嘆の声を上げたけれど、ルナちゃんが首を傾げており、口を開いた。



「え、そんな金属では――むぐ」



「ジンギくんはセルネくんとか、僕も協力するけれど、もっと聖剣に触れてみるのが良いかもね。そうすればもっと具体的に形作れるでしょう?」



「確かに。今度セルネに頼んでみるよ」



「ナイトマイトメタル、侮れねぇギフトだな。で、お前さんの盾は? あれ聖騎士の盾だろ」



「うん、僕は月神様の加護を強く受けているからね、だからその加護の多さで固くなる盾を作ったよ。ガイルでもそうそう抜けないんじゃない?」



「月神様を出されると確かにしんどいな。お前本当に武器生成に関しては天才的だな。今度ちょっと参考にさせてくれよ」



「いいよ。でもガイルもう武器作れなくない?」



「まあそうなんだが」



「いえ、ガイルさんはその、ランドがもう少し働けばもっと強大な勇者になれますよ」



「……なあルナ、お前さんから頼んでそのランドさんをどうにかしてくれないか?」



「えっと」



 困ったようにルナちゃんが顔を逸らした。

 相当扱いに困る女神様らしい。



「ミーシャでもけしかければ? あの子ガイルが強くなるってわかったら手伝ってくれるよ」



「その手があったか!」



「あの、ランドが死んじゃうので最終手段にしてあげてください。一応、太陽を司る、わたくしとは遠縁にあたるので」



 シュンとするガイルに苦笑いを浮かべていると、抱き着いているアルマリアがきゅっと肩を握ってきた。



「アルマリアだってまだまだ強くなれるよ~、今日だってたくさん頑張ったじゃない。僕が教えた座標だってそれなりにものにしているでしょう?」



 頬を膨らませるアルマリアが可愛らしく、どうにも甘やかしてしまう。

 けれどこれは本格的に何か対策を考えなければならないな。



 どうしたものかと思案していると、ランファちゃんが辺りを見渡した。



「どうかした?」



「いえ、あれだけのことを仕出かした聖女様はどこへ行かれたのかと思って」



「うん、言いたいことはわかるけれど許してあげて。あれで本当に悪気はないんだよ」



「性質が悪すぎる」



「で、そのミーシャはアヤメちゃんとテッカ、ヘリオス先生から絶賛説教中だよ」



「ミーシャさんがみなさんの説教で止まるとは思えないのですが」



「大丈夫。先生がお父様の連絡先知っているからそれをチラつかせている限りいうこと聞くよ」



「やっぱジークランス最強なんじゃないか?」



「体が弱かった時に一緒にいたからねぇ、あの子は逆らえないよ」



「……なあ本当にあのとんでも聖女様にか弱い時期ってあったのか? 俺セルネとタクトにもそんなこと言われたけれど、か弱い言われてても魔物を一撃で消し飛ばすとかじゃなくてか?」



「ちゃんと可愛かったよ。フリルのパジャマ着て、常に可愛くない化け物のぬいぐるみを握って僕の後をちょこちょこついて来ていたよ」



 ガイルとランファちゃんとジンギくんが見たこともない複雑な顔で首を傾げている。



 言いたいことはわかるけれど、あれでも一応人の子である。もう少し信じてくれてもいいのだけれど、今までの行動から信じられるものではないだろう。

 しかしミーシャについても考えなければならない。



 きっと僕の聖女様はフラストレーションが溜まっている。

 本気の高火力をぶっ放せる場所を探しているのだろう。

 つまりケダモノとして戦いたい。



 ルイス=バングとの戦いが本当に楽しかったのだろう。



 アルマリアのこともあるし、ミーシャのことも――そこで僕は思いついた。



「よし決めた!」



「あ? どうかしたか」



「ガイル、暫く街を空けるよ」



「どっか行くのか?」



「うん、ミーシャを本気で戦わせてあげたいのと、アルマリアのことも何とかするためにね」



 ガイルが興味深そうに僕の話に耳を傾けた。

 つまり簡単な話だ。ギルドマスターの仕事の負担を減らす。ミーシャを本気で戦わせる。



 これが叶えられるうってつけの相手が1人いる。



「アルマリアのお父さん、探しに行くよ」



「なるほどな。で、ミーシャと戦わせるのか?」



「いやぁ1人だとどうかな? とりあえず先代ギルマスにはギルドに戻ってもらってアルマリアの仕事の負担を減らしてもらう。それなら、自分の時間も持てるよね?」



 僕の話を聞いて顔を上げたアルマリアが小さく頷いた。



「戻りそうもないなら、僕とミーシャで無理やり連れて帰るからさ」



 アルマリアが涙目でギュッと首にしがみついてきたから僕は彼女を受け止め、頭を撫でる。

 そもそもあまりにも無責任だし、僕自身彼女の父親には言いたいことがあった。こんな可愛い子を放って一体どこをフラフラしているのか。理由があろうがなかろうが、アルマリアには納得のいく説明をする義務がある。



「親父さんはつえぇぞ。本当なら俺もついて行きたいが」



「ガイルはランファちゃんとジンギくんを見てあげてよ。それに――」



 僕はガイルを引き寄せて耳打ちをする。



「ランファちゃん、勇者の才能があると思うんだよ。ちょっと何とかして引き出してあげてくれない?」



「マジか。というかわかるのか?」



「あの子のスキル、ちょっと周囲の信仰が干渉し過ぎなんだよ。ルミナスハートなんて自分の心を光に変えるにしてはちょっと出力過剰と言うか、そんなことが出来るの、勇者くらいでしょ?」



「なり立てか。どっかの女神が目を付けてるのかもしれねぇな。ルナは何て?」



「そういう類は教えてくれないんだよ」



「わかった。俺の方で指導する」



「ありがとう」



 不思議そうにしているランファちゃんに笑みを返し、僕は大きく伸びをする。



「さて、話もまとまったし、アルマリアのお父さんを探すために色々準備しなきゃ」



「遠くに行くのですね、楽しみです」



「ルナちゃんとアヤメちゃんにもたくさん思い出が出来ると良いですね」



 何も言わなくても行動を一緒にしてくれる女神様に感謝しつつ、僕はまだ見ぬ土地に想いを馳せるのだった。

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