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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
13章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、女神ちゃんたちと日常を歩く。

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魔王ちゃんとそれぞれの本気

「ふがぁぁっ! それを止めてください!」



『はて、異なことを言いますね。あなたのスキルに効率よく対処しているだけですよ』



 ロイさんはアルマリアが放つ鏡哭を、空間跳躍する前(・・・・・・・)に血思体で相殺しており、あれではあのスキルの長所を全く生かせない。



「やっぱあいつ、普通に強いな。戦闘の質が俺たちなんかよりずっと優れてるぜ」



「だな。スキルの長所と短所をすぐに見分けて対処してくる。あいつ、俺たちと戦った時より厄介になっていないか?」



「元々賢い人だったんだと思うよ。今はもうなんにも縛られていないから、年長者としての経験で動けているんじゃないかな。それにほら、アルマリアと違って、ちゃんとやるべきことを理解しているし」



 アルマリアがロイさんへと釘付けになっている横で、ランファちゃんとジンギくんがジリジリと距離を詰めていた。



『あなたは今(わたし)を見ているようですが……さて、あなたは今誰の敵になっているのでしょうか?』



「え――」



「ルミナスハート!」



「頑強凱武!」



 ランファちゃんの光の剣先がアルマリアに伸び、その背後からは鋼鉄化したジンギくんが彼女を押さえ込もうと飛び込んだ。



「っつ! グリッドジャンプ――ふわぁ!」



 アルマリアが空間跳躍したのだけれど、彼女がとんだ先に血液の棘が生えてきて、あわや串刺しになるところであった。



『あなたはグリッドジャンプを使用する時、一度転移先に視線を向ける癖があることを自覚した方が良い。移動先が見え見えです』



 アルマリアが顔を真っ赤にし、大槌で血の棘を払いのけ、そのままロイさんに突っ込んだ。

 あれは――あの子、ここで第2ギフトを切るのか。



「ブッ飛ばす!」



『ご自由に――』



 血の棘が再度アルマリア目掛けて放たれる。

 しかし彼女はニヤリとした顔で大槌を構えた。



「クリップグリッド――」



『でしょうね』



 血の棘が減速して、アルマリアの大槌に触れた。



「え?」



『ええ、いくらでも衝撃を吸ったらいい。ただしこの程度の衝撃、何十何百と吸い取ろうが致命傷にはなりませんよ。ですが人を串刺しにするのに、あまり力はいりませんので、私はこのままの威力で貴方を狙いますけれど』



 完全に翻弄されている。

 アルマリアのスキルが全て無力化させられている。確かにこれは学ぶべきものが多い。



「おいおい、わかっていても出来ることじゃねぇぞ」



「スキルの扱いがやはりうまいな。流石長く生き残っていただけはある」



「そりゃあお前ら、なんといってもロイ=ウェンチェスターよ。伊達に数々の勇者と戦ってきた怪物じゃないわよ」



「そうですね、彼がもしああならずに普通に一生を終えていたのなら、女神にも評価されていたかもしれません」



 それぞれがロイさんに感心する中、アルマリアが小動物のように頬を膨らませている。

 ああしていれば可愛いけれど、それは一児のパパの御前、どうにも聞き分けのない子どもに見えてしまう。



「正体バラしますよ!」



『ええご勝手に。例えそれで私が討たれたとしても私はそれを受け入れます。しかしあなたには私の恩人を最後まで守り通す義務が生じる。今のあなたにそれが成せますか?』



 どんな行動、言葉も風を殴るが如く躱される。

 ロイ=ウェンチェスター、ここまで飄々とした人物だったのか。



『むぅ、お父様ったら厭らしいんだから。昔お母様に、そうやって優位に立てて嬉しいですか? 私は悲しんでいます。数日間口をききません、嫌いですって言われてずっと落ち込んだのを忘れたのかしら?』



 一瞬エレノーラの言葉にロイさんの肩が跳ねた。本当に愛妻家だったというエピソードに僕は和む。



「ぐぬぬ」



『さて、私はまだ遊んでいても(・・・・・・)いいのですが、そろそろ周りを見た方が良いですよ、お嬢さん』



 視覚から色っぽい印象を受けるロイさんの言葉に、アルマリアがハッとして辺りを見渡す。

 しかしすでに辺り一面に光の種子が芽吹き、包囲網が敷かれていた。



「わたくしたちも全力ですので――プリンシパルフルール」



 光の花が光線を撃ちだし、アルマリアを追い詰めていく。

 けれどさすがはギルドマスター、迫りくる光をグリッドジャンプの連続使用で躱していく。



 そう感心したけれど、僕は全体を見渡し苦笑いを浮かべる。



「リョカ?」



「チェックだ。アルマリア、本当に場を見ないよね」



 何度目かの回避で光が向けられていない箇所へ転移したアルマリア――否、転移させられた彼女に大きな腕が伸びる。



「誘い込まれたな。ランファと言ったか、あの娘、中々に頭が回るな」



 テッカが感心して言うと、鋼鉄化した体でジンギくんがアルマリアにしがみついた。



「ランファ! 俺ごと――」



「当然ですわ!」



 細剣を地に刺し、ルミナスハートで光の種子に光を送り込んだランファちゃん。

 光の花が一斉にアルマリアに向けて光線を放つ。



「……」



 鋼鉄によって体を締め付けられているギルドマスターが俯き、体中から力を抜いている。諦めてしまったのだろうか。



 僕はジッと彼女を見つめる。



 いや違う。諦めていない。

 僕は彼女のあの目を知っている。

 この間、僕が彼女と戦った時に向けられた圧倒的戦士の目――ガイルたちにも匹敵する戦闘圧を引っ提げて、アルマリアが顔を上げた。



「『我こそは空を操る者テンブリングフィールド』」



 一斉に放たれた光は、これまた一斉に姿を消し、観客席の生徒も、舞台に立つランファちゃんとジンギくんをも驚かせた。



「なんなんですか、もう……わかってる、わかってるんですよ。ガイルさんにもテッカさんにも先に行かれて、挙句の果てにはリョカさんとミーシャさんにも追い抜かれて、ギルドマスターなんて名前だけで実力なんて追いついていない」



 アルマリアが静かに語る。

 けれどその目には沸々とした激情が見え隠れしており、ここで初めて目の前に対峙する3人を敵とみなしたように見える。



「今日ここで、一体何度空間を飛んだと思っていますか」



『いけない!』



 アルマリアの目が妖しく光った瞬間、ロイさんが駆け出してジンギくんを血思体に回収させ、ランファちゃんを含めた2人を守るように立ち血の壁を周囲に生成した。



全部返しますよ(・・・・・・・)



 アルマリアに向けて放たれた光線が、彼女の前方から一斉に射出された。



 ロイさんは肩から綿を剥き出しにしながら彼女の攻撃に耐え、綿の焦げる臭いが舞台上に漂った。



『……なるほど、空間の絶対支配ですか。さすが空を超える者です。ですがそれにしたってこれだけの数を一斉に放つなど並大抵のことでは出来るはずもない。リョカさんは別として、あなたにそれが出来るとは思えませんでした』



「だから言ったでしょう。今日何度この空間を飛んだと思っているかと。もうこの辺りの座標は把握済みです」



 なんとも強力なスキルを隠し持っていたものだと感心すると、ガイルとテッカも驚いており、僕は首を傾げる。



「おい、あのスキルあんなことできたのか?」



「いや、俺たちと一緒にいた時はあんなこと一度も」



「そりゃあそうでしょう。テンブリングフィールドは正直扱いにくいスキルで、一時しのぎ程度の位置づけだ」



「はい、あのスキルは使用者周辺のあらゆるを亜空間に送り込むというスキルです。けれど亜空間に送られたそのあらゆるはいずれ自分の下に返ってくるという性質を持っているので、正直戦闘では使いにくかったのですが」



 ルナちゃんとアヤメちゃんの目が僕に注がれる。

 あ~ね。その亜空間から任意の場所に放出できる術を僕が与えてしまったからか。



「私だって、常に不貞腐れているわけじゃないです。ギルドのみんながなんとか生き残れるようにたくさん考えもします。けれど足りないんです、私の力が圧倒的に足りない。ガイルさんとテッカさんは良いですよね、勇者であってもどこに所属するでもなくフラフラと」



「おい、定職に就いていないダメ親父みたいに言うな」



「ガイル、ちょっと黙って」



「リョカさんとミーシャさんは良いですよね。きっと彼女たちが選ぶ間もなく、たくさんの人々が彼女たちを求めます。でも私は! 私は……弱っちいです、中途半端です。突然父さんがいなくなって、ギルド継げって書置き残されて、自分を高めることも出来ないまま今日まで突っ走ってきました。でも、私じゃ……」



 涙声のアルマリアに、ガイルもテッカも口を噤んでしまった。

 まだまだ冒険に出たかったのだろう。まだまだ自分を高めるために戦っていたかったのだろう。

 でもそれが出来なくなってしまった。

 あんまりではないだろうか。

 僕が彼女にかける言葉を探していると、ランファちゃんとジンギくんを守っていたロイさんが彼女に正面を向けた。



『私と戦った時のあなたは、少なくとも今みたいに弱音を吐く者ではなかった』



「……誰を前にしていたと思っています? 悔しいですがあなたは強いです。私が第2ギフトまで使用しているのに、あなたはギフトを1つしか使用していない。そもそも強さの質が違うんです」



『ええ、そんな私を前に、あなたはそちらにいる金色炎の勇者にも負けず劣らず、果敢に私を攻め立てた。私が奪ったものに、激怒していたのでしょう……貴方には私を殺す権利がある。しかし、今の君では話にならない』



「どうしろっていうんですか」



『中途半端で何が悪い。高が20ほど生きただけの小娘が、その程度の時間で何を得られるというんだ。まだ結果も出していない君が、一体何を悔やむと言うんだ』



「でも!」



『わかった、言い方を変えましょう――まだ乳臭い小娘が、数歩進んだだけでお家に戻りたいとは。いやはや、家出(・・)は立派な冒険ですよお嬢ちゃん(・・・・・)



 アルマリアからブチと言う音が聞こえた気がした。

 しかしあの神官、煽るなぁ。



「なんなんだよもうー! さっきから聞いていれば言いたい放題言って、私だって怒るんだから!」



『そうですね、あの時もひどく激昂していましたね……ボッコボコにしてやりましたが』



「ブッ飛ばす!」



『その言葉、何度私に吐きましたか? すべて大地に消えていきましたね』



 無表情であるクマがしたり顔を浮かべているようにも見える。

 そして段々アルマリアの口調が変わってきていることにも気が付いた。



「なんかあいつ、冒険者なりたての頃みたいになってんな」



「だな。ギルドマスターになってから、言葉も丁寧にととってつけた喋り方をし始めたからな」



「可愛いよね~。あとでたくさん撫でてあげよう」



「一応あいつの方が年上だぞ」



 可愛いに年も何も関係ない。僕はこの15年、老若男女誰しもが可愛いに辿り着けるという確信に至った。

 私は最初に男であることを拒否したが、今の僕なら例え男でも最大限に可愛くなれる自信がある。



「あんたはブッ飛ばす! 私が私であるために、もう何も文句なんて言わせるもんか!」



『良いですね、やっとらしくなってきたではないですか。ランファ嬢、ジンギくん、申し訳ない、少し焚き付けすぎてしまったようだ』



「いいえ、ギルドマスターほどの方の力を最大限体験できるのは良い経験ですわ。この機会をくれたロイさんには感謝しかありませんわ」



「あんたも格好良いな。そういう余裕のある戦い、俺も見習わなくちゃだな」



 それぞれがやっと前を向いて戦いに臨み始めた。

 今回の戦いも成功かな。と、僕が安堵の息を吐くと、エレノーラが舞台から視線を外していることに気が付く。



「どうしたのエレノーラ?」



『う~んと、お父様、焚き付けられたの、アルマリアさんだけじゃないみたいだよ』



『はい?』



 僕とロイさんが揃ってエレノーラの視線の先に目を向ける。



「――」



 そこには口角を吊り上げ、ここにいる誰よりもケダモノらしく嗤う聖女がいた。

 さっきからやたら静かだと思ったらなんてタイミングで獣部分を爆発させるのだろう。



『……すみません皆さん』



「待ってミーシャ何する気! せっかく良い感じで纏まってきたんだから余計なことしなくても――」



「アルマリア!」



「え、あ、うん!」



「良いじゃないの、ロイも良いこと言うわ。まだ終わっていない。ええそうよ、この先何十何百年、戦って戦い続けて戦っている者が勝者よ!」



「おい聖女ぉ! 聖女に勝利は絶対条件じゃないわよ! と言うかお前どれだけ戦うつもり――」



「あんたは強くなりたいし、ランファもジンギも目的のために強くなりたい。3人とも今はまだ足りないと自覚している。だから戦い続ける――素晴らしいわ! でもこんなぬるいことをしていては牙は抜かれるだけよ」



 隣にいるからこそ……いや、多分遠くにいてもわかる。現に観客席の生徒の大半が泡を吹いてぶっ倒れており、僕の幼馴染からやべぇほどの戦闘圧が漏れ出ている。

 なんだこの戦闘圧、この間よりもずっと濃くなっていないか?



「おいなんだこれ、ミーシャまたなんかやったのか?」



「俺は何も見ていないぞ。しかしこれ神獣様の信仰とも、月神様の信仰とも違うような」



 テッカの言葉に、僕は思い当たる節が1つあることに気が付く。



「まさか……」



「アルマリア! 今からあんたにぶちかますわ! しっかり吸収しなさい、でないと周りが死ぬわよ」



「え、え?」



「ジンギ! 受け止めなさい! 歯を食いしばらないと後ろの観客も死ぬわよ」



「は? 何言ってんだお前――」



『いけない! ジンギくんすまない!』



 ロイさんがランファちゃんを抱えて血の中に潜り込んだ。



「チっ、ランファは後でで良いわね」



 舌打ちをしたミーシャが大きく息を吸った。

 聖女様の口の前に見慣れない円形の紋章が浮かんでおり、彼女の口元にどんどん信仰が集まっているのがわかる。



「がぉぉっ!」



 可愛く叫んだミーシャ。けれど吐き出されたそれは可愛さとは無縁の圧倒的破壊――全てを消し飛ばす黒の奔流。



 ドラゴンブレスだこれ。



「アルマリア止めてぇ!」



「く、クリップグリッド!」



 ミーシャから放たれた竜の息吹らしき何かを、アルマリアはテンブリングフィールドによって一斉に亜空間に飛ばし、それを大槌でクリップグリッドで吸収する。

 しかし明らかに武器がもちそうになかったために、僕は速攻でアガートラームと現闇、ルナちゃんの加護で彼女の武器を強化する。



「あがががががが――なにこれ、何これぇ!」



「ごめんアルマリア、武器は多分それでもつから何とか耐えて!」



「おいリョカ、俺にも武器を一対打ってくれないか」



「今度ね!」



 それどころではないのに何を悠長に武器を頼んでいるのかこの男は。

 アルマリアの武器がミーシャのブレスと、僕の加工によって禍々しい漆黒で彩られた。



「え、あ、え?」



「ジンギ、覚悟して受け止めなさい。それ一発で街が崩壊する威力よ、あんたが受け止めなきゃ学園が崩壊すると思いなさい」



 ジンギくんが涙目で僕たちに目を向けてきた。

 僕らはそっと彼から視線を逸らすことしか出来なかった。



「撃ちなさいアルマリア」



「あ、あわ……わぁ――」



 語彙力が落ちたアルマリアが震える手でジンギくんに大槌を構えた。



「せ、センスガンズインパクト」



 大槌がジンギくんに迫るその瞬間、瞳から大粒の涙を流す彼が覚悟を決めた。いや、最早自暴自棄になったように手をかざした。



「が、厳爆鎧王!」



 彼の必死さが天に届いたのか、ジンギくんの体の金属が鎧のような形を形成していく。

 しかもそれは見たこともない色の金属で――いや、見たことあるぞ。僕がエレノーラを使ってでっち上げた金属だあれ。



 あの時僕は、聖剣に使われている金属はオリハルコンって言うんだよ。と説明した。この世界にそんな金属はない。

 つまり、架空の金属を彼は作り上げたのだ。



 架空の金属と絶対的破壊力が込められた大槌が衝突する。

 けれど僕は気が付く。



 これ、ジンギくんが受け止めても衝撃は外に漏れるのでは?



 まさに矛盾ともいうのか、最強の矛と最硬の盾がぶつかり合ったらどうなるのか。

 簡単だ、周囲に被害が出る。



 衝撃が観客席のみんなまで巻き込む瞬間、僕はありったけの信仰(・・)をあつめる。



「だぁもう! 作ってやりゃあ! 『威光を示す頑強な盾シールドオブグローリー月に身捧ぐ絶対守護(カノンルーナアイギス)』」



 聖騎士の盾を生成するスキルに、女神様の加護を取り付けることで作られる信仰によって硬度を増す盾を創り上げた。



 もう少し月を補充(・・・・)したかったけれど、今は昼である。

 と、僕が顔を歪めていると、背中にそっと手が添えられ、盾の硬度が増した。



「ありがとうルナちゃん」



「いいえ。まさかわたくしの名を冠する盾を作ってしまうとは思いませんでした」



「最強の盾でしょ?」



 ルナちゃんが後ろで可憐に笑ってくれているけれど、やはり余裕はない。

 2つの衝撃がぶつかり合ったことで、その余波が僕の盾を破壊しようとあちこちから軋むような悲鳴が上がる。



 僕が割といっぱいいっぱいになっていると、スキルを使用しながらすでに気絶しているジンギくんを見ていたミーシャが動き出した。



「まっ、こんなものね」



 そう呟いたゴリラドラゴンケダモノ系の聖女様が大きく息を吸った。



「38連――竜砲!」



 がおっ。と、再度放たれたドラゴンブレスはアルマリアの大槌を彼女の手元から引き剥がし、僕は一部盾を解き、そのまま大槌はブレスと共に空へと上っていき、世界に終焉が訪れるのではないかという爆発を起こした。



「あっぶ、あっぶね! おいコラゴリラぁ! アリシアちゃんが攻めてきた時より命の危機を覚えたぞ!」



 胸を張って勝気な顔を浮かべている幼馴染の頭を僕は引っ叩き、深いため息を吐く。



「2人揃ってやべぇことしてくれたな。というかジンギは大丈夫なのか?」



 ガイルが言いながら彼を指すと、ロイさんによって安全地帯に隠れていたランファちゃんがジンギくんに駆け寄り、頭を抱えた。



 そして呆然としていたアルマリアがペタンとその場で女の子座りをして、目からポロポロと涙を流し始めた。



「もうギルドマスター辞めるぅ! なんなんだよもぅ、なんで聖女の火力に押し負けるのよぅ!」



 えんえん泣くアルマリアを横目に、ついに僕の口角と目尻がプルプルと震えだす。



 泣き止まないギルドマスターに、やってやったという満足げな顔の聖女。

 僕はその場で立ち上がり、大きく手を振った。



「はいもうしゅ~りょ~! 今回の戦いはここまでぇ! ヘリオス先生締めてぇ!」



 戦いを終わらせることしか出来ない僕は無力なのか、そんなことを一瞬だけ悩み、もうさっさとこの混沌とした状況を終わらせたいと願うのだった。

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