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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
13章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、女神ちゃんたちと日常を歩く。

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聖女ちゃんとひよっこたち

「……」



「……」



「何辛気臭い顔してるのよ、今日死ぬかもしれないけれど今ではないわ。もっと胸を張りなさい」



「それ、慰めの言葉として言っているのでしたら相当ぶっ飛んでますわよ」



 翌日、アルマリア対ジンギ・ランファの戦いが告知され、早朝には学校中にその知らせが届き、リョカが前回同様に作るステージの周辺に学生たちが集まりだしている中で、件の2人が死にそうな顔でうな垂れていた。



「お前、昨日突然文が届いてギルドマスターと戦うと言われた俺たちの気持ちがわかるか?」



「歓喜したでしょうね」



「この戦闘狂が。普通はそうはなんねぇよ」



 どうにも緊張しているらしい。

 あたしはその緊張をほぐすためにジンギの背中を叩く。



「ぐわぁぁっ!」



「なに止め刺していますの?」



「初撃が止めになるような鍛え方していないでしょ」



「一撃必殺の聖女相手ですわよ」



 よくわからないけれど褒められた。

 あたしは気をよくして鼻を鳴らすと、あたしたちにガイルとテッカが近づいてきた。



「おう、おはようさん。しっかし酷いツラしてんな。もう決まっちまったんだから覚悟を決めて腹を括れ」



「こういうのは思い切りが大事だ。別に勝てと言っているわけではない、アルマリアの胸を借りるつもりで全力を出せばいい」



「それは、そうなのですが。ですけれど、わたくしたちにとって勇者様やその剣、ギルドマスターは雲の上の存在、そんな方といきなり戦えと言われましても、それなりの覚悟を用いるのですわ」



「でもお前たち、魔王と聖女とは拳を交えたんだろ?」



「……? あ、ええ、そういえば」



「勇者や剣、ギルドマスターを敬うのは喜ばしいことだが、お前たちはすでにそれと同格の者たちと同じ戦場に立ったのだということを自覚しろ」



「だな。おいジンギ、アルマリアはバイツロンドのジジイより恐ろしいか?」



「……どちらも恐ろしい。でも、うん、俺バイツロンドの爺さんと戦ったんだ」



「ランファお前はリョカの傍にいた、魔王は恐ろしかっただろう?」



「ええ、竜相手にも笑い、死神様には激情を向けていましたわ。あの時は生きた心地がしなかったですわ」



「なら大丈夫だ。お前たちはアルマリアを相手しても全力で戦える」



「その通りだ、ここまでに通った戦いを糧に今日は全力でぶちかましてやれ」



 ガイルとテッカに撫でられた2人が握り拳を作り力強く頷いた。

 あたしがいうことは何もなくなってしまった。あたしは隣にいるアヤメを撫で、テッカの脚に蹴りを放った。



「なんでだ?」



「あたしも言おうとしていたからよ。まああんたたち、とりあえずアルマリアに勝ってきなさい」



「……何言ってんだお前は?」



「いや、だって最近あの子たるんでるでしょ。ここいらで一発喝を入れるためにあんたたちが勝ちなさい」



 ジンギがあたしを指差しながら涙目をガイルとテッカに向ける。



「おいせっかく励ましたのに何してくれてんだよお前は」



「別に勝っちゃ駄目ってことはないでしょ。というかリョカが補助に入るみたいだけれど、あたしが入るわ。アルマリア、最近本気でギルドマスターをリョカに押し付けようとしているし、ここいらで折っておかないと」



「止めてやれ。というかそれは今日でなくてもいいだろう、せめて別の日にだな」



「もう決めたわ。今日アルマリアを泣かす」



 ガイルとテッカが頭を抱え、チラリとジンギとランファを見た。



「……2人とも、すまん頑張ってくれ」



「……災害がやってきたようだ、何とか耐えてくれ」



「途端に頼りなくなるのは止めてくださいまし!」



「なんで俺たちの時に起きるんだよ!」



「やる気が出たようで何よりだわ。さあ、一緒にあの甘えん坊のチビッ子をブッ飛ばすわよ」



 ジンギとランファが力なく手を上げるのを横目に、あたしはやる気を出していくのだった。

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