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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
11章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、夜に出会う。

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魔王ちゃんと未熟な金属

「お前それ反則! 一切近づけないじゃないか!」



「それはジンギくんの目がまだまだ甘い。一応抜け道を作って設置しているんだから、しっかりと観察して有利に動かなきゃ」



 街の外でジンギくんに魔剣を使用してちょっとした戦闘訓練をしていたけれど、ついに彼が折れた。



「ぐっ、だけれどな、そんなものしっかり見て躱せる奴なんているのか?」



「この速度ならセルネくんとクレインくんなら躱せるんじゃないかな」



「……あの2人か。セルネはまあ頑張っている姿をよく見ていたから納得出来るが、クレイン=デルマか。最初の印象は、どこにでもいる印象の薄い奴だったけれど、あいつ強いな。実力もそうだが、セルネをあそこまで信じるなんて俺には出来そうもない」



「オタクのいいところだよね」



 僕を慕ってくれている子たちが褒められて純粋に嬉しく、つい機嫌をよくしてしまう。



「……魔王が部下を褒められて喜ぶなよなぁ」



「嬉しいものは嬉しいんだもん。私ではそういうことをやってあげられなかったからね」



「なんの話だ? まあいいけれど――セルネたちもそうだけれど、ヤバいのはカルタスとシラヌイか。ベルギンド様……カルタスの親父さんが知ったら泡拭いてぶっ倒れるんじゃないか?」



「ソフィアのお父さんか、僕会ったことないんだよね。お偉いさんが集まる場所とかには連れて行ってもらえなかったし、そもそも僕、世界情勢とか政治って興味なかったから一切触れていないんだよね」



「1人娘がこれだとジークランス様も大変だろうな。というかグリムガントの1人娘もお前に付きっ切りで貴族勢力に興味持ってなさそうだったし」



「ないねぇ。今のミーシャを貴族に会せたら問答無用で顔面を歪ませると思うし、今のあの子が興味あることはどれだけ確実に顔面を歪ませられるかだけだよ」



「獰猛すぎるだろ、レッヘンバッハ様とは似ても似つかないな」



「ジンギくんはミーシャのお父様とも?」



「ああ、世話になっている。お嬢……ランファの家、イルミーゼの家が魔王に襲われた話はしただろう。現在のイルミーゼ家の当主はランファなんだが、ベルギンド様とレッヘンバッハ様は今でもランファを気にかけて色々と世話を焼いてくれている」



「……ミーシャが一切ランファちゃんのことを知らなかったのは何故なんだろうねぇ」



「ランファ、実はミーシャに会うの楽しみにしていたぞ。でもお前が魔王になって、それのために奴が聖女になったって知って少し怒っていたな」



「なんか、ごめんね」



 とことんランファちゃんと歩幅とタイミングが合っていないことに、謝罪をしてしまったけれど、ジンギくんが首を横に振ってくれ、背中をぼんぼん叩いてきた。



「気にするな。俺たちが、ずっと勝手だっただけさ」



「ジンギさんは、なんというか大人になりましたね」



 と、飲み物を手にしたルナちゃんがやって来てそう言った。



「え? 俺こんな子どもにまで情けない男と認識されているのか」



 ルナちゃんから飲み物を受け取ったジンギくんががっくりとうな垂れた後、少しむっとした顔を浮かべながら芝生に腰を下ろし、ルナちゃんを手招きした後、近づいてきた彼女を抱き寄せて頭や頬をムニムニとこね回した。



「誰だぁそんな評価をお前に伝えた奴はぁ。リョカかぁ? ミーシャか? それともセルネかぁ?」



「きゃぁ~」



 嬉しそうにしているルナちゃんと幼い子を可愛がるお兄ちゃん的な空気のジンギくん、内心冷や汗を流している僕。

 いや、ルナちゃんがジンギくんをどうにかするとは思えないけれど、ルナちゃんを知っている人が見たら絶対に驚くだろう光景に、僕は苦笑いを溢す。



「いえいえ、聞いたというより、お見かけしたことがあったので。わたくしはもっとリョカさんに突っかかると思っていましたので」



「う~ん? まあリョカはこうして話してみると、本当に周りのことをよく考えてくれている奴だからな。俺だってもう成人を迎えたんだ、違うことを違うと、切り替えられるようにはなっているさ」



 ジンギくんからの評価が素直に嬉しく、僕も2人の隣に腰を下ろし、両手でカップを掴んで飲み物を飲んだ。



「あ~その、なんだ」



「うん?」



「リョカ=ジブリッド、お前を話も聞かずに倒そうとしたこと、本当にすまなかった」



「あ~……」



 突然頭を下げるジンギくんに僕は笑みを返した。



「ジンギくん、結構いい男じゃん。これからも、よろしくね」



「――ああ、お嬢共々、世話になるよ」



 爽やかに笑ってくれたジンギくんが手を差し出してきたから、僕は彼の手を掴んだ。

 そしてふと思いつき、僕は魔剣を生成した。



「そうだジンギくん、ナイトマイトメタル、ちょっとやってみてもらいたいことがあるんだけれど、いいかな?」



「ん? ああいいけれど」



「じゃあちょっと特訓しようか。今度のアルマリア戦、度肝を抜いてやろうぜ」



 僕の悪巧みの表情にジンギくんも釣られたのか、同じような顔をして頷いてくれたのだった。


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