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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
11章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、夜に出会う。

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聖女ちゃんとうぇいととれーにんぐ()

「ああ、やっと見つけたわ」



「あ? ミーシャと……神獣――アヤメか」



 朝食を終え、あたしとアヤメはリョカから弁当を渡され、こうしてガイルとテッカ、アルマリアを探していた。



「ガイル、女神様だぞ」



「そうだそうだ、テッカもっと言ってやりなさい」



 ガイルたちは丁度良く街の外におり、幾つかの魔物を狩り、素材を集めているようだった。



「ミーシャさん、私たちを捜していたんですかぁ?」



「ええ、ちょっとリョカから頼まれてね。もしかして忙しかった?」



「いや、ヘリオスに頼まれてな。こうして素材を集めてたんだよ。ついでに依頼料もくれるっつうからこうして朝早くにな」



 ガイルにあまり反応してもらえなかったからか、アヤメが腰に引っ付いてきたためにあたしは彼女を軽く撫でると、テッカが辺りを見渡していた。



「リョカは大丈夫なのか?」



「ええ、もう大丈夫だと言っていたわ。今日はルナとお出かけよ」



「それなら良かった。あれだけの武器を作ったんだ、少し心配していた」



 相変わらず気苦労を背負う男だとあたしは肩を竦めてテッカに目を向ける。

 するとアルマリアが苦笑いを浮かべており、彼女に目を移す。



「それでミーシャさん、私たちはそれ(・・)に言及した方が良いのですかぁ?」



「ああ、これね」



 アルマリアが指差したのはあたしが引きずっている大きな袋で、その袋がゴソゴソと動いていた。



「さすがに犯罪行為とかはぁ」



「うんなことするわけないでしょ」



 あたしは袋を放り、中に入っていたオタクセたちを解放する。



「み、ミーシャ! 突然なに」



「ミーシャ様、出来れば説明が欲しいでござるよ」



「いててて、あっしたち野郎同士でくっ付き合う趣味はないですぜぃ」



「あ~目が回った」



「……これを犯罪行為ではないと言い切る聖女がいるらしいわ」



 アヤメの言葉を聞き流し、あたしは彼らを指差した。



「おっ、オタクセじゃねぇか。なんだなんだ? 親睦会でも開くのか?」



「そんなわけないでしょ。リョカがこの子たちは戦闘圧に慣れた方が良いからってあたしに預けてきたのよ。だからあんたも手伝いなさい」



「あずけ、た?」



「ミーシャ、部屋の扉ぶち破って突然袋に詰める行為を誰かから預けられたとは言わないよ」



 オルタとセルネが首を傾げているけれど、あたしはリョカから頼まれてこうしているから何も間違っていない。



「え、ちょっと待って、あのミーシャ様? 今の話を聞く限り、俺たちは今から」



「あたしとガイルの戦闘圧を受け続けなさい」



 クレインが飛び出した。次にオルタ、タクト、まさか逃げるとは思ってもいなかったのか、セルネが一度驚き、あたふたとした後3人に続くように駆け出したけれど、足がもつれてその場で転んだ。



「ま、待って! 俺を1人にしないで!」



「テッカ、アルマリア」



 あたしはテッカとアルマリアに声を掛けると、涙声になっているセルネを立ち上がらせた。



 そしてすぐにテッカとアルマリアに連れられたオタクたちが青い顔をしながら、セルネの傍に下ろされた。



「に、逃げないでくれよ~」



 セルネが涙目でポカポカとオタクたちを叩いており、リョカが話していた小動物系という言葉の意味を理解した。



「いやごめんセルネ、せめて最期に家族と話しておこうかと」



「……ああ、終わったでござる。拙者たち、まだリョカ様に何も返せていないでござるよ」



「見たかったですぜい、まだ見ぬ魔物を」



「こいつら失礼ね」



「日頃の行ないの賜物でしょうが。お淑やかになれとは言わないけれど、もう少し慎みを持ちなさいよ」



「俺と戦った時より恐怖してんじゃねぇか」



 一体あたしの印象はどうなっているのか、後で話し合うべきかとも考えたけれど、そんな時間も惜しく、さっさと始めたいから、あたしは薄く戦闘圧を表に出す。



「うっ、ミーシャのが一番重い」



「だね。ガイルさんやテッカさん、昨日のカナデ嬢みたいな鋭さはないけれど、とにかく重い」



「重い重いって連呼すると殴るわよ」



 あたしがため息を吐くと、ガイルだけでなくテッカも混ざってきた。



「確かに、ミーシャの殺気は背筋が凍ると言うより、鈍器で殴りかかれるような感覚だな」



「体が重くなるんだよな。なんつうか、これ以上進んじゃ駄目だって言う感覚」



「ふむ……」



 そこまで重い重いと言われるのは、少し癪ではあるけれど、体が重くなる。テッカ対策には良いかもしれない。



「俺の動きは鈍らんぞ」



「あらそうかしら? やってみなければわからないわ。というか昨日のあれ、あたしは一切追えなかったのよ。勘も働かなかったしあんたに首を狙われたら一瞬で終わってしまうわけよ」



「俺もまだ、先輩としてお前の前に立っていられそうだな」



「今日限りよ――」



 重く、重く――相手がぶっ倒れるほどの殺気を、あたしの周囲だけを限定して発現させる。

 普段はあちこちにばらまくだけだったけれど、昨日カナデがやっていたように空間を作るように広げてみればどうかしら。



「は――?」



 途端、ガイル、テッカ、セルネ、オルタ、タクト、クレインが脚に力を込め、歯を食いしばり始めた。



「お前、これ」



「……少しくらい、先輩風を拭いても、いいだろうがっ」



「あががががっ! ミーシャミーシャ! 重い重い!」



「おおおぅ、あ、あれ今拙者たち、殺気を当てられているのでは!」



「いや確かに殺気ですぜい、でもなぜこんなにも重い」



「脚力強化、脚力強化、脚力強化――」



 各々が動けなくなっているけれど、困ったことにあたしも動けない。

 確かに体が重く動くのがしんどい。



 すると、戦闘圧の空間から逃れていたアヤメとアルマリアが話しており、あたしはそちらに耳を傾ける。



「なあ鈍器幼女」



「アルマリアですよぅアヤメさま」



「……ある聖女がさ、どういうわけか闘争心に質量を持たせ始めたのよ」



「あ~、はい。そうみたいですねぇ」



「でさ、これの原理が女神である俺にもさっぱりわからないわけよ。あいつ、俺の知らないスキルでも持ってるんじゃないでしょうね」



「女神様でもわからないなら、私たちじゃお手上げですね~」



 アヤメが地面にシートをひき、その上でリョカに渡されたおやつとお茶を口に運んでいた。



 あの幼子たちは放っておくとして、まあいい機会ではないだろうか。

 あたしはその場で腰を下ろし、大きく息を吐いて両手に信仰を込める。



「何あいつこの状況で修行しようとしてんだよ。俺もやる!」



「……もう何も言うまい。俺もこの状況で動ける訓練でもしよう。技も解禁していきたいしな」



 ガイルが盾を出してそれをあたしの戦闘圧に当てたりぶつけたりしていて、隣ではテッカが歯を食いしばりながら動いたり、カナデの時にやっていた技を繰り出そうとしたりしていた。



「いや馴染まないでください! 出して~、出してよぅ」



「無駄でござるよセルネ、拙者たち、3人が満足するまで出られないでござるよ」



「お、俺らもなんかしておくか」



「脚力強化、腕力強化、骨格強化」



 やっと諦めたオタクセたちを横目に、あたしは信仰を効率よく拳に込める訓練を開始する。あとは体が重さに慣れてくれれば良いけれど、これ重さも調節できるかしら?

 あたしはさらに戦闘圧を重くしようとその場で様々なことを試そうとするのだった。

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