ひたすらにめんどくさい兄を持った妹が、『ラブ』で『コメ』する物語
私、四条つばきには歳の離れた兄がいる。
傍から見たら、兄さんは私の事を猫可愛いがりしているように見えるかもしれない。
しかしである。
可愛がられてる当の本人からしてみればどうだろうか?
端的に言ってしまおう。
ただただ、ひたすらに『うざい』。『めんどくさい』。『邪魔』。
そんな言葉が列挙される。というか、その言葉を口に出してしまいたいくらいうんざりしている。
例えば兄さんに向かって。
「兄さんなんて、大っ嫌い!!」
なんて言葉を投げかけてみようものなら。
「ハハハハハハッ!! 相変わらず可愛いな!! 俺の妹は!!」
という言葉が返ってくる。
馬鹿なの? 阿呆なの? 頭にうじでも沸いてるんじゃないの? このクソ兄さん。
『大嫌い』って言ってるのになんで『そんな』反応になるのか、とても理解に苦しむのだけれども。
私は決してツンデレなどではなく真面目に兄さんの事を『うざい』し『めんどくさい』し『邪魔』だと思っている。
けれど、兄はそんな私の気持ちなど意にも介さず、猫可愛がり。
こんな生活を私と兄は幼いころから続けてきた。
時は流れ、私はJKになり、兄は女子高の教師になった。
よりにもよって『私の学校(女子高)の教師』に、である。
女子高の先生で若い男性教諭はそれなりに目立つ存在だ。
やれ、『あの先生の彼女は教員』だの、『実は生徒にこっそり手を出してるらしいよ』だの。
兄さんもそんな噂の中心的人物だった。
そして、めんどくさいことに私もその噂の中心人物だったりする。
何故かって?
兄さんが学校でも私の事を相も変わらず猫可愛がりするものだから、『あの兄妹はデキている』という噂が広まってしまったのだ。
私は兄さんに冷たくあたっているつもりなのだけど、その様子がどうやら私がテレているだけのように見られているらしい。
そんなこと、絶対にありえないのだけれども。
「そりゃ、つばきが典型的なツンデレ妹だからだよ」
とは親友の伏見あかりの弁。
「私はただ、ひたすらに兄さんの事はめんどくさいと思っているのだけれど」
「そういうところが、だよ」
ビシッと私の顔を指さし無い胸を張りながらそんなことを言い張る親友。
噂を垂れ流しているのはこの親友なんじゃないだろうかと思いながら、私は一つ深いため息をつく。
ひたすらめんどくさい兄を、めんどくさがりながら、学校生活を送っていく。
そんな日常が、続くと思っていた。
けれど、そうはならなかった。
雪の降る夜。
私は兄さんに寄り添い頭を預けていた。
そんなことをしたくないのに。
『私は、兄さんの事が好き』
私は兄さんの事は大嫌いなのだけれど。
『キスしよ? 兄さん』
したら、殺す。比喩抜きで。
口からこぼれ出る言の葉と、私の意思が一致しない。
何故こうなっているのか。
どうしてこうなっているのか。
今の私は、私じゃないからだ。
今の私は、私であって、私ではない存在。
私の中に、『別の意思』が入り込んで私の事を突き動かしている。
それは―――
白い雪が舞っている日の出来事だった。
その日の出会いが私の学生生活を一変させてしまうことになる。
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