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#004 人のこと殴っちゃダメとか言うけど、拳で殴んのも言葉で殴んのもかわんねーからな

 金が、ない。なので、悠二はフェイに飯を食わせたとしても、無銭飲食で捕まる。


「これ……もっちゃ、すごく……もっちゃ、美味しいですね……もっちゃ」


 と言って、フェイは目の前にある料理を貪っている。

 

「ごくん。すいませーん、おかわりくださーい!」

「うん、好きなだけ食いな、もういっそ」


 死んだ目でそれを見つめるのは悠二である。


「どうせ金ねーんだし」


 ギルドである。しかし、半分酒場のようなもので、すぐ近くにあった飯屋ということで悠二たちは真っ先に駆け込んだ。で、フェイ一人だけが食事しているのを、悠二はイライラしながら見つめていた。


 ——そうだ、コイツ置いて、俺一人だけで逃げよう。


 テーブルに頬杖を着きながら悠二は思う。


 ——別にコイツが捕まったところで、俺無関係だし。


 なので、悠二は早速席をたった。


「どこへいくんです?」

「ん、便所」


 と言って、悠二はそそくさと出口へ向かう。


「じゃあな、ガキ」


 すると、うっかり悠二は人と肩をぶつけてしまう。


「お、悪い」


 悠二は平謝りするが、相手の大男は悠二を睨んでそれを辞めない。


 ——まさか、今度こそ本当にチンピラとエンカウントしちまった?

 

「おい、小僧」


 チンピラが威圧感のある声で言う。


「テメエ、どこ見て歩いてんだ」

「とりあえずすいませんした、じゃ」

「じゃ、じゃねーよ。おいこら、それが人に謝る態度か?」


 言って、チンピラは悠二の胸ぐらにつかみかかる。


「またかよ、ヨシヒコばりのエンカウント率じゃねーか」


 冷めた目で悠二は言う。


「毎回毎回チンピラみてーなやつに絡まれて……」

「ともかく、謝罪と、それにふさわしい慰謝料をだな!」

「うるせえ!」


 悠二は怒鳴って、チンピラの顔面にアイアンクローを叩き込んだ。


「そんなことより物理で殴る、のが、俺だ」

「いってえ!」


 チンピラは鼻血の出まくる鼻を抑えて、のたうち回る。

 そこへ、悠二が言った。


「そっちだって手え出したんだ。とりあえず、これでお互い様ってことで」

「いや、そっちも殴ってんじゃねえか。一発返さなきゃどっこいじゃねえ」


 と、チンピラが悠二に殴りかかる。

 が、悠二はそれを綺麗に避けて、代わりにチンピラのみぞおちに膝蹴りを入れた。


「はい、じゃ、喧嘩両成敗」


 悠二の足元にチンピラが倒れた。

 そこで、悠二はあることを考え、チンピラについているポケットというポケットを探った。


「ひー、ふー、みー。うっひょう、割ともってんじゃねーか」


 悠二は、チンピラの財布の中身を確認しながら言った。

 

「これで、俺は逃げる必要がなくなったわけだ」


 そして、悠二はフェイのいる席へ戻る。


「お待たせ」

「早かったですね」


 テーブルには、さっきより多くの料理が乗っかっていた。

 いつの間にかフェイが追加注文したのだろうが、今の悠二には余裕で対処できる金がある。


「それよりも、だ」


 で、悠二は新しく考えついたプランを語る。


「仕事を受けよう、二人で」

「仕事? ああ、そういえばここギルドでしたね」


 異世界——まあ、簡単にいえばモンハンのようなこの世界。モンスター討伐などの仕事を受けて、こなして、報酬を受け取って、日々を生きる。そーゆうルーチンで成り立っている。


「えっと、おまえ、なんだったか、強いんだろ? なら、ある程度の仕事は簡単にこなせるわけだ」

「まあ、そうですね」

「じゃあお前と手を組むのも悪くねえ」


 悠二が悪党のような笑みを浮かべる。


「クリア報酬を折半する。俺たち、二人で」

「まあ、いーですよ」


 フェイはたいして話を聞かず、テキトーに首を縦に振る。


「よっしゃ。これで、しばらくの生活費にもなるし。今後の展開にも、しばらくは困らねー」

「そーですねー」


 で、フェイが食事を終えるのと同時に、二人はクエストへと旅立った。



 ◇



 ——が。

 この小説の流れ的なものを理解し始めてる皆様なら、もう察していることだろう。クエストったって、この小説のクエストなんだし。まず、ロクなことにはならない。


 例えば一つめの薬草採取クエスト、なんてやつは、採取した薬草のほとんどを食い意地のはったフェイがむさぼり食ってしまったり、それら全てが毒草だったりして、大変だった。


「気持ちわるいですオボロシャアァァァァ」


 フェイが吐いた。


 それから、モンスター退治、つーかスライム退治では、スライムのドロドロ粘液に包まれる悠二という、なんの生産性もない絵面が続いた。


「気持ちわルオボロシャアァァァァ!」

 

 フェイが吐いた。


 さらには、クエストを全て終えて帰ってきた、その日の夕飯では、食べ過ぎ、飲み過ぎで、フェイが吐いた。


「オボロシャアァァァァ!」

「いやオメー何回吐いてんだ! つーか、臭え!」


 で、相変わらずシャウトする悠二だが、ここまでくると、なんかやけくそな感じがする。


 ともあれ、いくつもクエストをこなした二人だったが、明日、また別のクエストへ出発しようとしていた。

 そして——。



 ◇



「今回のクエスト、は。ダンジョン攻略か」


 薄暗い洞穴の前で、悠二が呟いた。


「この洞穴の中にあるらしい。そこで、まだ未発見の宝を探せばいいわけだ」

「やたらと報酬額良かったですしね」


 とフェイ。


「早速いきましょう」

「ああ」


 言って、二人は洞穴の中へと入っていった。

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