表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

#001 第一印象ってやっぱ大事だよね

 異世界に送られた悠二は、真夜中の森で目を覚ました。 


 悠二としては、めんどい。帰ってゼノブレやりたい。ディフィニティブどころか、2もクリアしてないんだけど。的な考えであったが、主人公として、この小説を放置するわけにはいかない。

 

 というわけで、どのみち悠二は、異世界生活をスタートしなくてはいけなくなったのである。


 で、とりあえず悠二は、人里を探すことにした。

 野宿は嫌なので、せめて山小屋でも見つかれば、と呑気にプラついていた悠二だったが、


「こんな場所で何やってんだ、ヒャッハー!」


 突然、明らかにヤバい連中に声をかけられた。

 上半身裸で、モヒカン頭の、ヒャッハーである。


「あれ、ここ世紀末だっけ?」


 悠二は苦笑いする。


「あのー、見逃してもらえないっすか。金も食料も持ってないんで、俺」


 へりくだった態度で、悠二は言った。


 戦闘になるのは避けたい、というのが悠二の考えであった。

 相手は無法者。何を拍子にブチ切れて、襲ってくるかわかったもんじゃない。おまけに、相手は皆ヤバそうな武器を担いでる。だから下手に出て、穏便に事を済ませようとしたのだ。


「とぼけんな! この状況なら、誰だってそう言うだろうよ!」


 舌を突き出しながらモヒカンAは言った。


「夜中の森は危ないんだぜ?」


 続いて、モヒカンBが言った。


「こりゃ、ちょいとお仕置きが必要なようだな」


 モヒカンCも言った。


「バカな奴もいたもんだぜ」


 モヒカンDは言った。


「今すぐ」「家に」「帰んな」「悪い子ちゃんがよぉ!」「ヒャッハー!」


 モヒカンE、F、G、H、Iが同時に、声を揃えて叫んだ。


「いや、モヒカン多すぎんだろおォォォ!」


 悠二がシャウトする。


「つーか、なんでアルファベット表記? わかりづれーんだよ、差が!」

「何を言ってる? 俺達は、アルファベットだけじゃねえぜ」


 と言ったのは、モヒカンΣ。


「たいして変わんねえだろうが!」


 悠二はツッコムが、モヒカン達はさらに続ける。


「ちなみに俺はモヒカン@」

「俺はモヒカンⅢ」

「モヒカン!だ。この!は記号の!じゃないぞ。繋げて、モヒカン・エクスクラメーションと呼んでくれ」

「いや、しつけえェェェ!」


 悠二のシャウトが、モヒカン達の自己紹介を遮った。


「つーか、なんだよこの茶番! なんで異世界に来て早々、こんな寸劇を見せつけられなきゃなんねんだよ!」

「まあ待て。まだ、ボケのレパートリーは残ってるんだぜ?」

「もういいわ! これ以上は胃もたれしちまうっつーの!」


 見ると、モヒカンが長蛇の列を作って、自己紹介の順番待ちをしていた。


「いや、多い多い。こんなの悠長にやってたら、日が昇っちまうよ」


 で、早速モヒカンが一人悠二の目の前に出てくる。


「だから、もういい加減に——」


 と、モヒカンの姿を見ると、他のモヒカンとは違い肩パッドを装着している、いわゆる上級モヒカンであった。


「いや上級モヒカンって何!? なんで肩パッドつけただけで上位互換扱いになんの!?」


 すると、上級モヒカンは悠二へ——名刺を差し出してきた。


「異世界に名刺あったんだ! つーか、必要ねーだろ。どー見たってただのチンピラ……」


 見ると、名刺には『モヒカン警備会社社長 モヒカン♨︎』と書かれていた。


「その見た目で警備員だったんかいィィィ!」


 悠二は叫びながら名刺を地面に投げつけた。


「ほら、ギャップ萌えってあるじゃん? 狙ってんのよね、それ」


 と、モヒカン♨︎は二枚目の名刺を悠二に差し出す。


「いらんわ! つーか、考えが浅はか! 出落ち感ハンパねーんだけど!」

「あ、うん、オチはないぞ」

「オチ考えてないんかい! それと、♨︎ってどう読むんですか?」


 相手が警備員だと知って、悠二の口調が少し丁寧になった。


「ああ、自己紹介が遅れてすまない。俺の名前は、オンセン・マークだ」

「あ、それ本名なんだ」


 悠二が続ける。


「つーか、じゃ、なんでそんな格好してんですか。チンピラ取締る側が、チンピラみてーな格好して」

「だって、モヒカンかっこいいじゃん」


 オンセンが答えると、悠二は呆れた顔をする。


「だからって、なんで組織全体がアンタの趣味に付き合わされてんの」

「カシラの趣味じゃねえ! 俺達は好きでこの格好してんだ!」


 と、外野のモヒカンが割り込んでくる。


「ちなみに俺はモヒカン——」

「はいはい、もういーから。これ以上モブに割いてる尺ねーから」


 ツッコミのボルテージが一気に下がった悠二は、落ち着いて、話を先に進めることにした。


「で、アンタら本当に警備員?」

「ま、自警団ってのが正しいかな、異世界だし」とオンセン。

「うん、そーゆうメタ発言はいーんで。だ、俺は街に行きたいわけよ」


 悠二が言うと、オンセンはうなずいた。


「了解だ、お前を街まで連れて行けばいいんだな」

「そうそう、もう少しで2000字いっちゃうし、このまま何事もなくストーリーが進んでくれると助かる」

「いや、オメーもメタ発言すんのな」


 で、そんな会話をしてると当然、思ったようにストーリーが進むわけもなく。


「カシラァ!」


 モヒカン(モブ)がそう叫びながら、不穏な空気と共に、血相を抱えて駆け寄ってきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ