表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

殺人という罪

「……絵里加って誰よっ!?…知らないわよっ!!」

「じゃあ、別の話をしよう。君の名前は下条友里亜だろう?思い出せ。思い出すんだ」

「私が下条友里亜だったらどうだって言うの!?」

「じゃあ、下条友里亜だと認めるんだ?」

「確かに前世はそうだったわ」

「サラブレッドとしてアイドルデビューしたけど大して売れなくて、親の威光をかさに着てライバルを潰しまくったよね?」

「潰される方が悪いのよ!大した才能もないのに馬鹿みたい!あははははっ!!」


 友里亜は笑い出した。裕福な家に生まれた。親が偉かった。周りはみんな羨ましがってチヤホヤした。あんまり憐れだで捨てられた犬みたいだから、時々小さなお情けをあげたら、みんな喜んで尻尾を振った。


「私は金のスプーンをくわえて生まれてきたの。私は何でも持ってる。最高のものを何でも持ってる。それが当たり前なの」

「人に生まれは選べない。確かに君は恵まれていた。だが、人を貶める権利はない」

「あら、博愛精神?人類全部好きになれるわけないじゃない?気に入らない子を気に入らないって言って何が悪いのよ?」

「ユリアナ・バウアーがやったと同じように、衣装を汚し台本を破く行為は器物破損となる」

「お金ならあるの。そんなのいくらでも恵んでやるわよ。払えばいいんでしょ」

「肉体的暴力は?」

「それは周りが勝手にやっただけ。私は指一本触ってないわよ。誰が、そんな汚物を触りたいの?」

「暴力を指示して、後ろから笑って眺めていた?」

「証拠はないわ」

「君の暴力を心身に受けて心を病んだ人は少なくない。罪悪感はないの?」

「そいつが弱いのが悪いの。私は悪くないの。世界は弱肉強食なの。強い人間だけが生き残るの」

「だから絵里加も殺した?」

「あら、そんな名前の子がいたわね」

「絵里加を殺したって認めるの?」

「別に殺してなんかないわ。ちょっと脅しただけ。あんまり怯えるから、衣装部屋に突飛ばしただけ」

「そして鍵を掛けて閉じ込めたんだよね?絵里加は助けてと言ったはずだ」

「ノロマの泣き言なんか聞くもんですか」

「だから火災ベルが鳴った時に助けなかった?」

「そうよ。あら、あの子って結局どうなったのかしら?」

「絵里加は死んだよ」

「あはははは!お腹の皮がよじれるわ!」

「そんなに絵里加を妬んでいたの?」

「……妬んで…私が妬む何があの子にあったのよ!」

「全てだよ。誰もが絵里加を愛した。大衆だけじゃない。歌や芝居に神様がいるのなら、絵里加こそがその寵児だった」

「ちょっと歌が上手かっただけ!ちょっと芝居が上手かっただけ!あんなの大したことないわっ!!」

「そのちょっとが明暗を分けた。君の欲しがった歌は絵里加に、君の欲しがった映画は絵里加に流れた」

「…………」

「歯ぎしりしかできないの?君の欲しがった高梨聖也は絵里加を好きになった」

「聖也さんは私のものだった。あの子が盗ったのよっ!!」

「君は高梨聖也に振られたのに?」

「…何でそれを知ってるのっ!?」

「有名な話だよね?下条友里亜は高梨聖也が好きで追いかけ回したけど、高梨は嫌がって逃げ回ったって」

「…くそぉーっ!!…あいつが、あいつが悪いんだっ!あいつが盗ったんだっ!!だから殺してやったんだっ!!」

「…絵里加を殺したら手に入るの?」

「あいつさえいなければ全部私のものだ!」

「君の罪は殺人罪に相当する。確かに暴行は死に至るものではなかった。だが君には妬みと憎しみという強い殺意があった。明解な殺意をもって暴行がなされ死に至った。これは殺人だ」

「あははっ!だから何だって言うの?ここは乙女ゲームの世界だから、私を裁けない。前世が何だって言うの?私は人世をリセットしたの。またリセットすればいい。今度はもっと素敵な、私にふさわしい世界を選ぶわ」

「ここは乙女ゲームの世界じゃない」

「じゃあ、何だって言うの?」

「ここは地獄だ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ