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陪審員の要請と召集

 薄暗い牢の中でユリアナは怒り狂っていた。美しいその顔は増悪に歪み、もはや鬼女の様相を呈している。

(悔しい悔しい悔しいっ!!)


-コツコツコツ-

 靴音が響いた。ハッしたユリアナが見たのはセドリック王太子だった。


「セドリック!やっぱり私を選んでくれるのね!助けて!ここから出して!」

「どうして君を選ぶんだ?寝言は寝てから言え」

 鉄格子を握りしめるユリアナにセドリックは冷たく言った。


「私はヒロインよ!!」

「君はヒロインじゃない。君は罪人だ。エタニティ!」

 セドリックの傍らに白い神官服の女性が現れた。フードに隠れて顔は見えず、年齢もわからない。ただ、どことなくおごそかな雰囲気があり不思議な響きの声がある。


「あなたはユリアナ・バウアー男爵令嬢ですか?」

「…はい。そうです」


「では、これより開廷します。裁判長は私エタニティがつとめます」


 エタニティの右手に持った杖で床を叩いた。それは大きな音を響かせ、不意に辺りが明るくなった。驚いて見回すユリアナの目に自分の両親が見えた。


「お父さんお母さん!助けて!ここから出して!!」


 両親の後ろには祖父母が兄弟がいた。だが誰も一言も喋らない。


 セドリックの後ろには国王と王妃、兄弟である王子と王女がいた。


 みな真剣な表情で神官を見ている。


「まず検察担当セドリック。ユリアナの罪状を述べなさい」

「はい。被告ユリアナはベアトリーチェを罪に貶める為に、証拠を捏造しました。これは証拠偽造罪にあたります。また、王太子妃となるベアトリーチェの名誉と尊厳を汚し、貶めようとしたことは不敬罪です。全てはユリアナが自分を籠絡し王太子妃におさまろうという野望の為に工作したのです。こちらは内乱罪。更に自分が王太子妃になった暁にはベアトリーチェ殺害の計画がありました。こちらは殺人予備罪です」


「私そんなことしてないわっ!信じてっ!!」


「弁護側、何かありますか?」

「……ありません、エタニティ」

「お父さん!言い返してよ!どうして何も言わないの!?」

「…ユリアナは毎日楽しそうに学園の話をしていました…セドリック殿下とあれを話した、これを話した…二人で笑った…それが全て嘘だったと先ほどようやく知りました」

 そう口にした父親は、後は青い顔をしてうつむくのみである。彼らとてユリアナを信じていた。心のどこかでおかしいとわかってはいたが。


「私は悪くないっ!!」

 なおもユリアナは執拗に言い募る。


「では殺人予備罪の証拠を提出します」


 パーティーと同じように映像が現れる。ただし今回はユリアナの自室らしい場所だ。


-ずるいわ、ベアトリーチェ。高貴な生まれで、何不自由なく育って、誰からも愛されて、望むもの全て手に入れて、セドリックまであなたのもの。世の中は何て不公平なのかしら。全部全部、私のものだったのに-


 増悪に染まったユリアナの顔に、家族たちは声もない。皆それぞれにユリアナを愛してきた。我が儘にねだられても、たった一人の女の子だからと特別扱いしてきたはずだった。だが、足りなかったのだ。より多くを求めるユリアナには全く足りなかった。その重い事実に彼らは打ちのめされた。男たちは顔を覆い、女たちはすすり泣いた。


-その身体など醜く卑しいものたちに汚されればいい。むち打ちや焼きごてで苛まれればいい。美しい髪はカツラにする為にむしり取ればいい。死骸は犬に喰わせればいい-


-私の獲物。私の可愛い獲物。私の愛しいベアトリーチェ。私の可哀想なベアトリーチェ。地獄へお行き。地獄では絵里加がお前を待っている-


 ベアトリーチェに髪色の似た人形の身体を執拗にまさぐり、嘲りながら笑いながら人形の手足を千切る。その醜悪さは二目と見られない。


「……絵里加?」

 そんな中、セドリックは一つの名前を聞き咎め考え始めた。やがて意を決したように言う。


「エタニティ。事情が変わりました。陪審員裁判を要請いたします」

「その要請を妥当と認め許可する。陪審員希望者を召集する。陪審員は清聴し公平を心がけるように」

 エタニティが杖を叩くと、今度は辺りが暗闇に包まれた。


「な、何!?」

 ユリアナとセドリックにのみスポットライトのように光りが注ぐ。


「……君は絵里加を殺したね?」

陪審員裁判を傍聴したことはありますが、これはお話なのでご都合主義は許してくださいね。


お読みいただきありがとうございました。

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