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萌芽

下條友里亜は、まさに銀の匙をくわえて生まれてきた子供だった。


友里亜の父親は映画監督、母親は数々のドラマで主演をつとめた美人女優櫻子である。


TVで流れた結婚記者会見で櫻子は語った。


「愛する夫や子供の為に良き妻良き母として頑張ります。でも私は女優です。育児が落ち着いたら、もう一度女優として復帰したいと思っています」


「ご主人は奥様の芸能活動どう思われてるんですか?」

女性記者が質問する。


「もちろん応援します。私は女優としての櫻子の大ファンです。彼女がもっと羽ばたく姿を側で見ていきたいと思います」


たくさんの芸能人を招いて華燭の式をあげた。ニュースとして とり上げられた それは ひたすら 豪華で華やかだった。


そして女児を妊娠 出産。


もちろん ずっと メディアに出続けた。


産後少し落ち着いたら仕事をまた少しずつ入れるようになった。


「仕事だったのこれだけなの?もっとたくさん取ってきてくれていいじゃないの! 世間が私を忘れちゃうわ!私は仕事がしたいの!もっとたくさん芝居をしたいの!私は櫻子なんだから!」


家庭より仕事を望んだ。


そうして仕事で疲れて帰ってくると友里亜の部屋に来る。


「あー 疲れたわ 最低だった。 撮り直し多くって時間がかかってやんなっちゃうわ。あの大根役者!!芝居できないんだったら出てくるな! 私に迷惑かけるな!!ブスの癖に!!」

怒りと愚痴、周囲への蔑み。しかも 最後に必ず友里亜に言う。


「そう思うでしょ 友里亜ちゃん!?友里亜はあんな風になっちゃダメよ! あんな 負け犬に。

可愛いわ〜。友里亜ちゃんはあんな一山いくらの 芋とはわけが違うのよ

いつかきっと 私の後を継いで女優になるんだから」


吐き出し切ったストレスがなくなるまで、 人形のように 猫可愛がりして満足するまで、櫻子は友里亜 を離さない。



それがユリアの毎日の日課だった。


仕事で不在がちな両親がいない寂しさを埋めろとでも言うように友里亜の周りには沢山の使用人をつけ、超一流の美しいものばかりを身の回りに揃えさせた。


何一つ不自由させることがないように。


それは両親の意向だった。


審美眼を磨く美しく豪華なものだけを買い与え、友里亜の全てのわがままを全て叶えた。


3歳になったある日友里亜は子猫をねだった。テレビの中のいかにも可愛らしい子猫が欲しかったのだ。


櫻子は友里亜に 血統書つきの白い子猫を買った。


「可愛いでしょう、友里亜ちゃん?血統書がついた猫なの。高かったのよ。友里亜ちゃんの為ならはした金だけどね

そこら辺の野良猫なんて 友里亜ちゃんにはふさわしくないわ

世話は家政婦さんにやってもらって」


櫻子がしゃべるだけしゃべると子猫の入ったゲージを置いてさっさと 部屋を出て行った。


「子猫は何を食べるのかしら?」

「まだ小さいから温めたミルクでいかがでしょう?」

家政婦がミルクを持ってきた。


大層可愛らしい子猫は皿でミルクを出すとゆっくり舐めだした。


「可愛いわ〜」

友里亜が手を伸ばして頭を撫でた。


『シュッ』

「きゃあー!!」

「大丈夫ですかっ!友里亜さまっ?」


食事を邪魔された子猫は不機嫌になって 友里亜の指を引っ掻いた。 右手に赤い傷が、血が滴った。


猫の傷は怖い。慌てて 家政婦は消毒をして包帯を巻いた。


「この騒ぎは何かしら?友里亜ちゃん 怪我をしたの?引っかかれたの? 痛いでしょ? 友里亜ちゃん?」


「痛い痛い痛いー!!こんな子嫌いだわ 意地悪で乱暴でもらってこなければよかった。 捨ててきてちょうだい!!」


「こんな 凶暴で性格の悪い猫はいらないわ。 保健所に連れてってちょうだい。

かわいそうな 友里亜ちゃん。 ママが今すぐ病院に連れてあげますからね。こんな猫のせいで傷跡が残ったら ママ泣いちゃう。 私たちが帰る前にその猫を処分しておいて」

「でも奥様っ!」


「それはゴミよ。 ちゃんと捨てておいてちょうだい」

冷たい目をした友里亜が言った。


「帰ってきて まだいたら壁に叩きつけるわ」


まだ年若い家政婦は、幼女とは思えないほどのユリアの冷たい目つきと 冷たい声と そして子猫をゴミと言い切る その冷酷さに青くなった。


「私の部屋をゴミで汚さないでね」


その子猫は家政婦が家に連れて帰り、里親をすぐに見つけて可愛がって 飼ってもらえることになった。

さて友里亜さんです。

食事中に猫に触ると不機嫌になるというのはよく知られていることらしいです。 子猫や子犬は引き取られていった場所でどんな言葉をかけられるかによって性格が変わってきてしまいます。「この子 性格悪いから返すわ」という 飼い主さんがたまに言えそうですが それだけ ベッドに辛く当たったということです。じゃんじゃん言ってますね(汗)

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