8月5日 月曜日 PM7時
少し疲れたので(俺だけが、少し疲れたので)、『ユニクロ』を出た後、モールの中に有る、カフェに入り休憩をする。
「ふふ」
ラティはモンブランを美味しそうにほおばりながら、時折うれしそうにスカートの裾をなでている。
早速買ったばかりのワンピースに着替えたのだ。購入した後、店の試着室を使わせてもらい、着てきた黒い服は、紙袋に入れてもらった。
そういう、新しい服を着て、無邪気に喜ぶところは、普通の女の子だな、と思う。
ワンピースは、とても似合っていた。それにやはり、今の格好のほうが、風景に溶け込んでいる。
「これから、どうする? あと、どこか寄りたいところとか、ある?」
「うーん、CDショップとか」
「好きだなー音楽が」
俺も音楽は良く聴くし、特に洋楽のロックが大好きなのだが、ラティはクラシックばかり聞いているから、話は合わないかもしれない。
「ちょっとお手洗い行って来る」
「ああ」
ラティが席を立ってすぐ、後ろから肩を叩かれた。
「可愛いコじゃないかー。ていうか彼女できたんだな」
振り返ると森内が立っていた。
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森内は大学に入って一番最初にできた友達だ。映画サークルで出会った。うちの大学の映画サークルは一切映画を撮影しようとはせず、男しかおらず、ひたすら見た映画の話をしているという活動をしている。
森内はすごくいいやつだと俺は思う。が、ルックスがものすごくおっさんくさい。何というか、身体のシルエットが『完成されたおっさん』の、それなのだ。
「違うって、友達」何と説明しようかと思ったが、とりあえずそう言っておこう。
「なんか外人ぽかったけど、ハーフ?」
「あー外国のコなんだ」下界じゃない、という意味で別の国だよな。
「日本語は喋れるけどな」
「へえ、そうなんだ。まあ、あんまり詮索するのもアレだし、俺はこの辺で」
森内が手を振りつつ後ろにあとずさって行く。
「え、何で去っていくの?」
「いや、可愛い子とお茶しているところを、邪魔するほどヤボじゃねえよ」
「いや、いいって、もう少し居ろよ」
「おともだち?」
ちょうど戻ってきたラティが、可愛らしく首を傾けた。