8月5日 月曜日 PM4時
ちょうど夕方のラッシュアワーの直前で、電車はガラガラだった。
ラティは車窓から、眩しそうに町並みを見ていた。フワフワと長くて黒い髪の毛が揺れて、隣に座る俺の顔をくすぐる。
駅から少し歩いて、モールの中に入ると、心地良い冷気が身体を包み、Tシャツの汗が急速に乾いていく。
中はかなり賑わっていた。夏休みだからだろう、家族連れや、中高生らしき若者がたくさんいた。
ラティは、目立っていた。男どもだけで無く、若い女の子からも、美に対する憧れのような視線が注がれている。
黒髪に、独特のデザインの黒い服、ハーフのような顔立ちの彼女は、神様と言うより、妖術使いのような雰囲気を漂わせていた。
やっぱり服を買うのは、正解だ。今の格好では目立ちすぎてしまう。
普段注目されることなど、まったく無い平凡な男である俺も、隣に居るせいで、視線を感じた。
ゴクリ、と、緊張して、わけもなく唾を飲み込む。
だが、ラティは、周囲の視線など、まったく気にせず、モール内のショップを何店かまわり、服を3着選んだ。
俺はそれをレジに持って行き、会計した。合計で3万円くらいだった。
女の服の基準がよくわからない。高いのか?
ついでに自分の服も、『ユニクロ』で何着か買った。俺のはユニクロで十分だ。