表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

8月10日 土曜日 PM3時

 なんか場違い感が……。

 都心の、ブランドショップが多数はいったオシャレな商業施設の最上階に、その演劇ホールはあった。

 白く輝く床のタイル。行きかう人もお金を持っていそうな雰囲気が漂っている。

 ラティの見立てでは今日ここで演劇を観ることで、アリサとの縁が深まるらしい。

 受付の前の部屋で開場を待っている間も落ち着かなかった。

 3日前まで、演劇を見たいと思ったこともなく、このホールの存在すら知らなかったのだ。

 部屋には他にも待っている人たちが大勢いて、椅子に座ってスマホ見ていたり、おしゃべりしたりしている。みんなお洒落な感じだ。


「演劇だって?」

 昨日、それ以上ラティは教えてくれなかった。あとはもう、信じて行ってみるしかない。

 チケットはユース割引きがあって、4000円だった。(ほっ)

 ラティに一緒に行こうと誘ったが、「それじゃ意味ないでしょ」と断られた。

 確かにそうだ。女と一緒にいては出会いも何もない。


「それでは開場の時間ですので、チケットをもって受付に来てください、まずは番号1から10番までのかた」

 俺の番号は、35だ。次いで11から20番・21から30番が呼ばれた。

「では、31から40番のかた」

 きた、受付に行くと、そこにアリサがいた。俺に気付いて、ちょっと驚いた表情をした。

「えっ、なんで?」

「あっ、演劇に興味あって」

「そうなんだ……。はい、パンフレット」

 あ、意外とあっさりした感じ。まあそうか、俺はどうでもいい男だ。

 アリサからはパンプレットと、ほかの劇団の広告などまとめた10枚くらいの紙の束を渡された。

 

 演劇は時代劇の冒険活劇のような設定だった。笑いあり、アクションもあって飽きさせない。

 ただ、2時間ずっとパイプ椅子に座っているのはきつかったけど……。

 そして劇中、宴のシーンで村娘たちがダンスをするシーンがあって、そこではアリサも出演して、ダンスを披露していた。

 劇が終わり、帰り際、劇団の人たちが受付の前に立っていて、関係者と喋ったり、お客さんに挨拶をしたりしていた。

 おつかれさまでしたー、とか、ありがとうございましたー、という言葉が飛び交う。

 アリサも立っていたけど、ほかの人と話していたので、俺は「じゃ」と一言挨拶して、ホールを後にした。

「ヒロト君」

 1階に行こうとエレベーターを待っていると、アリサがやってきた。

「演劇、好きだったなんて、知らなかった」

 いつも髪もメイクもばっちりで、お洒落な服を着ているイメージのアリサも、今日は黒いTシャツにデニムという格好で、メイクもいつもと違う感じだ。

 だけどやっぱり可愛い。

「最近ちょっと演劇に興味がでてきてさ。で、なんとなくふらっと観に来ただけ」

「そうなんだね、ちょっとびっくりした、ストーカーかと思った」

 ん? 冗談なのかな? 笑って良いところか?

 俺はあいまいにほほ笑んだ。

「演劇、やってたんだね」

「うん、これ、あげる」といってチケットをくれた。

「それで次回から10%引きになるから、良かったらまた来てね」

「うん有難う、ダンス、かっこよかったよ」

「うん、ありかとう」

 俺がニコリと笑うと、アリサも笑った。 

 なんかいい感じだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ