異世界突入!
もしかしたら、なんて言ってはいるが今からなんて到底無理な話だ。現実世界を離れるんだ。それ相応な準備はしとかなくちゃな。そんなことを考えながらまだ片付けは続く。こうして見ると、春とは色んなことがあったよなぁ...
例えば、出会った時。完全に俺の一目惚れだったなぁ。
例えば、喧嘩した時。春って、ああ見えて結構意地っ張りだったなぁ。
例えば、祭りに行った時。浴衣姿にみとれて花火なんて覚えてないや。
そうこうしているうちに夜になった。最近はコンビニ弁当しか食べてない。そろそろ料理すっかーなんて考えていたら眠りについた。
『...ぅさん、うさん、ゆうさん!』なんだ?夢?現実?『ゆうさん!!』まだ呼ばれている。目を開けてみると、そこには、春がいた。いや、正確に言うと春ではない。春に似た誰かだ。「君は...誰だ?」と問う。『わたくし、春姉さんの双子の妹、千秋と申します。姉さんが死んだという報せを受け、ここに飛んできた次第でございます。』なんて言われたが、さっぱり頭に入らない。むしろ聞きたい方が多い。そもそも春に妹?しかも双子?それよりどうやってここに入ってきた?聞きたいのをぐっとこらえ、1つ質問した。「...何をしに来た?」『やだなぁもう。分かってるんじゃないですか?姉さんを生き返らせるんですよ』
***
翌日、千秋に色んなことを教わった。春が本当に魔女の末裔だということ、千秋自身も少しは〔力〕を持っているということ。そして何より、異世界へ行くことは正解だったということ。『私も姉さんも異世界から来たんですよ。』なんて言われた時は腰を抜かしたものだ。春のことはまだ知らないことばっかだなんて考えていたら千秋が突然の一言。
『それじゃ、行きますか!』
「え?」
『何言ってるんですか。姉さんを救いに行くんでしょ?ほらほらー!』
「やめ、ちょ、腕引っ張んない...うわぁぁぁぁぁぁぁ...」
***
そんなこんなで、今は異世界にいる訳で。
当たり前だが、右も左も分からない訳で。「んで千秋さーん。これからどうすりゃいいっすかね?」
『そうですねえ。とりあえず、市街地に出てみますか。』
と、言うわけで。フロウス国はラーウィズ市に来ている。とても人が多く、例えるなら東京の原宿と言った感じだろうか。
『いやー。さすがに人が多いですねー。』と言いつつも慣れた手つきで人波をかき分けていく。
『あのカフェでひと休憩していきましょうか。』カフェ。異世界でカフェ。なんか斬新だ。「でも俺お金持ってないですよ?」『ふっふっふー。そこは私が出しますからご心配なく。こう見えて私結構持ってるんですよ?』
「頼もしい限りでございます。」と会話しているうちにカフェに到着。
「これからどうすればいいんだ...」とパンケーキを頬張りながら一言。程よい甘さで中々美味い。『ほぉでふねぇ...』ごくん。『でしたら私と姉さんの故郷に行ってみますか?何か手がかりがあるんじゃないですか?』「そうだな。そうしてみるか。」『でも...』
「でも...?」
『こっから2日ぐらいかかります...』