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~夫のドタバタ異世界冒険譚~

 ―これは、愛する妻のため、異世界を駆けずりまわる男の話である。





「ふぅ。着いたーー...」

天を貫く塔。巨大な岩石が浮き、その上に栄えている空中都市。どれも現実世界じゃお目にかかれないものだ。

「これが異世界、ねえ...」

1人草原に寝転びながら感嘆をもらす。シンプルなTシャツとジーンズに身を包み、異世界でのんびりしている男、桐嶋優はただただ感動していた。

 なぜ優が異世界にいるのかと言うと、話は数ヶ月前に遡る―



***



 「ねえ、私、もうすぐ死ぬんだ。」とある日、朝食を食べながら。優の妻、桐島春はそう告げた。

もちろん、俺はそんなことは1ミリも知らなかったので、「...へ?」と、間の抜けた声をあげた。

「だから、もうすぐ死ぬの。呪いをかけられちゃったんだ。」と続ける春。俺は頭でも狂ったのかと勝手に思い込み、朝食を食べ、また布団に挟まれた。

―目が覚めると、もう夕方だった。「起きたー?夕飯の買い出し行こうよ!」春は元気そうだ。死ぬ?呪い?春が?まさか。あんなの春のちょっとしたサプライズだろ。「分かった。んじゃ行きますかー!」「おー!よし行こー...っくしゅん!」「どした?くしゃみなんかして。」「んーん、大丈夫。ほら行こっ!」俺は手を引かれ、そのままマンションをあとにした。

 あれから2日、あるいは3日経っただろうか。春が入院した。春は「やっぱりね。分かってたんだ。ごめんね優くん。黙ってて。この体のこと。」俺は何も言わない。いや、何も言えなかった。春が死ぬ。はるがしぬ。ハルガシヌ。はるが―

 翌日、春に呼び出され病院へ向かった。春が待っている病室に入ると、そこは花で彩られていて。綺麗でいてどこか儚げで。みとれていると、春が「きれいでしょ!今日は私たちが結婚して始めての記念日だからね!インパクト大事でしょ!」とニコッと笑った。その笑顔はどんな花より綺麗で。知らない内に、目からは何かが零れていた。「ちょ、優くん!?どうしたの!?」「...何でもない。ありがとう。これからもずっと、ずっと一緒にいよう。」これが俺にできた精一杯のお返しだった。

 その夜、春は死んだ。呪いのせいで、容態が急変したらしい。でも、何となくそんな気はしていた。春のことだし、俺のことを気にかけて元気に振舞っていたんだろう。「ずっと一緒、っつったじゃねーか...」




***


 春が旅に出てから数日後、部屋を片付けていると、ある手紙を見つけた。

 『優くんへ この手紙を見てるって事は、多分私は優くんの隣にいないってことだと思う。隠してたけど、実は私って魔女の末裔らしいの。凄くない!?...とまあ、自慢は置いといて、この手紙に、私の力を託します。何でも願いが叶うようにしたんだ。あ、でも、そんなに力はあるってわけじゃないから、誰かを生き返らせるとかは無理なんだ。優くんならきっといいことに使うと思う。さようなら優くん。またいつか、会えたらいいね。』

 春が魔女?願いが叶う?...なんなんだよ。俺のためじゃなくて、自分のために使えよ…とか思いつつ片付けていると、本棚から本が落ちた。拾って見てみると、『異世界漂流記』と書いてある。異世界?...ああ、春がよく読んでいたな。―その時、1つのとんでもないものが頭をよぎった。そうだ。異世界へ行けたら。春の事が、あわよくば、もしかしたら、もしかしたら!!

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