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異世界転移者は自由に道を突き進む  作者: 鶏天
異世界に召喚されて
9/22

冒険者ギルド 届け物編

入店した服屋での買い物を済ませ、クレアから貰った地図を片手に街中を歩く。

服屋『コメット』では様々な物が揃っていた。

一般的な衣服から冒険者用に動きやすさに特化した衣服、王族用のドレスまであった。

それぞれ少し多目に服を買い、店主の勧めで『道具袋(アイテムシーフ)』という魔道具も一緒に購入した。

見た目は肩掛けのポーチだがその面積以上の物が余裕で入る物で数十着あった服が吸い込まれるように収納されていく。

なのに袋の重さはには変化が無い。

『空間魔法』と『収縮魔法』の応用だそうで、店主曰く、この袋なら普通の家の家具を収納しても大丈夫なのだそうだ。

また、購入時に魔力登録した者にしか開けられず、他の人が開いても元の袋の中しか見れないし触れない、セキュリティまで備わった代物だ。


ついでに貨幣の価値も店主に尋ねる。

怪訝そうな顔を向けられはしたが店主は優しく教えてくれた。

この国には7種類の貨幣があるらしい。

以下、貨幣の種類と大体の価値(予想)である。

・小銅貨:1円

・中銅貨:10円

・大銅貨:100円

・銀貨:1000円

・大銀貨:10000円

・金貨:100000円

・大金貨:1000000円

そして、俺達が持っていたのは"金貨"が9枚と"大金貨"が8枚入っていた、そしてこれまでで気絶させた門番に金貨を1枚、モカの購入の際にトロイに渡したのはどうやら大金貨2枚だったらしい。つまりクレアが渡した金額は推定1100万円程になる。


「流石に、そんな大金だとは思いませんでしたね」

「というか、普通に引くわ!」


ただの高校生になんて金額を持たせるんだあの女は!?

そりゃあ強盗に付け回されるのも納得だ。

しかしこの世界に来てお金の心配が無くなったのは素直に嬉しい事だ。


その後合計で金貨2枚程の買い物をし、店を出る。

あれだけの買い物をしたのにも関わらず、荷物は『道具袋』1つだけ。

・・・それに全く重く無い。


「便利ですね。」

「・・・魔法ってスゲーな。」


――――――――――――――――――――――――


「ここが『冒険者ギルド』」


街中を歩く事20分、目の前には木造建築の大きな建物の前にやってきた。

他の家が石造りの建物ばかりなのでかなり浮いているがそれでも周囲の建物より遥かに大きく広い。

そして、、、


「おい、兄ちゃん邪魔だよ!」

「あ、すいません!」


後ろから身体の大きな男性が何やら大きな荷物を持ってギルドへと入っていく。

まだギルドに入っていないのにかなり人通りが多い。

先程の男性(多分冒険者)と同じように荷物を持ってギルドへと入っていく者、ギルド周囲で商売をする者、普通の一般人っぽい者の姿まで、様々な人の姿が見られる。


「すごい賑わいですね!」


熱気に当てられたのかモカは大声で楽しそうにしている。

コメットで着替えた彼女はこの世界では一般的な町娘風の服に着替えていた。

獣人特有の耳や尻尾は帽子やスカートで隠している。

コメットの店主曰く、この街では余計なトラブルを回避したければ獣人である事は隠さなければならないらしい。


「でも、()()には普通に獣人、というか亜人の人たちもいるみたいですよ?」


ゆとりさんはギルドの二階部分にあるオープンテラスみたいなペースでお酒を飲む人たちを指差して言う。

彼女の方も着替えており、何やら着物に近いふくを着ていた。

着物に近いが袖は肘から先は無く、下はホットパンツの様になっている。

かなり似合っているが正直目のやり場に困ってしまう。


「獣人にドワーフ、あの後ろで歌ってる女の子はエルフじゃないか?」

「綺麗な歌声ですねー。」

「ええ、・・・周りは騒いでますが。」


見るとエルフの女の子が歌ってるのにも関わらず、周囲は気にする容姿も無く酒を飲み笑っている。(一部喧嘩もしている。)


「でも、周りが気にして無いっていうより、」

「彼女が周りを気にして無い様ですね。」

「すごい集中力です。」


そんな風にエルフの姿を見ていると、後ろの屋台から声が掛かった。


「おや、あんた達、ここは初めてかい?」

「ええ、先程この街に着いたところなのですが、今日はお祭りですか?」


いきなりの会話にも当たり障りのない物を選ぶ。

彼女は屋台で串焼きを売っていた。

甘辛いタレの焦げた匂いが堪らなく空腹の腹を刺激する


「いや、ギルド前はいつもこんな感じだよ。」

「そうなのか?ここに来る前の区画はここまで賑わって無かったと思うが。」

「そりゃあそうさ!なんせここはギルドの真ん前だ、他の区画より安全だし何かあれば冒険者が助けてくれるからね!」


なるほどそれは確かにそうである。

先程も強盗に襲われ(?)たし。


「ちょっとギルドに入りたいんだけど、勝手に入って問題ないのか?」

「おや、依頼を出したいのかい?」

「いや、届け物と登録をしようかと」

「登録?あんた達、冒険者になりたいのかい?」

「うーん、まぁ仕事が無いからね。」

「仕事が無いってあんた達今までどうしてたんだい。」

「流されて、適当に歩いて、」

「もういいよ。苦労したんだね!」


え、まだほとんど話して無いけど!?


「冒険者は危険が多い仕事だけどあんた達なら大丈夫さ。」

「はあ、」


何やら語ってるがこのおばちゃんについていけて無い。


「あんた達のこれからを祈って・・・ほら、一本づつあげるよ!」

「え、でも」

「遠慮なく食べな、腹減ってるんだろ?・・・それに」


そしてタイミングよく後ろから音がする。

後ろを振り向くとモカがお腹を鳴らし、ヨダレで足下に水溜まりを作っていた。


「嬢ちゃん、限界みたいだしね。」

「・・・いただきます」

「ありがとうございます!!!」

「・・・どうも」


1人一本づつ手に取り肉を食べる。

一噛み毎に肉汁とタレが口の中で混ざり最高の味わいを産む。

肉は牛肉に近いが違う感じだ恐らく異世界ならではの肉だろう。

そして何よりタレ!

ピリ辛の甘ダレが肉汁と絶妙に絡み合い、最高の一本に仕上がっている。


「旨!?」


そして、人間は本当に美味しい時その言葉しか出ない。

それはゆとりさんも同じようで、


「これは確かに美味しいです。」

「はぐ、はぐ」

「はは、嬉しいことを言ってくれるじゃないか!」

「はぐ、はぐ、はぐ」

「そっちの嬢ちゃんも美味しいかい?」

「・・・・・・・」


既に串焼きを平らげたモカは上を向いて目を閉じている。


「嬢ちゃん?」

「モカ?」

「・・・・?」


心配そうに顔を覗くと彼女の目からは涙が出ていた。


「・・・『美味しい』じゃありません。」


ポツリ、と呟く。


「口に合わなかったのかい?」


おばちゃんは少し残念そうに尋ねる。

しかし、その言葉を聞いたモカは眼をカッ!と開いた瞬間、


「いいえ!!!」


ギュン!!と効果音でもつきそうな速度でおばちゃんに近づいたモカは彼女の手を握っていた。


「この味は『素晴らしい』です!」

「え!?」

「この『バイソンブル』の肉、キチンと血抜きがされていて全く臭みがありません!」

「ま、まあね」

「それにタレ!」


ビシッ!と再び効果音が鳴るようにタレの入ったツボを指差す。


「数種類、いえ、数十種類の果物や野菜、スパイスを複雑に使用した絶妙なタレは神業としか思えません!!!」

「あんた、分かるのかい?」

「勿論です!」


モカは自慢気に胸を張る。

この肉バイソンブルっていうのか。


「報われるよ。私はね25年、屋台でこの肉やタレを出してきたのさ、料理人だった親にも反対されて、たった1人で店を出したが失敗ばかりでね、ここまで生きてきて今のあんたの一言がどんな一言よりうれしかったよ!」

「わかりますよ、私も昨日までろくにご飯を食べてなかったんです。でも、久しぶりに食べたのがこんな素晴らしい一品で今は最高に幸せです!」


おばちゃんは「あんた達、やっぱり」といった感じの視線を向けて涙目になる。


「嬢ちゃん、名前はなんていうんだい?」

「モカです。モカ・ラーヴァンティア」

「私はカリナ、カリナ・ラソールだ!モカ、これからあんたは私の親友だ文句は言わせないよ!」

「はい、カリナ!」


そして2人はその場で抱き合ってしまう。

今ここに種族も年齢も超えた友情が産まれた。


それから2人は数十分熱弁を繰り広げるが、それは一言にする。


「以下略!」

「雑!?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「冒険者ギルドへようこそ、本日はご依頼ですか?」


ギルド内に入り、受付へと足を向ける。

しかし、かなりの混雑で受付前には行列が出来ていた。

待つこと30分後

ようやく、順番が回ってきた。


「いえ、依頼ではなくてお届け物なんですけど。」

「お届け物?」

「はい、クレア・シルフィードさんからなんですが」

「クレアさんのですか!?」


勢いよく立ち上がった受付のお姉さんはそのまま手紙を受け取ると書かれているクレアのサインを凝視する。

すると彼女は「少々お待ちください」と言い残し、階段を駆け上がっていく。


「どうしたんでしょう?」

「実はクレアって有名人なのか?」

「・・・?」


よくわかってないモカは首を傾げる。

すると隣にいた別の受付のお姉さんが


「クレア・シルフィードさんはギルドでは有名ですよ。数少ないA級冒険者で実力もあり、しかも女性であの美しさ、女性的にも冒険者的にも人気のある方です。」

「そうだったんですか。」

「確かに城で会ったあの人は私から見ても綺麗な方でした。」

「確かに」


『天眼』で見た際にA級冒険者である事は分かっていたがそんなに有名だとは思わなかった。


「お待たせしました。」


そんな話をしていると受付のお姉さんが帰ってきた。

その手には手紙は無い。


「あの、手紙は?」

「すいません、勝手ですがギルド長に渡してしまいました。それと御三方にはギルド長に部屋に通す様言われています。」

「・・・わかりました。」


肩書きからしてこのギルドのトップだろう。

断る理由も無いし、お呼ばれする事にする。


受付の横にある受付への入り口から中に入り奥にある階段を上がって行く。

4階に到着、そこで受付のお姉さんが足を止める。


「ここがギルド長の部屋になります。」

「・・・ここですか?」

「はい。・・・どうかしましたか?」

「いえ、なんでも」


この階には部屋は1つしかないらしく、扉は目の前にある1つだけだ。

他の扉に比べて少しだけ豪華である。

『ギルド長』と書かれたプレートも掛かってるので間違い無くギルド長の部屋なのだろうが、


()()()()()()()()。」

「漏れてる?」

「いえ、こちらの話です。」


ゆとりさんが警戒している様子を見て不思議そうな視線を向けるも、仕事があるのかお姉さんは急いで下へと降りていく。


「とりあえず、入るか」

「そうしましょう」

「え、入るんですが!?」


モカは驚いた様子だが、呼ばれているのだから入らないと失礼だろう。

俺とゆとりさんはお互いに頷くと扉へと近づいてノックをする。


「入れ。」


すると中からは女性の声が聞こえて来た。

ギルド長はどうやら女性らしい。


「「「・・・失礼します」」」


そして俺たちは警戒しながら扉を開ける。

すると中には


「ようこそ転移者達、私がギルド長『ハルトワード・ロイマン』だ」


金の長髪、右眼には眼帯をしている女性が腕を組んで1人掛けのソファに座っていた。

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