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異世界転移者は自由に道を突き進む  作者: 鶏天
異世界に召喚されて
6/22

始めての街、初めての亜人

時間が空きましたが6話目です

城からの脱出に成功した俺たちは。そのまま整備された道を歩いて進んだ。

少し離れたところで城の方を振り向いてみる。


「・・・でっかいな。」

「そうですね。」


目の前にはディ◯ニーの世界に出てきそうなくらい大きく、綺麗な西洋風の城が見える。

まるで映画でも見ているかの様。

しかもかなり広い土地のようで、城壁から300mは離れたのに端から端を見るために首を振らなければならない程だ。

綺麗で広く豪華な城。

その為か、


「目立つな、あの部屋」

「まさか、壁を吹き飛ばすとは・・・予想外でした。」


()()()()()()()()()()()吹飛ばされた一室からはモクモクと煙が上がっていた。


「街まではどのくらいなんですか?」

「クレアの話ではそんなに離れてはないらしい」


その一室から目をそらし、次の目的地の話へと移る。

決して()()()()()()()()()()ことから目を離したわけでは無い。

・・・無いったら無いのだ。


「歩いても15分掛らない筈だけど、少し急いだ方がいいかな?」

「そうですね。2人とも学生服ですから目立ちます。この世界の服装がどんなものかは分かりませんが、城にいた中世時代の鎧といい、監視員の男のロッカーに入っていた着替えを見る限りは『上質な布』である可能性が高いです。」

「そんなにか?」

「ええ、なので城から街へ又は街から城に向かう人に出会った場合、強く印象に残る可能性があります。」

「なるほど」

確かに剣を拝借した際に見た監視員の服はあまり質の良いものでは無かった様な気がする。

「町についてもあまり目立った行動はせずに穏便に装備や道具を準備します。」

「お、おう。」

「まずは注目を集める前に服屋に行きましょう。」

「目立つ前に着替えちまおう。って事か」

「ええ、その後にクレアさんの指定先に行っても問題無いかと。」


ゆとりさん、冷静過ぎやしませんか?


「どうかしましたか?」

「いや、すごい冷静だったから。」

「・・・冷静?」

「だって町に入ってからの順序とかまるではじめから予想してたみたいだしな。ちょっと、いやかなり驚いてる。」

「悠哉さん、漫画やゲームをしたことはありますか?」

「あるけど、それがどうしたんだ?」


現代日本で『漫画を読んだことが無い』『ゲームをしたことが無い』自分と同世代の人間は限りなくゼロだろう。


「ジャパニーズオタク文化は決して侮ってはなりません。」

「そうですか・・・」


彼女の知識の源は現代日本文化らしい。

・・・仮にも忍者がそれでいいのか?






〜5分後〜


「見えてきましたね。」

「ああ」


ゆとりさんのアドバイス通りに少し早足で移動した俺たちは人と会うことも無く街にたどり着いた。

通りには様々な商店が並んでおり、軒先きで呼び込みをしている人や買い物客で賑わっていた。


「すごい賑わいだな。」

「王城があるいわゆる王都なんですからこれぐらいは普通なのではないですか?」

「そういうものか・・・ところで」


町の周りには柵が設置されていた。

恐らくは動物などの侵入を防ぐためだろう。

街並みは中世のヨーロッパ辺りの街並みだ。

家は石造りのものが多い。

如何にも"ファンタジー"である。

・・・しかし


「悠哉さん、悠哉さん」


と、ゆとりさんが俺の服の袖を引っ張りながら声をかける。


「皆さん"人間"ですね。」

「そうだな。」

「せっかく異世界に来たのにはじめの町で亜人に逢えないなんて、"寿司屋に行ったのに醤油が無い"感じです。」

「あー、言いたい事は分かる。」

「人間なんて見ても何にも面白くありません」

「もう少しオブラートに包めよ。」


そう、街にいるのは人間なのだ。

ファンタジーと言えば 、魔法の次にエルフやドワーフ等といったいわゆる亜人との出会いも醍醐味の1つだとは思う。

まだ(おそらく)商業区だけだが、見る限りには自分達と同じ様な人間しか見当たらない。


「がっかりです!」

「声を抑えろよ!?」


何人かはそんな俺たちの声に振り向いてしまう。

目立たないようにしないといけないのにいきなりこのザマである。


「いきなり目立ってしまいましたね。」

「全く悪びれ無いな!?」

「それでは服屋に行きましょう。」

「・・・場所はわかるのか?」

「わかるわけないじゃ無いですか。でも適当に歩いていればその内見つかると思います。」

「『目立たない』って目的を憶えてます?」

「ま、いいじゃないですか。」


見れば街の人々が着ている服は映画なんかで良く見る中世の人たちの服装で自分達が浮いた存在である事がよく分かる。


「そういえば腹が減ったな」

「それには同意しますがご飯は服を着替えた後にしてください。」


ゆとりさんは街中を歩き出しながら答える。

その後を追い掛けながらも街の様子をキョロキョロと見て回る。

自分達の服装が珍しいのかチラチラと振り返る人もいるが活気のある声でお客を呼ぶ店主さんの声がが耳に入る。


「いらっしゃい奥さん!」

「今日も元気ねおやじさん。」

「綺麗な奥さんの為なら俺は幾らでも元気でさぁ!」

「そうなの?なら()()()お願いできるのかしら?」

「お、奥さん、今は人目もありますし・・・」


速攻で聴かなかった事にしました!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


しばらく歩いて服屋を探していた俺たちだったが、不意にゆとりが足を止めて一軒の店に目を向けていた。


「悠哉さん、いました。」

「服屋があったのか?」

「私は『いました』と言ったんです。・・・亜人ですよ。」

「まじで!?」


この世界に来て始めての亜人にちょっと変なテンションになってしまう。

ゆとりが指をさしたのは如何にも高級なレストランみたいな感じの店で外にいるのに店内からとても良い香りがしてきた。

そんな店の前に一人の小柄な子がボロい布切れに身を包み、年齢は遠目でわからないが頭部から犬の耳の様なものがピョコンと覗いており、お尻の方からは尻尾が見えていた(髪と尻尾は栗色だ)。躰つきから女の子であると見える(胸は小ぶりの様だが)。しかし彼女は首には首輪が付けられ鎖で繋がれた状態で店の前にいたのだ。

楽しみだった亜人との出会いなのに、一気に不愉快な気分になる。


「これは・・・」

「多分、()()というものでしょう。・・・周りの反応から見ても珍しいものでは無いのかもしれませんが。」


周りの人を見ても、亜人の女の子を見ても何も見なかった様に素通りする人が多い。

何人かは苦虫を噛み潰したような顔をするが目を背ける様に足早にその場を去っていく者もいた。

関わり合いになりたく無いのだろうか?


「とにかく、始めての亜人との出会いだし、話くらいはしてみたいな。」

「ええ、私もです。」


そう二人で頷いて獣人の女の子の元へと近づく、正直なところ始めての亜人との会話だけにちょっとテンションが上がる。


「・・・・・」


獣人の女の子はスーパーなどで主人を待つ犬の様に両手を地面につけた状態で座っていた。

その表情は暗く、つまらなそうに地面を見ていた。

獣人特有の耳や尻尾も下を向いていたが、それでも近くに来た俺たちに視線を向けてきた。


「こんにちは?」

「第一声がそれでいいんですか?」

「いや、だって・・・なんて声かければ良かったんだ!?」

「知りません。至らないあなたの思考をなぜ私が補わなければならないのですか?」

「辛辣!」


異世界に来て初めての亜人の女の子との会話。

しかし彼女はこちらに視線を向け、ジッと見つめてはいるが口を開く様子が無い。


「・・・・・」

「・・・えーっと?」

「・・・喋りませんね。」

「言葉が通じてないのか?」


亜人と人間で言葉の壁があるのか?

そもそも『翻訳』スキルは人間間のみのスキルなのだろうか?

と考えていると。


「・・・・・(フルフル)」


彼女は首を横に振って否定の合図を出してきた。


「言葉は通じている様ですね。」

「・・・(ブンブン)」

「縦に振ってるって事は『yes』って事か?」

「?」

「『肯定します』ってことですか?」

「・・・(ブンブン)」


どうやらスキル翻訳するのは幅がある様だ。

これからは注意しよう。

ともかくこれは意思疎通であって会話ではない。


「言葉は通じるのに喋らないって、そういう病気なのか?」

「・・・(フルフル)」

「病気等では無い様ですね。・・・悠哉さんここは()()の出番ですよ」

「?あれって」

「・・・『天眼』の事ですよ。」


ゆとりさんの冷たい視線が突き刺さる。


「すいません。」

「便利なスキルなんですから忘れない方がいいですよ。」

「はい。」

「?」


自分達のやり取りについていけない為首を傾げている彼女に視線を向け『天眼』を発動させる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜モカ・ラーヴァンティア〜

種族:獣人(狼)

Level:8

腕力:25

耐久力:50

素早さ:120

魔力:150

職業:狩人 奴隷

スキル・特殊技巧

・索敵 lv6 ・身体強化 lv5 ・獣化 ・火炎魔法 lv2


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「彼女は『モカ』って名前らしい、種族はやっぱり獣人で多分狼がモデルなのかな?」

「狼ですか。」

「・・・・」


『モカ』は驚いた様にその眼を見開いていた。

それでも声を出さない彼女だったが、彼女の首輪に天眼が反応した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〜奴隷の首輪〜

・奴隷用の首輪で特定の行動を制限する効果がある。

・『声帯不可』『身体能力制限』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「この首輪のせいで行動が制限されてるみたいだ」

「その制限で声が抑えられてるって事ですか。」

「『声帯不可』ってあるからそういう事だろうな。」

「・・・よく見たら変な紋様が浮かんでますね。」


首輪には紫色に紋様が浮かんでいた。

意味は分からない。


「こんな紋様にそんな効果があるのか、それとも首輪自体にそういった呪いがかかってるのか。」


興味本位で首輪に手を触れてみる事にする。

近づいて首輪に触ろうとするとモカが少し離れる様に身を引いた。

その首はブンブンと横に振っていた。


「危ないのでは?」

「危ない?」

「曲がりなりにも呪いの首輪ですよ。触れた瞬間に何か起こる可能性もあると思います。」

「・・・(ブンブン(縦))」


確かにこういった首輪は外そうとしたり、無闇に触った瞬間に電気が流れたり爆発したりするのがお約束だが・・・


「恐いもの見たさってやつさ、それにそれで何かあったら今後注意すれば良いじゃないか。」

「『好奇心、猫を殺す』って知ってます?」

「・・・怖いこと言うなよ」


ゆとりに言われ一瞬躊躇するが手を伸ばす。

モカは諦めた様に抵抗しなかったので首輪に触れる。

すると、『ガチャン!』という音が響く。

首輪の外れた状態のモカと彼女の足元に開かれた状態で落ちている首輪が目に入った。


「「「・・・・・は?」」」


そしてその場にいた3人はあまりの出来事に変な声を上げるのだ。

これが 長道悠哉 と伊賀 ゆとり が行った『始めての亜人との会話』だった。

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