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異世界転移者は自由に道を突き進む  作者: 鶏天
異世界に召喚されて
5/22

城からの脱出

「貴方達、もうここにはいない方がいいかもしれないわ」


「そうなのか?」


「流石に長い時間貴方達とお話ししてたら怪しまれるもの。」


「30分くらいはいましたからね。」


「そんなにたつのか。」


 咄嗟にポケットにしまったスマホを取り出し時間を確認する。入った時にもこっそり確認したが30分くらいは経過していた。


「それは?」


 クレアは俺の持つスマホに興味を持ったようだ。


「これか?、これはスマートホンって言うんだ。遠く離れた人と話をしたり、メール、手紙を送ったりできる便利な道具だ。」


「それは、便利ね。この世界でも使えるの?」


「いや、無理だ。できて時間を見るなり写真、、、目の前の風景や人物を写したりだな。」


「そうなの?でもその2つでも十分だと思うわよ?」


 クレアの言う通りこれだけでも十分な機能だ。しかし今時の高校生がその2つだけで満足出来るはずもない。


「この文字は読めないのだけど、これが時計なのかしら?」


「そうだけど、読めないのか?」


 俺の手からスマホを取り上げて、アラビア数字が表示されている時計画面を見ているクレアだが、時計の数字は読めないらしい。


「さっぱりよ。ちなみに今は13時43分、あと20秒で44分になるわ。」


「ちょっと待ってくれ。・・・・・・・・よし。」


 クレアのお陰で時間を知ることができたので慌てて時間を合わせる。1時間と28分この世界は早いようだ。


「か、伊賀さんも時間合わせたら?」


「もう合わせましたよ。目の前に時計があるじゃないですか。」


「・・・本当だ」


 壁には大きめの時計が掛けられており、13時44分を針は指していた。


「あれ?」


 もう一度よく時計を見る。時計には大きさの違う3本の針が時間を示している。これは元いた世界と変わらない。しかし、


「・・・クレア」


「何よ?」


「クレアはさっきスマートホンの数字が読めないって言ったよな?」


「ええ、読めないわよ。」


「でも、俺の方はあの時計の数字が読めるんだけど。」


 時計に刻まれた文字には見覚えが無かった。

 確かに見覚えが無い筈の文字を俺は読めるのだ。


「・・・・・ユウヤ、貴方もしかして」


「?」


「自分のステータス見てないの?」


「・・・見てないな」


 呆れた目を向けられる。


「長道さん」


 隣から伊賀さんが声を掛ける。


「貴方はアホですか?」


「あほ!?」


「アホですよ。『天眼』のスキルがあるのに貴方自身の戦力分析をしないなんて。」


「・・・はい。私が愚か者のアホでした」


 言われてみればその通り、まさしく『グゥ』の音も出ない。

 ここは素直に頭を下げる。


「わかればいいんです。」


そう言って紅茶を口に運ぶ伊賀さん。


この世界で初めて自分のステータスを見ることにしたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 〜長道 悠哉〜

 種族:ヒューマン 転移者

 Level:5

 腕力:70

 耐久力:90

 素早さ:60

 魔力:980

 職業: 転移者

 スキル・特殊技巧

・自由 ・身体強化LV1 ・言語理解 ・剣術LV7 ・武術LV6・天眼



 〜伊賀 ゆとり〜

 種族:ヒューマン 転移者

 Level:5

 腕力:45

 耐久力:60

 素早さ:90

 魔力:660

 職業:忍者 高校生

 スキル・特殊技巧

 ・隠形LV6 ・投擲LV5 ・身体強化LV1 ・言語理解 ・忍術LV8 ・暗器術LV6 ・薬物耐性LV5


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


これが俺と伊賀さんのステータスになる。


「なるほど、この『言語理解』ってスキルのおかげで時が読めるのか」


「そうよ。」


「私にもあるって事は転移者全員にある可能性がありますね。」


応募者全員サービス的なものなんだろうか。

気が利いている。


「さて、そろそろ貴方達を逃がさないといけないわね」


「あ、そうだった。」


「脱線しすぎたわね。詳しい内容は知らないけど、ここの王様は貴方達を使って何か大きな事をするつもりらしいの。」

「・・・大きな事?」


「ええ。あの王様、何しでかすかもわからないし巻き込まれる前に姿を消した方がいいと思うの。」


「初対面の人に『奴隷になれ』ですからね。ろくな事にはならないことは予想できます。」


「じゃあ決まりね。えっと、この部屋を出てまっすぐ行けば階段があるの。それを・・・・・」


クレアは脱出までのルートを懇切丁寧に教えてくれた。城だけあって複雑で入り組んだ道だが何とかなりそうだ。

問題は警備の兵だが、この時間は丁度交代時間で1度打ち合わせの為少し警備が手薄になるらしい。


退室する直前に俺と伊賀さんはクレアからしばらくの生活費として金貨を20枚渡された。

それと城から出た後にここに行け、とギルドまでの地図と手紙を一通預かった。

受付に渡せばいいのだそうだ。


出口まで進むのに時間はあまり掛からなかった。

クレアの言った通り警備兵は少なく、忍者の伊賀さんの指示通り動けば警備兵の脇をすり抜けるのは簡単だった。


そして、部屋を出て15分後に門の前に到着。

門の前には5人の兵がいた。

その後はクレアの指示で階段横の用具部屋に2人で身を隠す。

クレアからは俺たちが部屋から出て20分後に合図を送るからそうしたらなんとか門を開けて脱出しなさい。との事だ。

なので用具入れに入ってそろそろ5分が過ぎようとしていたのだが


「・・・・・」


「・・・・・」


気まずい。


非常に気まずい!


同級生の女の子と小さな部屋で2人っきりってどんなシチュエーションだよ!?

部屋狭いからほぼ密着状態だし!

背は小さいけど伊賀さん可愛いもの、用具入れなのになんだかいい匂いがするもの、年頃の男子にはこの状況、刺激が強いんだよ!


「長道さん。」


「はい!?」


「・・・声を落とすか、喉を潰すか、死んでください。」


「悪かったけど『死んでくれ』は酷くない!?」


声を落としてツッコミを入れる。


「後1分で予定時間ですけどクレアさんはどんな合図を送るか言ってましたか?」


「聞いたけど『わかりやすい合図を送る』としか聞いてないな。」


「使えない人ですね。」


「君、所々口が悪いよ。」


そして、クレアの言っていた城全体に響くほど()()()()()()合図が鳴り響いた。


――――――――――――――――――――――――



 固く閉ざされていた石造りの城門はゆっくりと開いていく。


「よく開け方がわかったな。」


 そう言って一緒に付いてきた『伊賀 ゆとり』の方に顔を向ける。


「あの部屋の中に分かりやすいレバーがあったので適当に倒しただけです。その気になれば猿にだって同じことが出来ます。」


「それはラッキーだ、というか内側から開けるのにそんな大層な仕掛けがある訳ないか。」


「ええ、それよりも早くこの城から出ましょう。全員離れたのは偶然ですが、何人かは戻るでしょうから。」


「そうだな。取り敢えず外壁まではダッシュだ!」


 人2人なら楽々通れるぐらいに開いた門を通り抜けていく。

しかし、もう少しで出口というところで2人とも茂みに隠れるのであった。

その理由は・・・


「見張ですね」

「見張だな。」


そう、外壁にある出入口には見張番が1人爆破して崩れいく城の一部を口を開けて呆然と眺めていた。


「見張の1人くらいいてもおかしくはないけど失念してたな。」


「ええ、でも1人くらいなら」


そう言いつつ伊賀さんが懐から取り出したのは忍者の有名な投擲武器『手裏剣』と『苦無』だった。


「・・・それでナニをなさるおつもりで?」

「『ナニ』ですよ?」


彼女は『何を当たり前の事を』とでも言いた気に首を傾げ、そのまま武器を見張に向かって投げようとする。


「ちょっと待とうか!?」

「ムッ?」


慌てて彼女の手を抑え、ひそひそ声で話し始める


「殺しちゃ駄目だろ!?」

「楽ですよ?」

「楽でも!」


伊賀ゆとりさんは想像していたよりも危ない存在なのかもしれない。


「ハァ、しょうがないですね。」


ため息を吐きながら彼女はゆっくりと姿()()()()()


「え!?」


目の前にいた彼女はなんの前触れも無く姿を消したと思ったら一拍後には見張りの人はパタリと倒れてしまった。


「今度は何だ!?」

「お待たせしました。」

「わっ!?」


突然消えたはずの彼女は現れるのも突然だった。


「『わっ!?』ってきょうび聞」

「言わせねぇよ!?」

「ちっ」


突然現れたと思ったら危ない発言を仕掛ける。

ゆとりさん、油断なりません。


「っていうか、どうやって消えたの!?」


「消えてなどいません。」


「嘘だ!」


「あなたの視線から外れただけです。」


「・・・見張の人は、どうしたの?」


「眠ってもらいました。」


「どうやって?」


「この即効性の睡眠薬を針で刺して注入しました。」


「怖っ!?」


「変声機はありませんけどね」


「ちょっと黙ろうか!?」


「突っ込むのはいいですけど、早く出ましょう。あの薬は即効性はありますけど持続時間は短いので。」


「あ、ああ。そうだな、早く出よう。」


そう言うと2人揃って走り出す。


「ん?」


「どうかしましたか?」


「いや、本がいっぱいだな。と思って。」


外壁の門を通り過ぎる際、遊園地の入り口にある様な管理室があった。人1人が入れるスペースしか無く帳簿の様なものと恐らく見張の彼の持ち物なのだろう本が十数冊積み上げられていた。


「何冊か貰っていこう。」


「本をですか?」


「この世界の情報がわかるかもしれないしな。都合良く文字も読めるみたいだし。」


「そうですね。ではそこの鞄もついでに貰っていきましょう。」


そして鞄の中に数冊本を詰め、ついでに室内にあった剣も一本拝借する事にした。

何も知らない世界だ、用心に越したことはないだろう。

ゆとりさんはそのまま立ち去ろうとしたが罪悪感を感じた俺はクレアから貰った金貨を1枚だけ置いて行く。

そう、あくまでもこの鞄や本、そして剣は彼、『ニック・ディエル』から買い取ったものだ。

盗んだものでは決して無い!

金貨1枚がどれほどの価値か分からないけど!

ゆとりさんは金貨を置いた俺を見た後ゆっくりニックの方に視線を向け、


「殺されなかっただけありがたいと思って欲しいですね。」


「俺の同級生が物騒過ぎる件について!!?」



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