エレディア城内爆破事件
3話目です。
最近ギックリ腰になり、しばらく仕事に行かないのでペースを早めて投稿したいですね。
俺の名前は『ニック・ディエル』このエレディア王城の門番をしている。
俺の仕事は単純で城の外から来た来訪者の身分確認や場内への荷物の受け渡しなどだ。
これ以外は門の前で空を見上げボーっとしたり、街で買った本を読んでいる。
一言で言えば退屈だが8年くらい前からこの仕事をほぼ毎日続けている。
退屈な仕事でも責任があり給料が他の仕事に比べたら格段に良いのである。
この日も朝に配達員から荷物が届いた以外はいつも通りに読書で時間を潰していた。
「今日も平和だ・・・」
読んでいた本を閉じ、軽く背を伸ばそうと両腕を上げた時、後ろから大きな爆音が鳴り響き、驚いた俺は両腕を上げたまま、ゆっくりと後ろを向く。
・・・そこにはガラガラと城の一部が崩れて、崩れた箇所からは煙が上がっていた。
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「何事ですか!?」
部屋の前に待機していた俺たち兵士は爆音のした部屋へと雪崩れ込んでいた。
その部屋は30分くらい前にギルドのA級冒険者である召喚術師が転生者一名とともに入った部屋だった。
その部屋の中心で彼女は何事も無かったかのようにティーカップに口を付けていた。
・・・その向こう側の壁は綺麗に吹き飛ばされていた。
「あら、どうしたのかしら?」
「いや、『どうした』では無くてですね。」
そう口にしつつも彼女はカップを傾ける手を止めようとはしない。
そうこうしていると、兵を掻き分け一人の男が入室してきた。
「何事かな、召喚術師どの?」
その人はこの国の王『ルーファス・ディル・エレディア』様だった。
「なんでも無いわよ?ただ、一緒に部屋に入った子がいきなり私を襲ってきたから吹き飛ばしてあげたの。盛ってたのかしら?」
「襲ってきた?」
彼女はなおも紅茶も飲みながらルーファス様と会話をしている。失礼な態度に私も含めこの場にいる兵達は眉間にしわを寄せる。がルーファス様は特別気にした様子は無い。
一国の王の御前だというのにこの態度、だから冒険者というのは気に入らない。
ルーファス様は崩れた壁には興味が無いらしく、召喚術師の言葉が引っかかっている様子だ。
「襲って来たということは、奴隷契約が効いていなかったのか?」
「それは無いわ。」
ルーファス様の疑問に召喚術師はキッパリと否定した。
「強制奴隷契約術はあの場にいた全員に発動させたわ。仮にも召喚術師の私が古代異物まだ使ったの、それこそレアなスキルでも無い限り無理よ。」
「では、そのスキルがあったということでは?」
「・・・これ、この部屋にいた彼のステータスよ。」
そう言うと召喚術師はテーブルの上に置いていた薄い長方形の小さなガラス板の様なものをルーファス様に手渡した。
そのガラス板をしばらく見たルーファス様は一言
「・・・なんだこのステータスは」
苦虫を噛み潰したような表情で召喚術師に視線を戻した。
「この国の一般人と同じかそれ以下、スキル欄は4個異世界人にしては異常なくらい低かったわ。」
「・・・ま、1人くらい問題ないだろう」
ルーファス様は興味を失ったかの様に部屋から出て行こうとする。
「なにせ、転移者はまだ50人近くいる。何人かは既にスキルが出現していてな、その中にはかなり強力な力を持った奴もいた。」
「興味ないわ」
召喚術師は空になったティーカップをテーブルに置く。
「用が無いなら出て行ってくれないかしら、これでも女の子の部屋なんだから」
「出ようとしたし、壁が吹き飛んだ状態の部屋にまだ止まるつもりか?・・・新しい部屋を用意するからそこに移動すると良い。」
ルーファス様は近くにいた衛兵2人に指示を出し自身は部屋から退出して行った。
それを見た残りの衛兵も部屋から退出していく。
自分も部屋から退出しようとした時、彼女がティーカップを置いたテーブルが目に入る。
そこには3人分の使用された痕跡のあるティーカップがあった。
「・・・・・?」
この部屋には召喚術師以外には転移者の1名しかいなかったはず、それなのになぜ3人分のカップがあるのか?
「どうかしたの?」
「・・・いえ、なんでもありません。失礼します。」
そう言って私も退出して自分の持ち場に戻った。
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「デカイ入り口だなぁ」
エレディア王城の入り口を観ていた悠哉の口からそんな言葉が自然に漏れる。
「捕まるわけにはいかないし、さっさと脱出しますかね。」
次回は悠哉の他にもう1人転移者を増やしたいと思います。