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何人も俺の彼女への思いを止める事はできない。

オークションが終わり、いつもの日常を送って早1か月経過した9月後半のある朝、俺は寝室に新しく設置したダブルのベッドの上で、ある事に気が付いた。


「そいえば桜、俺は改めて気が付いたのだが、」


低いとはいえ山に囲まれた我が家の日の出が遅くなってきて、朝が比較的に弱い桜は眠い目を開けながら、


「なあに、勇次郎君。」


先月当たりから桜は、俺の事をさん付けから君付けに呼び名を変えた、そんな彼女の顔と布団の隙間から見える旨の谷間の拝みながら答えた。


「俺達って考えて見たら、結婚してから1か月以上、寝間着を着ないで普通に寝ているよな?」


桜は意味深な顔をしながら、


「当たり前じゃあない、新婚さんなんだから当然よ。」


俺は一人でいた時は、普通に下着とパジャマを着て寝ていたのだが、ここ一月余りのベッドでの出来事を思い出しながら、疑問を口にした。


「そうなのかな、他の人達も新婚だと、こんな感じが普通なのかな?」


桜は珍しく意地悪そうな笑顔を見せながら、


「そうよ、夕飯が終われば見たいテレビが、なかったり用事が無ければ、直ぐに一緒にお風呂に入って、ベッドの上で毎日、こうして早めに横になって過ごすのが普通よ。でも、世間では共稼ぎが普通だから新婚さんは、中々、こうして私達の様に毎晩のように過ごすのは難しいかもね。

それに・・。」


「それに?何?」


「それに勇次郎君の様に『回復』を使えないから毎日、何回も挑む人はいないかもね。」


「ああ、そう言えばそうだな。」


俺は一応、桜のその言葉で納得する事にした。

ちなみに俺達は初めての夜から避妊というものを一切した事はない。

俺も桜も40過ぎの晩婚(?)だった為、早く二人の子供が授かる事を共通の認識をしていた。

勿論、母ちゃんズに早く俺達二人の子供、つまり孫に会わせたかったのもあった。

特に楓さんは当時の桜をないがしろにする、桜の弟夫婦とは中が悪く彼らも二人を遠ざけてた節もあり、また、二人には子供がまだ無かった為、楓さん自身が孫がいなかった事に、以前の友人達と比べられて形見が狭い思いをしていた。

12月の結婚式は妊娠していたら良いなと、二人で世間とは少し違う価値観の結婚生活を送っていた。


桜と楓さんのダンジョン探索だがスライムエリアでやめるとの事だった。

理由は二人が犬好き猫好きの為、地下11階以降の小動物エリアには降りたくないそうだ。

結局二人共お母ちゃんと同じく探索自体を引退する事にきたのだった。

動物好きの二人にはペットを飼う際には、ダンジョンに入らせない事を言い聞かせて、俺はアイテムボックスカード製作の為、相変わらずフェニックスとミスリルドラゴンを討伐する為だけにダンジョンに潜った。


俺はアイテム魔法『アイテムボックス作成』を使う時、偶に設定をいじったりして実験を行っている。

俺が製作するアイテムボックスカードだが、以前にも話したが何も設定しなければ全ダンジョン共通して使用できるカードが出来上がる。

わざわざダンジョンのシルアルコードを兼任している名前を設定する事で、特定ダンジョン専用で使える事になる。

実はこの設定時に『スキル使用エリア限定解除』を設定すると、ダンジョンの外でもアイテムボックスカードが従来通りに使用できる。

ダンジョン内でドロップされるユニークアイテムの魔道具の中には、ダンジョンの外でも使用できるアイテムが存在する為、こういった発想も湧いたりするので、他にも出来る事はないか試行錯誤をしている。

こういった実験をしていると、俺は時々なにかを見過ごしている様な気がするんだけど、それが何なのか皆目見当がつかないでいた。



「家のダンジョンのエンカウント密度率が多い?」


注文されていたアイテムボックスカードを各ダンジョン専用に設定と複製を繰り返し、本日分のノルマを大平山ダンジョンの本部主張所に届け終わった長田さんは、世界のダンジョン事情を教えてくれる際、我が家のダンジョンが他の日本のダンジョンと比べて魔物のエンカウント率の高さが多い事を教えてくれた。


「はい、村田さんがここ最近、午前中しかダンジョンに潜らない為、村田さんの許可を得てダンジョンの探索を行ってきましたが、魔物の1フロアー当たりの一日の総数量が、日本のダンジョンの平均数の10分の1だと分かりました。」


「逆に少なくない?」


「いえ、面積に対して計算すると、エンカウント率は日本のダンジョンの平均値の約10倍となります。

更に、村田さん宅のダンジョンは一般には公表されていない為、探索している人数が限られています。

私達も村田さんの許可を得て、ダンジョンを使用させていただいておりますが、我々以外に人がいない為、レベルアップが八王子ダンジョンと比べて、以上に早くレベルアップしていきます。」


長田さんはペットボトルのお茶を一口飲んでから、


「という事は、村田さんは単独で最下層を僅かな期間で、レベルアップで250を超えて最後の敵であるミスリルドラゴンを討伐できたのもなとっくできます。

しかも、私の知る戦闘職、魔法使い職の者達では単独での探索制覇は事実上不可能です。

なぜざらば、戦闘職では魔法の効果は期待出来ませんし、魔法職では属性の異なる魔法を使いこなせませんし、加えるならば魔力が尽きればそこまでですし、仮に最下層までたどり着き、ミスリルドラゴンと対峙しても魔法は殆ど効きませんし、何より、そこまでいくまでの魔物の攻撃に対応する事は不可能です。」


ふむ、どうやら確かに俺はアイテム魔法と収納魔法、それに最下層にたどり着くまでに習得したスキルの種類を考えると、綱渡りの連続ではあったが、幸運の連続でもあった訳だ。

アイテムを消費せずに効果を発揮するアイテム魔法、しかも、なんちゃって攻撃魔法は、光と身体強化魔法を除くほぼ全ての属性魔法の準最強クラスのレベル4、ミスリルドラゴン戦の前に会得した竜胆に至っては、ドラゴン専用の致命的な魔法と俺自身に対する回復魔法レベル4と治療魔法レベル5を同時に効果を発揮するチートアイテム、それらを効果的に使える縁の下の力持ち、マナポーション・レベル5は、偶然発見した裏技で合成したオリジナルのチートアイテムで、アイテム魔法で消費する魔力の当時は3倍、現在レベル350オーバーの俺に至っては5倍の魔力を満タンにする。

いくら高位次元生命体が作り出したダンジョンシステムの、現実に適した一種のシステムプログラムの規定内とはいえ、改めて他人から見れば間違いなくチートに違いない。


「正直言って、村田さん以外の人が、レベル300越えを行うのにたどり着けるか、私だけでなく組合でもわかりかねます。

事実、私達パーティーはどうやらレベルアップに限界が近づきつつあるようです。

レベルアップが150を超えてから、それまでの様にレベルアップ自体しなくなりました。

この先レベルアップを図るのなら、村田さんの様に単独もしくは、人数を半分に減らして探索をするかですが、残念ながら4人パーティーでの、我々の個人としての戦力編成では、地下80階層のボスを倒す事すらできません。」


中川さんは続けて、日本の探索者の犯罪事情と警察の対策状況を少し話してくれた。


「現在の探索者の犯罪は、村田さんご存知でしょうが、探索者犯罪の厳罰強化により、ダンジョンを潜らない一般人の刑事犯罪と比べて、レベルが高ければ高い程、同じ犯罪でも一般と比べて最大で、罰金頚と懲役刑で10倍の差があります。

一般人と比べて犯罪の内訳で、一番に上昇したのは性犯罪です。

これは犯罪心理学や生態学の学者さん達の論文ですと、まずレベルアップにより肉体が強化されて、精力が一般人と比べて回復が早いことと、魔物との戦闘で命のやり取りで死の概念が身近になった事で、種の保存としての本能が覚醒したせいで、性欲の制御が甘くなってきているのが原因ではないかと言われています。

事実、探索者同士の結婚する確率と、一般と比べて結婚年齢の平均が5歳以上若く、平均交際期間が半年以内と短いのです。」


う~ん、後半の結婚に関しては身に覚えがあるな、いくら1年前の桜に好意を持たれていたとしても、実質的な交際期間は1か月足らずだし、告白がいきなりプロポーズになったとしても、入籍したのがプロポーズから4日目、そういう関係になってから約40時間と短い、いくら入籍届けを母ちゃんズが前もって用意していたとしても早すぎるくらいだ。


「それと言いにくい事なのですが、村田さんにミスリルの特注が組合から入っています。」


ん?


「実は先程の探索者の犯罪で収監する拘置所や刑務所の強化と、更に各重要機関の建物の強化にミスリルを使用した鋼材が必要になりまして、言いにくいのですがアイテムボックスカードと並行して、製作して欲しいそうです。

・・ちなみに期間と注文してきた量が、こちらの用紙に記載されています。」


中川さんから注文された用紙の束のファイルを、受け取って俺は何度も読み直した。

その物量と納入期日を見て頭を抱えた。


「すみません、すみません、すみません。」


これ、絶対にドロップしただけでは、集められないし、納められない量だよね。

まあ、今回は探索者の犯罪抑止に貢献できるし仕方がない。

その代わりアイテムボックスの方の製作は当分お休みだと伝えた。


俺は鬱病予防を盾にして、桜と新婚生活を過ごす日常を優先して答えた。









お金も持ってて、若返って憧れだったアイドルと結婚して、スローライフを満喫している勇次郎は、間違いなくリア充。

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