そして彼女は伝説から神話へ
サブタイは某シューティングゲームからです。
個人的に2作目の「野望」が好き、というかシリーズで一番コインを入れて遊んだ、思い入れのある作品だった。
今日まで3か月に一度開催されている、オークションは今回で3回目となり、ダンジョンの攻略ではアメリカと競争している日本オークションは、様々なジャンルの来客と招待客を迎えて行われる。
オークション自体は世界中で行われるが、今回のオークションには俺が出品した若返り薬が目玉で、どれくらいの価格で落札されるか注目されている。
若返り薬の現物は2個とも、組合で保管されていて厳重な警護体制で管理されている、既にアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、某国の解析持ちによって解析され、本物と烙印されている。
現物を組合に預けた時、日本の大企業上がりの大物政治家が横取りを画策していたが、その時のやり取りを録音した音声と様々な証拠を、組合の方が大々的に各国のマスコミと政府機関に流した為、大物政治家は役職と政界を引退する事になった。
そんな事もあって今回のオークションはインターネットだけでなく民放による生放送が、オークションの後半を2時間かけて放送される。
会場に用いされたVIP席は、生放送でもカメラを向けられても、スモークの張ったガラスによって遮られて見えない。
また海外のVIPの中には極秘に来ている中東の王族や各国の金持ちもいる為、日本の民放が万が一にもテレビに写したら国際問題になる為、民放のプロヂューサーは戦々恐々の思いで、生中継を実施しているはずだ。
俺達に用意されたVIP席も席というより、VIPルームにイメージが近く窓際の会場が見えるテーブル付きの席は前後2列で20人分の席があり、、俺達家族の他に長田さん達護衛の内女性陣を除く3人が部屋の中にいて、部屋には備え付けのドリンクバーと軽食があり、生放送が写る大型テレビと隙に使えるパソコン、子供達が飽きても良い様に京都の老舗ゲームメーカーが販売している、インターネット済のゲームと32インチテレビが置いてあった。
また他のVIPと鉢合わせしない様に部屋には、トイレや着替えのためのスペース、更に洗い場や食事の為の5人掛けテーブルが四つ設置されていた。
長田さんの話によると桜と彼女の護衛でそばについている加藤さんと志田さん以外に、この部屋に来る者はいないそうなので、安心してオークションを見学してほしいとの事だった。
「百花、千春、昨日はどうだった、東京で何をしていた?」
ありきたりの何気ない会話を姪っ子達に話かけた。
「私は昨日はお母さんと渋谷と銀座とスカイツリーと浅草を見て回ったよ。」
百花は義姉さんと主に買い物を楽しむルートを選択したようだった。
「私は、お父さんに秋葉原と中野、それから銀座でお姉ちゃん達と合流して回った。」
千春はゲームと接続していたテレビを見ながら、手に持ったコントローラーをすさまじい指裁きをしながら答えた。
そう言えば、あんちゃんは千春はバスケの他にオタク気質があるって以前言ってたな。
二人が言うには銀座での買い物は服類だけでなく、両親だけでなく自分たちのアクセサリーを購入した為、まだ、貴金属類や宝石に興味を持っていない自分たち姉妹には退屈だったそうだ。
でも昨晩泊まったホテルのプールと食事はそれなりに美味しかったと言ってたが、肉類魚類は俺から貰っている者の方が美味しかったと、嬉しい事を言ってくれたのだが、俺が懸念した様に二人の彼氏や旦那になる人が心配だと言ったら、二人して「よろしくね、叔父さん♥」と肩を叩かれた。
結局、オークションに参加するわけでもなく姪っ子達とコントローラーを繋いで、インターネット対戦でのゲームを楽しんだ。
午前10時になっていよいよオークションが始まった。序盤は万能治療薬のレベル2の様に探索者がダンジョンで使うには、ごく普通のアイテムではあるが、お母ちゃんの時の様に癌や白血病の様な病気に即効性がある為、一般的には貴重なアイテムからオークションは始まった。
万能治療薬はレベル2クラスなら、日本の場合だと組合が買い取って、医療機関に直に売られる為、なかなか単品での競売はあり得ない。
オークションで競売される時は10本以上での出品で出される方が多く、俺がアイテムボックスカードを納めるようになってからは、組合に直に収めて収入を行わずに、オークションで競売する探索者が多くなった。
その為、万能治療薬の供給量が少なくなり、価格が上昇傾向になった感じがする。
一般の人の中には組合が強制的に買取をするべきだとか、販売価格に上限を設けるべきだと、言う人もいるが、探索者が命を懸けて得た財産をどうするかは探索者の自由なので、おそらく日本では医療薬品会社との差別化がすでに出来ているので、このままどうにもできないと思う。
確かに俺はお母ちゃんの時に経験した為、癌などの病気を患い、若くして余命が宣告されている患者さんの気持ちは分かるが、その時は違法ではあるが、探索者個人と個人契約して万能治療薬を手に入れてもらうほかに方法はない、その場合だと逆にオークションで手に入れるより高くのが相場で、それならばと患者さんの家族が10人以上で組んでオークションに参加している人達も多い。
万能治療薬はレベル2だと複数で出品されるが、レベル3ともなるとドロップだとレアアイテム扱いになり、他には俺の様にアイテム魔法での『合成』でしか手に入れるしか方法はない。
レベル3クラスの万能治療薬だとレベル2でも直しきれないレベルの重病や、桜の様に遺伝性の疾患を治す様にな効果を発揮する。
実際にレベル3の万能治療薬は単品でも、レベル2の5倍以上の値段で取引され、1本でも数千万円での単価になるのが当たり前である。
更にアイテム魔法『合成』で作れる限界である万能治療薬の上限のレベル4ともなると、先天性の視覚や聴覚などの知覚障害や知能生障害や後天性の失明や失調、アルツハイマー病に代表される認知症などまで治す、特に部位欠損などは回復魔法の使い手は現在の所、拉致、誘拐のおそれやがある為、殆どの人は名前を明かしてはいない。
万能治療薬レベル4はオークションでの出品は一度もなく、出品されれば最低でも十数億円になるとまで言われているが、俺の予想ではせいぜい2億か3億だと思っている。
今回のオークションは万能治療薬からユニークアイテムでは前回、前々回で出品された毛生え薬が100億円で、前回のオークションで出品された念力の指輪が150億、バリアーペンダントが180億で落札された、この二つのユニークアイテムはだダンジョンの外でも使え、一般人でも効果は弱いが使え、探索者なら魔力が高ければ高いほど使えるが、熟練の探索者が使ってもダンジョン内の戦いでは使えそうにない様に思えるが、まあ使い方次第かな。
俺のアイテムボックスで分かると思うが、ユニークアイテムには共通して言えるのだが、探索者自身が持っている魔法やスキルその物と比べると、あまりにも弱すぎる反面、誰にでも使えるという事とダンジョンの外でも使える利点もある。
もっとも俺が作るアイテムボックスカードは、俺が特定のダンジョン専用にわざわざ『設定』した為、ダンジョンの外では使えない、また、俺の頭の中にインストールされたマニュアルだと製造者である俺以外に、『設定』を変更する事は出来ないようだ。
オークションでは、いよいよ残す所、俺が出品したラスト2個となったようだ。
ここでテレビによく出てくる大物タレント司会者が、会場の大型スクリーンに注目するように言うと、会場の照明が少し暗くなり、スクリーンにかつてのアイドルの当時の映像が映し出されて、VTRの中でテレビのドキュメンタリーで聞いた事がある声で彼女の紹介と解説が行われた。
引退後の彼女が表に出された事もない写真が、年齢を重ねると共に先天性の早老症によって、見る見る間に更けていく写真がスクリーンに映し出されていった。
このまま年を重ねれば、長くても60代で寿命を迎えると解説がされ、最後に映し出されたのは40代なのに、老人の姿をした元アイドルの姿の写真だった。
やがて映像は、写真から動画に変化して、元アイドルが万能治療薬3を飲み、続けて金色の薬を飲んだ処で薬の効果のエフェクトが発生した所で、VTRは止まり会場の照明は明るく元に戻った。
大物タレント司会者が続けざまに紹介すると、当時の彼女の代表曲と共に舞台の袖から、一見すると現代の十代の可愛い女の子にも見える、VTRに出ていたアイドルが現代風の衣装に身を包み、当時と同じ歌声でスポットにその姿を照らされてステージに現れた。
当時の彼女を知る中年から彼女の歌しか知らない若者、初めて彼女を知る世代、更に若返りの効果を目にした海外の人まで、会場中が瞬く間にオークションとは明らかに違う熱気に包まれた。
俺は部屋のテレビと窓から聞こえてくる彼女の声を聞き、『竜の眼』によって鮮明に見える彼女の姿と笑顔を見ながら、有意義と言えなかったが彼女の歌によって救われた青春時代を思い出し、いつの間にか自然と涙が出ていた。
冴えないこの俺が3日前に憧れだったアイドルと結婚して夫婦になるとは、十代の当時どころか先週の俺にも分からなかっただろうと思い、会場でスポットライトを浴びている桜をみて、凄い女性を嫁にしたなと改めて思った。
青春時代ファンだったアイドルとの結婚、一種の憧れではありますが、当時のファンだったアイドルの今を検索してみると、いろんな人生を歩んでいますね。




