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ジョージの雨音の調べ

「西日本にもたらした大雨は、今夜の夜から木曜日の夜まで東日本に大雨をもたらせるでしょう。

ピークは明日の19日の水曜日で関東地方は1日中降り続けるでしょう。気象庁は東日本各地に・・・」


桜さんに改めてプロポーズをして、桜さんから良い返事をもらった俺の心とは裏腹に、天気は俺の公休日である水曜日を1日中、雨を降る予報をテレビで見ていた俺に、突然、お母ちゃんは楓さんと出かける旨の報告をしてきた。


「出かけるって、今から?どこへ?」


お母ちゃんは笑いながら、


「そう今から足利温泉へ2泊3日で行ってくるわね。」


お母ちゃんは離れの家で俺に、小さいバッグに荷物を簡単にまとめながら、そう答えた。


「でもさあ、足利温泉だったら、日帰りで行けるし、明日は1日中大雨の予報が出ているよ。」


「あのねえ、お母さんだって、楓さんとは親戚になるのだから、仲良くしたいのよ。

楓さんも地元近くの鬼怒温泉とは違う足利温泉に行くのは初めてだって、楽しみにしてるんだから別にいいでしょう?」


お母ちゃんは荷物の入ったバッグを持って自分の軽自動車に乗せて、俺に向かってニコッと変な笑顔で、


「そうそう、一応食材を3日分買っておいたから二人で食べきってね。

行ってきます~。」


そういって愛車を運転して、前の家の私道で待っていた楓さんを乗せて、とっと行ってしまった。


「二人で?」


しばらく考えたあと、二人の母親達のいらぬ気づかいの意図に、遅まきながら気が付いた。

気が付けば周りにいたはずの護衛の長田さん達は、俺が呆けている間に帰宅しまった。

つまり、そういう事なのだろう。

俺はマリッジブルーになった様な深い溜息をついた。


そんな悶々した気持ちで手付かずの状態で、時間は過ぎて夕暮れが近づいた頃、前の家から桜さんが手ぶらでやってきた。


「こんばんは、お邪魔します。」


「こ、こんばんは、桜さん。」


桜さんは笑いながら、


「桜って呼び捨てでいいわよ、勇次郎さん。」


「じゃあ、俺も呼び捨てでいいよ。」


桜は首を振って、


「私はこれが普通だからいいのよ。

さてと、台所を借りるわね。」


そう言ってキッチンでおもむろに食材をパッと見て、素早く頭でメニューを組み立てて調理を始めた。

そうこうしている内に1時間後には二人分のおかずが、テーブルの上に並んでいた。


「はあ、何だか母がすみません。」


食事を終えて後かたずけした後、二人で並んでテレビのバラエティ番組を見ていた。

お互いに意識して緊張しているせいか、やはりどうしても緊張してしまう。


そんな時間が2時間位過ぎた頃、家の周りの地面から雨の音が聞こえてきた。

俺は唐突に思い出したことがあった、我が家はまだ洗濯物を天日干ししているので、それがまだ干しっぱなしだったのを思い出した。

急に振り出した大雨の中、俺は急いで外に出て取り込みを始めた。

サイコキネシスで取り込んでも良かったのだが、実際に手で取りこんだ方が早くすむ為、日常生活レベルのスピードで行った。

桜も一緒に縁側に取り込んだ後、桜の家の洗濯物を取り込んでなかったのを、桜が思い出したため急いで、二人で走って取り込みを行った。

桜の家の洗濯物は少なかった為、カゴにまとめて桜の家の物置に置いて、我が家に帰ってきた。


改めて後で思い返せば、もっと要領良く取り込めたのだが、やはり、お互いにこの時は普通の判断能力ではなかったと思う。


レベルアップした体で日常レベルのスピードで動いたものの、俺と桜の髪の毛と服は濡れてしまった。

システムバスに適度な温度のお湯を10分で一杯になったので、桜に先に入るように促したが、彼女は俺に先に入るように言ったので先に入る事にした。

服を脱いで洗濯カゴに放り込んで、掛け湯をして体をボディソープで洗い終えて、湯船に浸かっていると、桜が生まれたままの姿で入ってきた。

体を洗い流して同じ湯船にしばらく入ってたが、俺は先に湯船から出て、湯船に浸かっている桜の顔に高さを合わせて、


「桜」


桜の名前を優しく呼んで彼女の唇に初めて触れた。

先に風呂からでた俺は浴衣に着替えて、一階の床の間のある8畳の和室に布団を敷いて、桜が風呂から上がるのを待った。


やがて浴衣に着替えた桜が、床の間で待っていた俺の前に湯上りで火照った顔で現れた。



外で激しく雨が降り続ける音をBGMにして、四十代にて俺と桜は20年前の姿と体でDTとSZを卒業した。




レベルアップした俺はスキル『回復』を使い何度となく彼女に挑んだ。

俺の体重の半分以下でしかない彼女の体は、いまだ肋骨が肌に浮く様な華奢ではあったが、彼女もまたレベルアップしている為、俺の要求にすべて答えてくれた。


深夜1時半の柱時計の鐘が鳴った頃、俺の胸でうつ伏せで果てた彼女の脇の下を両手で浮かせて桜の顔を俺の肩の位置に合わせて、敷き布団の足元の外側にあった夏掛け布団を、サイコキネシスで手繰り寄せて、俺の体の上で呼吸を整えている桜の上から布団をかけた。

そして口づけを交わして桜の胸の感触を肌で感じながら、そして彼女の吐息を耳元で聞きながら眠りに着いた。





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