私は声を大にして言いたい。「お前は中学生か!」
最近お母ちゃんが自分の家財道具を元大叔父夫婦の家に引っ越してしまった。
桜さん親子が住んでいる前家と西隣の新お母ちゃん家が最新の設備と家電にリフォームをして、その後に桜親子が入居したのを良い機会だと、隣ん家に引っ越したのだ。
隣に住んでいると言っても、公休日以外の日は今まで通り3食一緒に我が家で食べているが、最近は公休日は昼食に加えて夕食は別々に食べるようになった。
いままで住んでた我が家は俺が一人になってしまったが、リフォームをする際に、5部屋が和室だった昭和風の5LDKの我が家は、床の間と仏壇と押し入れ付きの8畳の和室を除くすべての部屋を洋室にして、2階に新に建て増ししたウォークインクローゼット付きの10畳の寝室を作り、1階のトイレの真上に新しいトイレを、脱衣場と風呂場の上には脱衣場とシャワー室を設置してリフォームをした。
その結果5LDKだった我が家は6LDK+トイレ&シャワー室となった。
その際に1階の床を張り替え、壁には内断熱を施して機密性と防音性を高めて、キッチン・バス・トイレと最新で手入れもし易い最新機種にした。
特に俺がこだわったのは、リビングに80インチの最新モデルのテレビを設置して、音の反射に気をつけて7.1Chサラウンドのシアターコンボを置いた事だろう。
俺の趣味の一つに映画鑑賞があって、劇場で見る以外に気に入った映画のソフトを購買して集めていた。
勿論、全ての映画を集めているわけでなく、実際に映画館で見たヒット映画やレンタルで見た映画、時には気にはなっていたが、近くでも上映されず、懇意にしているレンタルビデオ屋さんでもレンタルされていない場合は、買っていたりもしていた。
最近はダウンロードでも高画質で見られるようになっているが、俺自身が何故かブルーレイやDVDでの購入でないと気がすまないので、今でも定期的にソフトで手に入れていたりする。
2週間後の日曜日はユニークアイテムのオークションを迎える水曜日に、俺はお母ちゃんと桜さん親子を、今話題の映画に誘ったのだが、お母ちゃんと楓さんは二人で葛生市街にショピングする予定だったので、二人から俺と桜さんの二人でいってらっしゃいと言われた。
その場に桜さんがいたので、結局、俺と桜さんの二人で映画鑑賞と即決になった。
考えてみると女性と二人で映画に行くのに、夏とはいえ普段着ている私服では駄目だと、お母ちゃんに言われたので、以前に東京へ入った時に買ったブランド物の夏のカジュアルシャツを着て出かける事にした。
お母ちゃんにGoサインを出された俺は、愛車の軽ワゴンに桜さんを乗せて出発した。
エンジン始動した際に、姪っ子たちが勝手に録音した人気アニソンが大音量で流れたのはご愛敬である。
葛生市を東西流れる一級河川『渡瀬川』は、葛生市の市街地を南北に分断していて、川の北側を旧市街地、南側を金市街地と葛生市民は呼んでいて、昔からある旧市街地には、市役所や様々な行政機関、昔からある商店街やスーパーがあり、南側には新しい商店や中型のショピングモールがあり、人口の多い南側は明らかに北側に比べて栄えていた。
中型スーパーモールにはシネコンがありスクリーン数は8個と、大型のシネコンの平均である10スクリーンには少なく、偶に俺が見たい大ヒット映画がやっていなっかたりするが、土日にはそれなりにお客が入っているが、平日ともなると客足が少なかったりする。
以前は観客数が少なくて閉館する噂も有ったが、大平山ダンジョンが葛生市に現れてからは、探索者達が映画を身に来たりして、噂自体が消えていった。
俺が見たい映画は今話題の邦画で、若手の人気の俳優や女優が出ている映画で、元々は漫画が原作で実写化されるとは思っていなかった為、どのように映像化されているか楽しみであった。
原作自体は俺自身も好きで原作本は持っているし、何度もも読み直していたりしていたので、物語の設定や相関図は頭に入っていたので興味があったのは、どう映像化したのか出ている役者さん達がどんな演技をしているのか、とても楽しみにして行った。
映画が終わり、お昼時だったのでショピングモールのレストラン街の、中華料理屋で食事をしながら、俺と桜さんは映画やテレビの話題や好きな本の話で、色んな話をしていた中で、先程見た映画の感想へと話題が移っていった。
俺と桜さんは2歳違いの為、テレビや映画、漫画など共通する話題も多く、以外にも桜さん自身がジャンルを問わないアニメ好きだった事に驚いた。
「やはり原作で単行本25冊分の内容を2時間でまとめるには無理があったかな。」
そう言う俺の感想に対して、桜さんは
「でも限られた予算と撮影期間、本来なら4シーズンに匹敵するドラマになる原作を、あそこまで、まとめたのは凄いと思いますよ。
残念ながら勇次郎さんみたいに、原作ファンの方にはかなり無理がある作品になってしないましたが、純粋に映画として見ても確かに完成度は高いとは言えませんが、私の様に業界を知っている人間からすれば、監督も脚本家さんも良く頑張ったと言えます。
ですが、映画を商品として評価するのは最後はお金を出して見る観客ですから、勇次郎さんの評価の方が世間の評価として正しいのでしょう。」
俺はため息をつきながら、
「まあ、見ている俺達には、作り手の苦労や苦悩は見る事に反映する必要はありませんから、結局は作品の興行収入が大きければ、その映画は成功したと言えるし、映画の出来が良くても興行収入が悪ければ失敗といえますしね。
興行収入が悪くても中には実はすごい映画だったと、後から気づかされる作品もありますし、結局のところ何が良い映画がなのかは、少し時間をおかないと分からないのかもしれませんね。」
桜さんは物思いに更けたように一人事を小さい声でつぶやいた
「いい作品か~。」
俺は桜さんが家で何かを作っている節があるのを、楓さんやお母ちゃん、護衛の二人の女性の様子からわかっていたので、桜さんに俺の感想を付け足すことにした。
「でも、お金が目的で作ろうとして作るよりも、作り手が作りたいと思って作った方が、案外と良い物が出来るかもしれませんよ、実際、画家でも売るつもりもなかった作品んが評価される事もあるし、肝心なのは作り手が好きな物を作れば、良いんじゃあないのでしょうか。」
すると桜さんはハッと俺の顔を見て、
「そ、そうですよね、要は作りてが何を作りたいのかが一番大切なんですよね。
まずは作る事を楽しまなくてはいけませんよね。」
「そう、そう。」
桜さんはドキッとする笑顔で、
「良かった、初めて出来た男の人の友達が勇次郎さんで、アイドルだった頃を知っている40代の私が、実はアニメ好きのヲタクだなんて知ったら、幻滅されるかと思ったわ。」
そんな桜さんに俺は本音で言った。
「いやいや、最近の芸能界でもヲタクを公言しているアイドルだっているし、40代でも昔から公言していて恥ずかしがらず、胸を張って頑張っている人も多いですよ。
確かに俺達が十代の頃の風潮はオタクには冷たかったけど、最近は海外ではヲタク・イコール・カッコイイとまで言われていますし、俺自身が恥ずかしいと思った事はありませんよ。」
そう言うと桜さんは、本当にうれしそうに微笑んでくれた。
会計をしたのち、この後どうしようかと考えていた時に、身に覚えのある気配が比較的近くから感じたので、その方向へ目を向けると、お母ちゃんと楓さんが遠くから、こちらを見ていたので、手を振って応えてやった、
二人は最初は遠目で分からなかったのか、横へと曲がって行ってしまったので、俺は桜さんの手を引いて二人に追いつく為に追いかけた。
前を歩いていた二人に追いつくと、何故か俺を除く三人は残念そうに俺を見ていた。
結局二人と合流した俺と桜さんは、ショッピングモールの俺が勤めていたスーパーと競合している店で、食料品を中心に買い物をして家路に着いた。
夕飯の時、お母ちゃんから今日の事を根ほり葉ほり聞かれたが、お母ちゃんは終始、機嫌が悪かった様に見えた。
気づけよ、鈍感。




