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簡単に放課後に会いに行けるわけがない

ど田舎に住んでいる作者が見たことがある芸能人は、

芸能人の地方営業で、コント赤信号、河合奈保子、石川秀美、とんねるず、サンドイッチマン、ジョイマン

映画の撮影で、三浦春馬、多部未華子、宮沢りえ、オダギリジョー、杉咲花、広瀬すず、その他数名くらいかな、

地方都市に住む一般人としては、作者は比較的に多いと思うけど。

わが県の県庁所在地から車で30分、市内を走る電車の在来線なら宇宮市駅から北へ3っ目の駅がある、宝石寺という景気の良い字面の、お寺の名前からとった駅がある宇宮市宝石町にやってきた。

宝石町は名前は煌びやかだが、ごく普通の地方都市の郊外で、県庁所在地の政令指定都市でありながら、交通の便の悪さと、道路に高速道路や国道のような主要道路がなく、そのせいではないだろうが、若い世代の人口が減少している地域だと、地元新聞の地域経済欄に載っていたのを、辛うじて記憶していた。


俺と護衛の人達は車2台で宝石町に来て、適当な場所から歩いて目的の住所を目指していた。

有料駐車場に払うお金が惜しいわけではないが、万が一の事も考えて俺のアイテムボックスの中に車を収納してある。


「宝石町川田1-1の9、金剛荘11号室、ここが川田1-1だから、もう少し先ですね。」


「スマホアプリだと、3っつ目の信号の細い路地から300メートル位のアパートですよ、村田さん。」


「あ、ありがとう、志田さん。うわ~、き、緊張してきた。」


俺は魔物相手なら今では緊張しなくなったが、今度の相手は人間。

しかも、俺が一方的に相手の事を知っているだけで、相手から見れば全く見たことも会った事さえない人間、

更に言えば、これから俺が持っていく話は、相手にとっては下手すると大きなお世話かも知れない。

いや、その前に話を信じてくれるか、あるいは話はおろか、会ってくれるかどうかさえ分からない


「村田さん、そんなに緊張しないでください。

大丈夫ですよ、きっと会ってくれますよ。」


「少なくとも、私が彼女の立場なら、村田さんの案に良い返事をくれると思いますよ。

でも、問題なのは彼女が、世間の目に良い意味でも悪い意味でも、好奇な目で向けられるのは間違いありません。」


「その時はオークションに出演して貰わなくてもいい、俺の本音を言えば、むしろ、出て貰わなくても構わない。

只、俺は本物の『百地 桜』に一目でいいから会ってみたい、いや、会いたい。

話はそれからだ!」


そう、俺が今日ここへ会いに来たのは、俺が高校2年の時にデビューしたアイドル『百地 桜』その人である。

80年代の群雄割拠のアイドル戦国時代の後半に、鮮烈デビューをし、愛くるしい小柄な身長と、大きな吸い込まれそうな目、いまの時代でも声優としてもやっていけそうな可愛い美声、ミリオンセラーには届かなった物の、いまでも、年代別アイドルの曲でカラオケでベスト20で歌われる曲を、作詞作曲した音楽の才能、そして、主要な音楽番組とコンサートでしか見られない動いている姿、一切スキャンダルがなく謎のプライベートを持ったミステリアス性、只、当時の俺が分かっていたのは、彼女の出身が我が県最大の村である事、そして農家の長女という事だった。

そして22歳の時に不治の病で芸能活動を引退した。

そんな彼女が引退後を、今から5年前にテレビのレポーターが、2時間の「あの人は今?」のような特番で、不治の病に苦しんでいる彼女の現状のみを、当時の映像とレポーターの声だけで伝えていたのを見た記憶があった。

俺は彼女の病気を治せる方法を持ち、彼女が望むなら病から解放させようと思ってきた。

そして、俺には彼女にできる事ならば、オークションである事に協力して欲しかった事があった。


もうすぐ彼女の住むアパートに到着すると考えた俺は、、あすます緊張で胃に穴が開きそうな感じがしたが、なにを話したらいいのかと考えがグルグルと頭の中を回っていた。

そんな状況の中、向こうから、こちらに向かってくる母と同世代の小柄な女性がやってくるのが見えた。

女性は俺の顔を見ると、突然、嬉しそうに声をかけてきた。


「あら、こんにちは、お久しぶりですね。こんな所でお会いするなんて奇遇ね。」


俺は思わず「?」と首をかしげたので相手の女性は、


「ふふふ、忘れちゃったかしら、私は以前たしかに貴方に助けてもらったことがあるのよ。」


う~ん、確かに身に覚えがある、声にも聞き覚えがある、確かにどっかで会った事がある、はて、何処だっけ?

腕を組んで、う~ん、う~んと思い出そうとしている俺に


「くすっ、ヒント、去年、駅前通り、酔っ払い、これで思い出したかしら?」


女性のヒントで閃いた。


「ああ!、思い出した。あの時の!」


「あの時は、慌ただしくて、ごめんなさい。

そうだ、今、時間はあるかしら?

家に来てお茶でも飲みません。」


「いや、いや、悪いですよ。」


「いいから、いいから。」


女性は元々、俺が向かっていた方向へ俺の背中を押しながら進んだ。

その内に築40年、いや50年位の昭和のアパートへと近づいた。

あれ、もしかして、このアパートと思っていると、女性はおもむろに


「散らかっているけど、遠慮しないで上がって。」


と言いながらアパートの11号室の部屋のカギを開けて、俺達を招き上げたが

長田さんと加藤さんを除く3人は、外を回ってくると言い、二人が俺とアパートの部屋に入っていった。


アパートの部屋は2Kの間取りで、俺達は入り口の手前側の台所寄りの6畳間にある、卓袱台の座布団に座らせてもらった。

俺はもしかしてと少し考えながら、お互いに自己紹介していない事に気が付いた。


「あの~、俺は言いそびれましたが、葛生市でダンジョンの探索者をしています。村田勇次郎といいます。

今更ながら、あの~、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


女性は、はたと思い出したように、


「そう言えば、まだ、自己紹介していなかったわね。

私の名前は、『百地 楓』といいます。」


俺と長田さん達は顔を見合わせて確認し会った。

俺はつばを飲み込んで、


「あ、あ、あの~、貴方は、もしかして貴方は、その~。」


く、口が廻らない、呂律が悪い、心臓がバクバクする、も、もしかして、ほんとに~?


俺の様子がおかしいと思ったのか、首を傾げる楓さんに、俺に変わって長田さんが単刀直入で聞いた。


「百地楓さん、もしかして貴方は、百地桜さんの関係者ですか?」


うわつ、この人いきなり切り込んだよ。

き、緊張してまだ、声が出てこない。

そんな俺を尻目に二人の会話は続いていた。

百地桜の名前に反応して警戒した目で、長田さんに睨むように楓さんは、


「桜は私の娘です。

貴方達は一体何者ですか?

桜に何の用があって来たのですか?」


ほら見ろ、警戒されたじゃないか。どうするんだよ?長田さん?

く、くそ~、まだ、声が上手く出ないじゃあないか!

そして俺抜きで会話は進む。

長田さんは背広の内ポケットから、名刺を取り出しながら


「失礼しました。私、こう言う者です。

自己紹介させていただきます。

私は警視庁警備部所属、特別警護班、班長をしております。

長田雅治警部といいます。」


「警察?」


長田さんは俺の方へ手を向けて


「はい、我々の任務はこちらの村田勇次郎氏の警護を担当させていただいております。

本日、こちらに来たのは、村田勇次郎氏が貴女の娘さんである百地桜さんに御依頼したい事があるとのことなので、我々も一緒に来た次第でございます。

詳しい話は村田さんから桜さんを交えて、お話させていただきたいのですが、よろしいでしょうか。?」


楓さんは、俺に目を向けた後、隣の部屋へ通じる襖に向かって、


「桜、起きているかしら?

もし起きて聞いていたんだったら、少し聞いてあげてくれる?

嫌なら帰ってもらうけど?」


すると、襖の向こうから起きだして、動き出す音が聞こえてきた。

そして、ゆっくりと襖が開けられて、一人の女性が姿を現した。

彼女はゆっくりと歩いて卓袱台のそばに正座をして、言葉を掛けてきた。


「こんにちは百地桜です。

話は隣で聞いていました。

この前は大変お世話になりました。

お久しぶりです、村田さん。」


その姿は、俺の知るアイドル時代の彼女ではなく、去年のお見合いパーティーお帰りの夕方、偶然にも酔っぱらた探索者から助けた楓さんと一緒にいた、あの時から俺は楓さんのお姉さんと勘違いし続けていた、見た目70代後半の女性その人だった。


どうりで、あの時彼女に会った時、懐かしいというか既視感を感じたわけだ。







作者は高校生の頃、原田知世さんのファンでした。

映画「時をかける少女」、「愛情物語」を映画館のスクリーンで見ました。

同じ頃、アニメ映画だと「風の谷のナウシカ」も、公開初日に一番に並んで見たのも懐かしい思い出です。

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