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口下手な男の下手な駆け引き

作者同様、主人公は空気は読むのが下手、人と渡り合うのもへたくそです。

何とか受付嬢にアポイントを取って貰い、約束を取り付けた翌日の火曜日、ダンジョン協会の入ったビルに、いつも通りに番後札を機械から受け取って、椅子に座らずに1時間ほど待っていると、俺の番が廻ってきた。

そして、昨日と同じ受付嬢のお姉さんに番号札を見せた。


「少々お待ちください。係の者が来ますので。」


そう言ったので、そのまま待っていると、警備員らしき男達が4人やってきた。

俺は何となく展開が分かってしまった。

この姉ちゃんは、結局、アポイントを取ってくれるどころか、俺を犯罪者に仕立て上げたいらしい。

職務怠慢もいいところだと俺は思うな。


「ふ~ん。お姉ちゃん、これ見てくれる?」


俺は受付嬢にしか見えない位置の、受付カウンターの死角に右手を伸ばして、アイテムボックスから金色の巻物を取り出して見せた。

そして、お姉ちゃんが、目を大きく開いて驚いたのを確認すると、再び、アイテムボックスにしまった。


「さあ、お姉ちゃん、金色のスクロールを持った、あやしい農作業着を来た男が、会いたがっているって、出来るだけ話の分かる責任者に、アポイントを取ってくんな。

分かったら、さっさっと仕事をしな、お姉ちゃん。」


受付のお姉ちゃんは、昨日と同じく顔色を青くして、電話を掛けていた。

俺は、その間、後ろの低レベルの探索者の警備員達が、一生懸命に俺を5人掛かりで動かそうとしているが、軽めの竜の鎧とサイコキネシスで、受付の前で微動だにしないで、責任者がくるのを待っていた。


それから背広を着たいかにも官僚といった感じの、眼鏡を掛けた俺と同世代の中年が息を切らして、エレベーターから走ってきた。


「大変、お待たせしました。

ダンジョン協会、探索者部門、探索者総務部厚生課の課長をしています。

朝倉 聡といいます。」


「T県葛生市に住んでいて、大平山ダンジョンで探索者をしています。村田勇次郎です。

おそらく、これから長い付き合いとなると思います。

よろしくお願いいたします。」


朝倉と言う役人は、俺を取り囲んでいる警備員達を見てから、俺に対して丁寧な言葉使いで、


「ここでは何ですから、上の応接室に案内させていただきます。

君たち、村田様から、いい加減に離れなさい。

失礼ですよ。」


警備員達は、戸惑いながらも、俺から手をはなした。

俺は彼らの方を一瞥してから受付嬢を見ると、さっきより顔色が青く細かく震えていた、表情も何となく思わしくなさそうだったが、もしかして、俺が強く言い過ぎたか?

だとしたら、帰りにでもあやまっておくか。

俺は朝倉と言う官僚から名刺を貰い、朝倉さんの後に続いて、エレベーターに乗って、窓のない応接室に案内された。


「どうぞ、お座りください。

今、お飲み物をご用意させております。」


「ありがとうございます。」


俺が席に着いて暫くすると、厚生課の人らしい女性が、礼儀正しくお茶とお菓子を持って、部屋の外に出ていくと、朝倉さんは、こう切り出した。


「村田さま、例の物を確認させても宜しいでしょうか。」


「ええ、いいですよ、それと村田様ではなく、さん付けでお願いします。」


そう言いながら、再びアイテムボックスから、金色の巻物を取り出した。

すると、朝倉さんは、目を丸くして、


「む、村田様、いや、村田さんはダンジョンの外でも魔法が使えるのですか?」


「いや、魔法は使えない、今のはアイテム魔法でも収納魔法でもない、今のはスキルだ、俺はダンジョンの外でもスキルが使えるんですよ。」


「ま、まさか、どうして、スキルが使えるのです。」


「称号『試練を乗り越えし者』を取った時に得たスキルの一つ、『スキル限定解除』の効果です。」


「試練を乗り越えし者?」


「地下40階、80階、99階、最下層のボスを単独、つまり、一人で討伐すれば得られる称号です。」


「な!し、信じられません。でも、嘘ををつく理由もありませんし、

取り敢えず、この中身を拝見させていただきます。」


俺は朝倉さんが巻物の中身を確認している間、お茶と菓子を解析して念のため、毒がないのを確認しながら頂いた。

それにしても、横にある鏡の後ろの部屋で、さっきから出入りが激しいし、ずっと、こちらを伺っている、と言うより、マジックミラー越しに見ていて、会話も聞こえているんだけど、あれで隠れているつもりなのかな。




「・・拝見させていただきました。間違いありません。本物です・・。

村田様、失礼ながら、当然、中身をご覧になっていると思いますが、確認させても宜しいでしょうか。」


「あなたのご想像通り、中身は読みました。

でも、安心してください、家族の誰にも話していませんし、話せません。

俺の胸の中にしまっておきます。まあ、時が来れば世界中の人達が分かる事ですから、黙っていても問題ないでしょう。

頭の悪い俺だって、それくらい分かりますし、貴方たちだって、そう判断したんでしょう?

貴方も中々、強かですね。日本の官僚もやりますね。見直しました。」


「お、恐れ入ります。」


「ところで、さっきから隣の部屋の人の行き来と、話声が五月蠅いですね。

隣にいないで、ここへ来ればいいのに。

まあ、俺としては朝倉さん一人の方が、気軽で助かりますけど。」


そう言いながら、ミラー越しに一人一人に座ったまま、目を合わしてお辞儀をしてやった。

『竜の眼』では、この位の距離なら、地球で解明されていない、太陽の中性子線の様に降り注ぐ未知の、魔力線を捉えて、透視もどきも使えるし、『聴力感知』を使えば会話も聞こえる。

尤も、あくまでも、数メートルの距離限定だけだし、服を透視しようと思えば出来るが、俺は紳士であって変態ではない。


「き、恐縮です。」


すると、ドアにノックが2回、鳴ったあと


「失礼します。」


身長が俺と同じ位の、体ががっちりとした男が入ってきた。

すぐに朝倉さんは俺に、体格の良い男をを紹介をしてくれた。


「彼は警視庁特別探索課の長田雅治警部補です。」


「警視庁特別探索課、長田雅治です。よろしくお願いいたします。」


人が良さそうな丁寧な挨拶をしているが、実はさっき、俺と鏡越しで目を合わせている、彼も分かっているんだろうか?


「村田勇次郎です。さっき、隣の部屋で、眼鏡を掛けた太ったご年配の隣にいた方ですね。先ほどは、どうもすみませんでした。」


長田という男は、僅かに目を動かしたあと、


「いえ、こちらも失礼いたしました。」


朝倉さんは、空気を読みながら、こう切り出した。


「ところで、村田さんは、何処のダンジョンを攻略したのでしょうか?

この金の巻物は、各ダンジョンを攻略した最初のみドロップするアイテムのはずです。

村田さんの地元、大平山ダンジョンは既に攻略済ですし、村田さんの様な探索者の情報なら、噂になってもおかしくはないはずです。」


う~ん、俺の勘だと知ってるはずなんだけどな~。


「え~と、多分なんですけど、皆さん、知っているはずなんですが、実は我が家の敷地内の裏に、小型のダンジョンがあるんですが、俺は裏のダンジョンと言ってます。」


朝倉さんと長田さんは、お互いの眼で確認した後、長田さんは


「出来れば現れた時に、行政機関に通報して欲しかったですが、何故、我々が知っていると?」


「だって、組合ホームページを読めば分かりますよ。いるんでしょう?『観察』持ちの人。」


「「!」」


二人はひどく驚いた顔をした後、すかさず朝倉さんは、


「し、知っているですか。」


何をそんなに二人して驚いているんだ?


「知っているも何も、俺も『観察』を持っていますよ。だから、某大国やK国、北T国等が未だに、地下40階層のボスを討伐出来ていない事も知っています。」


朝倉さんは、すかさず俺に質問をした


「では、村田さんは今、現在、世界中のダンジョン内部で起きている事を知っているのですか?」


「?、いや、俺は世界中のダンジョンの名前と、攻略状況は分かるが、何が起きているかまでは分かりませんよ。!、そうか、組合の観察持ちは、俺のスキル『観察』の上位スキルですね。」


朝倉さんは、申し訳ない様に


「申し訳ありません、村田さん、今の事は忘れてください。極秘事項ですし警備上の問題も含まれています。」


「・・そう言う割には、色々と俺の事を探っている様ですけど、まあ、俺も自分の平和な日常を過ごすために、貴方方に、お世話になる事ですし、

貴方方も日本の経済の発展に、俺の力が必要不可欠ですしね、まあ、いいでしょう。」


朝倉さんは、おそるおそる俺に質問をしてきた。


「あのう、それは、どういう意味なのでしょうか?」


俺はお茶を一口飲んでから、間を開けて答えた。


「それには、俺の現在の称号から、お話ししなければいけません。

俺の今の称号は、『アイテムボックスマスター』です。」







会話のある文章って、以外と書くのに時間が掛かる上、ストーリーが進まない。

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