孤独な竜殺しはチートの夢は見ない
ザシュ! ヒュン! ザシュ! ヒュン!
家の裏のダンジョンを制覇した俺は、翌日の早朝から早速、新なスキルを使って裏山の木の枝の伐採に精を出していた。
スキル『スキル使用エリア限定解除』によりダンジョンの外でも、スキルが使えるようになった為、家の敷地内に伸びた高い位置にある木の枝を、レビテーションで浮かんでミスリルソードで伐採して、スキル『収納』でアイテムボックスの中に収納していった。
アイテムボックス内に入った枝はあとでダンジョン内に捨ててしまえば、24時間後には光の粒となって、ダンジョンに吸収されてしまうだろう。
ダンジョンに放置されたドロップアイテムは、24時間後には光の粒となって消えてしまうが、実は外から持ち込まれてダンジョンの床に24時間、移動されなかった物は同様に消えてしまうのが確認されている。
但し生命体や生命体が所有している物は別で、それ以外の物は少しでも動かさないと消えてしまう。
当然、亡くなってしまった者の遺体も例外ではなく、現在、日本のダンジョンでも数百人の探索者が行方不明なのは、つまりそう言う事である。
組合ホームページによるとダンジョンを制覇した人は、いや正確にはラスボスを討伐に参加した人には、称号『ドラゴンスレイヤー』の効果の1つ、スキル『セーブポイント階層移動』で、制覇したダンジョンの内部間のみセーブポイントを使って任意で瞬間移動をする事が出来る。
俺は称号『ロンリードラゴンスレイヤー』だった為、ラスボス討伐では手に入らなかったが、称号『試練を乗り越えし者』の効果でスキル『セーブポイント間移動限定解除』によって同様の効果が使えた。
但し「セーブポイント間の移動」の為、家の裏のダンジョン以外のダンジョンでも、一度でも触ったことのあるセーブポイントも適用している為、俺の場合だと大平山ダンジョンの地上部分と地下10階層下のセーブポイント間でも使えた。
今後の俺の方針だが、旅行で行った際には最寄りダンジョンの地上部分のセーブポイントを使って、家に帰って翌日にまた戻る方法で、「旅費を安くできるのでは」と考えたのだが、組合のログの事を考えると、ウッカリそのまま家で日常に戻ったらヤバイ事に気が付いた。
まあ、旅行のだいご味は、旅の移動と先々の旅館の食事とおもてなしだから、野暮でケチなことは考えない様にしよう。
セーブポイントの移動よりも、やはり『スキル使用限定解除』のほうが使い勝手は良いが、他人にばれると厄介なのは間違いなく、『サイコキネシス』、『レビテーション』、『バリア』、『回復』、『治療』、『竜の翼』、『収納』、『排出』は、目に触れてわかりやすいので、ダンジョンの外での使用は出来るだけ控えるのがベストだろう。
新しいスキル『竜の眼』だが、このスキルは使用しても俺の目が見た目で変化するのではなく、あくまでもスキルとして効果を発揮するみたいで、その効果は主に3つある。
まず一つは遠くの物がハッキリと見える、それも大平山から見た数十km離れた景色が、拡大ではなく、そのままのサイズでその部分がハッキリと見える。
しかも熟練度がました俺のサイコキネシスで、『竜の眼』と併用して数十km先の物を動かせる事もできた。
更に二つ目には特殊な視覚感知能力で暗視能力と温度感知も優れていて、まるでスターライトスコープの様に夜目が利き、サーモグラフィーの様に温度も見ることが出来る、しかも3つの効果を同時に併用する事もできる。
三つ目が透視能力で、20メートル位の距離なら厚さ30cm位のコンクリートを透視する事ができる。
新スキル『竜の翼』だが、これはレビテーションの高速移動版で、レビテーションの様にゆっくりとした動きや停止、空中歩行の様に細かな制御には向かないが、ハンググライダーの様な速度から、地上で走る俺と同じ位の速度での飛行が可能で、空中制御も急停止から急発進が可能で、コントロールの感じも何となくヘリコプターの様な感覚だった。
最後に『竜の鎧』だが、出来ればラスボス、ミスリルドラゴンの前で身に着けたかった。
簡単に言うと組合ホームページの動画で見た、身体防御魔法レベル5『オーラバリア5』の強化版のスキルで、身につけた装備もろとも、金色のオーラバリアで身を守るスキルで、Tシャツ1枚パンツ一丁でも、地下49階層のボスと徒手空拳で白兵戦が可能で、「最強の防御は最強の攻撃」を体現できるスキルだった。
更に試しにエルドラシリーズを身に着けて、再度ミスリルドラゴンと戦ったら、エルドラソードでバターを切るの様に奴を切り刻み、奴のレーザーブレスも衝撃や高熱をはじいてしまい、『竜胆』を使わずに一方的なワンサイドゲームで終わってしまった。
これまでの実験結果からエルドラシリーズを装備して、ダンジョンの外でもスキルが使える今の俺は、間違いなく危ない人だな。
いい年したオッサンは今更、俺Tueee!はしないんですよ。
社会を知ると穏やかな日常が一番なのです。




