兄は幾つになっても兄は兄
「たしかに、テレビでやってた様に非常識だな。勇次郎」
「うん、外側は、6メートル位なのに、内側は、幅・奥行・高さは、確実に50メートル以上あるもんね。あんちゃん。」
「そう言う割には、そんなに驚いていないな。お前は、」
「昔のSFハーレムアニメの中に、体育館位の宇宙船の中が、太陽系位の広さ、と言う設定から見れば、かわいい物だよ。そう言えば最新作が来月末に発売だったなあ。」
「確かに太陽系から比べれば、これくらい可愛いか。」
「それよりも、ホームセンターが、そろそろ開店する時間だ。木枠とブルーシートを買ってこよう。」
「入口を隠したら、テレビの情報が正しいか検証しようぜ。」
日曜日の朝食後、ダンジョンを見つけた俺は、兄に携帯で連絡後、家に来た兄と話合い、とりあえず、ブルーシートで、入り口だけ隠そうということを決めた。
実際、日本各地に現れたダンジョンの、土地所有者たちは、行政機関に土地を買い取られた。
なにしろ1か月前に現れた、ダンジョンは、小さくても1辺50メートル、日本最大のダンジョンにおいては、1辺90メートルの立方形の岩盤なのだ、他の土地所有者にとっては、邪魔以外の何物でもないし、管理だって、他人が中に入るのを24時間見張っている事など不可能なのだから。
だったら行政に丸投げしてもしかたがない。
しかし今日、家に現れたのは、ちょうど物置の影に隠れているし、入り口だけ木枠を作って、ブルシートで隠して、誤魔化そうという流れになったのは、仕方がないと思う。
「取り敢えずは、こんなものだろう、あとでドアでも買って、取り付ければ、少しは誤魔化せるだろう。」
「早速、草刈り機のエンジンを、動かしてみよう。」
実は、テレビ情報だと、ダンジョン内部は、地上部分から、燃焼機関つまりエンジンが動かないと、報道されているのだ。その他には電気系統も、通信機械や照明器具なら、問題なく使用できるが、同じぐ位の電気を使用する。スタンガンや電気銃などは、全く動かないそうだ。
「本当にエンジンを掛けたまま、中に入っても動かなくなるわあ。」
「電動アシスト付き自転車も駄目だね。これは意外だったけど。」
「パソコン・冷蔵庫・テレビも大丈夫、だけど何故か、洗濯機は駄目。」
「報道だと、プラモのモーターだけでも、駄目だったらしいけどね。」
「本当に人の動きを補助する機械は、ダンジョンは、受け付けないんだなあ。」
とまあ、四十過ぎのおっさん二人の、検証は夕方近くまで、外から見れば遊んでいた様だが、二人にしてみれば、真剣で、報道にある、他人様のダンジョンと基本的に同じ、と言う確証が欲しかったのである。
「そう言えば八王子ダンジョンの攻略が、30階層に到達したって、昨夜のニュースでやってたぞ。そろそろ、民間に低階層を開放されるそうだな。」
「日本ダンジョン省、ダンジョン組合、ダンジョン銀行、いよいよ日本は、探索者時代の幕開けかあ。」
「大平山ダンジョンが、開放されれば、家のコンビニも、安泰だな。」
「俺のアパートは部屋は、常に埋まってるけど、家の方も取り敢えずは、安泰だな。」
「取り敢えず、また何かあったら、すぐ連絡しろよ。すぐ来れるんだからな。」
「一応、俺も探索者になる事も視野に入れて、考えておくし、なっても、安全第一で行動するから。」
「わっかったよ。じゃあな!」
兄には、直球では話さなかったが、この時すでに決めていた。
ダンジョンに潜ることに。
光太郎は勇次郎が探索者になる決意を知っています。