表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/83

閑話 コードネーム『神託』のお仕事

私がそのダンジョンに気が付いたのは、本当に偶然でした。


私は東京都内に住む国家公務員の両親の娘として生まれ、私自身も国家公務員試験を受けて、キャリア官僚として生きるものだと、幼い頃から教育されてきました。

でも私には両親や兄、そして一つ下の妹の様な才能がありませんでした。

そのせいか、両親は私より兄や妹の方を可愛がり、私に対してはあからさまに冷たく扱われてきました。

虐待とまではいかなくても、お小遣いや誕生日プレゼントの差別、更にはとても他人には言えない言葉で罵られてきました。

でもそれは、八王子に住む母方の教師だった祖父母の知る事となり、中学校からは祖父母の家で住み、祖父母の愛情によって心を癒し、青春を謳歌してきました。

高校を卒業して地元の市役所に就職して、2年目の冬にダンジョンが世界中にあらわれました。


祖父母の経済状況は悪くはありませんでしたが、私の為に貯蓄を切り詰めてくれた祖父母に、少しでも恩を返すため、私は休みの日には八王子ダンジョン内を探索して、アルバイトをする事にしました。

パーティーのメンバーは5人で、私を含む職場の先輩達とで、油断しなければ大丈夫とされるスライムエリアで、お金を稼ぎましょうとなり、順調に攻略していきました。


そして、私にとって運命の日がやってきました。


地下8階層でスライムを倒した後に、青い巻物『スキルスクロール』がドロップされていたのです。


換金するかスキルを手に入れるか、迷いましたが結局、巻物を使う事にしました。

他の人達は『暗視』や『忍び足』『気配感知』『熱源感知』などを手に入れて、私が最後の番となり巻物を使って手に入れてたのは、


『ダンジョン観察』と『称号大全』言うスキルでした。


スキル『ダンジョン観察』は世界中にある、人が立ち入ったダンジョンの名前とダンジョンの地図がマッピングされ、更に中にいる人や魔物の影が見ることが出来きました。

探索している人の姿は、真っ黒な形でハッキリと見えませんでしたが、魔物の影との動きを見る事で、戦闘状況がリアルタイムで把握する事が出来ました。


そして興味深いのが『称号大全』と呼ばれるスキルは、称号の情報が頭の中でインストールされ、大まかに称号で得られる能力や適性確率が分かる事でした。

残念ながら称号の取得条件は分かりませんでしたが、世界中にいる称号持ちの人数だけは分かりました。

勿論、どこの誰が、どの称号を持っているか等は分かりませんでしたが、このスキルの有用性と所持している危険性を、その場で理解したので少し考えたあと、パーティーの先輩達には申し訳ありませんでしたが、スキルを獲得出来なかったと誤魔化しました。


後日の仕事帰りに八王子ダンジョンの責任者の方に、私のスキルの能力の事をお話し致しました。

そこからは、非常に慌ただしく事は動き、私のスキルの検証やら情報の正確性やらテストを行い、何だか聞いたことがない役職の方まで現れて、更に霞が関のビルで手続きで、いつの間にか地方公務員から国家公務員に身分が変わっていて、「大学に入学していない20歳です」「経歴詐称の犯罪ではのですか?」、と言っても、皆さんは全く問題ないと言われました。

私の役職・身分も両親や兄より上になり、ひと月のお給料も公務員探索者として振り込まれて、市役所職員として働いて来た2年は一体何だったのでしょうか。


勿論、良い事ばかりではありません。

私の勤務時間は基本8時から5時までですが、突発的に真夜中に呼び出され、迎が来てダンジョンに出勤して、護衛をされながらスキルを使う事も多く、プライベートでも同世代の女性の護衛の方に守っていただき、視界にはいませんが常に護衛がいると聞いております。

また週に4日は、八王子ダンジョンだけでは危険なので、関東首都圏のダンジョンを周る為、大変ではありますが、週に2日は自宅で過ごさせていただく為、仕事ではストレスという物は無縁と言っても構わないでしょう。


某大国の軍隊の人達が、地下40階層のボスとの戦闘を5回リアルタイムで観ました。

この時は実際にに亡くなっていく姿を見たわけではありませんが、魔物の行動で何となく予想と想像できてしまい、ショックで熱がでて寝込んだり、眠れなかったり、食欲がなかったりと大変でした。


それでも周りのサポートに恵まれたおかげで、何とか気持ちも落ち着いて、事務的にスキルを使える様になって、心が強くなったと同時に、綺麗ごとだけでは生きていけないと、改めて思いました。

でも心の何処かで、人としての良心だけは失うまいと誓いました。


ダンジョンが現われて1年が過ぎたある日、地元の八王子ダンジョンが、地下100階層を制覇したのを皮切りに一つ、また一つと制覇してゆき、世界中でもダンジョンが制覇されて行きました。

但し、その中には某大国や、K国の様に地下40階層はおろか、30階層すら到達していないのに、ダンジョン制覇を発表した国もいました。

上司の方が言うには、プライドとか威厳を保つための虚勢だとの事で、無視して下さいとの事でした。

上には上の苦労があるのですね。


世界中のダンジョンの制覇状況を整理する為、たくさんのダンジョンを頭の中で真横から比較しようと、何となく思いついて、国や大きさに関係なく進捗状況事に整理して、深い方から頭の中でスクロールした時、アメリカの様に面積の大きいところから、日本のダンジョンの平均的な大きさ、そして面積の小さいダンジョンへと移行した時、非常に小さいダンジョンが他のダンジョンの間に、まるで細い紐の様にあるのが分かりました。


私が驚いたのは、そのダンジョンが日本語表記で『家の裏のダンジョン』となっていた事と、発見した時には地下100階層を、現在進行形で攻略を開始されていた時でした。


私の報告を受けた上司の方は大変驚き、私も霞が関のビルに赴くこととなりました。


私はスキルで分かる範囲で、未知のダンジョンの情報をお教えいたしました。


面積、攻略状況、魔物の分布状況など出来る限り、お教えいたしました。

でも皆さんが一番驚かれたのは、戦闘状況から攻略者は、お一人だという事でした。


魔物を討伐する速度や、影が縦横無尽に動き回るスピードから、その方はとても強く、素早く、そして信じられなく魔法の達人だと予想が出来ましたが、私のスキルでは、その方の顔、姿、体格、年齢などは分かりませんでした。


一体、どんな人なのでしょうか、少し興味があります。




スキル『ダンジョン観察』と『観察』は別のスキルです。

『観察』の上位が『ダンジョン観察』だと考えてください。

彼女のスキルは、まるで神の眼の様に見えたため、『神託』と呼ばれているのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ