俺ではなくアイテムがチートになった件
13か月で99階というペースは、世間のダンジョンでは驚異的なスピードではあるが、我が家のダンジョンに置き換えた場合、それは当てはまらない。
上から見て1辺500メートルの正方形でしかない、裏のダンジョンは世間のダンジョンの100分の1の面積でしかなく、ゲーム等で表現されるトラップ類も無ければ、時間制限のマップの変化もない。
更に俺はスキル『記憶』の上位拡張版『観察』のお陰で、迷う事無くダンジョンの攻略を進めてこれた。
このスキル『観察』は従来の『記憶』の俺が攻略したダンジョンの地図だけでなく、他のダンジョンで探索者達が攻略した部分の地図が頭の中で分かる様になった。
このスキルのお陰で世界中のダンジョンの探索状況が、文字通り手に取る様に分かる事が出来、面白い事にダンジョン名は所有国家の正式名称で表示され、その国の文字だけでなく、俺にも分かる様に日本語表記で表示される。
全人未踏のダンジョンの地上内部空間の入り口部分が地図にあり、その場合のダンジョンの名前は『・・・』で表記される。
この様に未発見のダンジョンの場所は表示されない為、どの国に存在するのかさえ分からない。
現在の俺の習得魔法レベルだが、収納・アイテム魔法ともに地下95階層時点でレベル5に達している。
収納魔法はレベル1『4K』から始まってレベル5で『64K』になっている。
1辺64kmの立方体のアイテムボックスは、さすがに大きすぎるとは思うが、一度に収納できる大きさが決まっているので、関東平野を収納なんて事には、ならないので安心して欲しい。
アイテム魔法レベル5『アイテム作成』『アイテム複製』を、地下80階層のボス戦後のドロップアイテムで身に付けた俺は、考えた挙句に選択したのは、地下1階層からの再探索であった。
ボス部屋の下、中回廊の小部屋にあるセーブポイントは、最後に使用したポイントから地上階を瞬間移動する為、正直言って再探索するのは、危険なうえ面倒かつ時間が掛かる。
それでも尚、俺は地下81階層から下を攻略するのに、どうしても欲しい物がある為、地下55階層から60階層の魔物、特に60階層のボス戦を複数回、戦う必要があった。
それを普通のドロップアイテムとして手に入れる場合、膨大な時間と膨大な魔物の討伐数が必要になるが、俺は偶然にも戦闘中に裏技として、そのアイテムの素体の入手方法を見つけてしまった。
その素体とポーションを『アイテム作成』で作ったアイテムを、『合成』に必要な512個を手に入れ、アイテム最高位レベル5を1個作り、戦闘でアイテム魔法として使用して、その後の戦闘を有利にして、再び攻略を開始し現在、地下99階層のボス部屋にたどり着いた。
これまでより圧倒的に広く天井が高い部屋で、そいつは俺が来るのを待っていた。、
地下40階層ボス『ベヒモス』
地下80階層ボス『グレート・・・』
2体の称号『試練を与えし者』に続いて、
3体目の『試練を与えし者』が、その恐ろしくも美しい姿で、空高く優雅に舞っていた。




