背中から近づいて来るのが未来
ただ静かだった。
自分の心臓を脈を刻む音すら聞こえているが、普段のリズム通り以上に冷静に感じる。
そいつは、入り口の反対側の壁際にいた。
しばらく待ったが動く気配がない、俺は一歩ずつ、ゆっくり歩き始めた。
目算で半分程、歩いた所で『解析』を行った。
メタモル=ベヒーモス
レベル 40
属性 火
称号 試練を与えし者
レベル40?・・そんな程度か、いや、某大国の軍人達を壊滅させた相手だ、気を引き締めろ、おそらくベヒーモスの基礎能力が元々が高いのだろう、探索者のレベルとは比較するな。
ん?奴の目が僅かだが光ったな、それに何だ、鑑定?解析?いや違う、似てはいるが独特の気配ではない、そんなに見られた感覚はない。
例えるなら「覗かれている」ではなく「見られた」様な感じだった。
え!中身が変わった?いや、変化した。
メタモル=ベヒーモス
レベル 41
属性 火
称号
試練を与えし者
名前とレベルが変化した、!来る
奴は俺に向かって突進してきたが、俺も同時に前へ踏み出しながら、右へ躱しつつ左前足の肘関節を切った、すれ違いざまに尻尾による攻撃で、左腕のバックラーで受けたが、僅かに痺れてしまった。
離れた所で奴はファイアーランスを放ち、俺は事前予測で大きく避けつつ、フリーズアローを試しに放った。
俺の魔法は奴の大きな体に刺さり、それなりのダメージを与えた。
なるほど、コイツの基本能力が大体、分かったぞ。
確かに大きさ重量は、ここまでの魔物の中で最大級、この大きさであの速さは驚異的な速さだ。
しかし冷静に見たならば、走力はボス・チーターの方がはるかに速いし、尻尾による攻撃は威力はあるが、ボス・キリンの音速の速さに比べれば、分かりやすく躱しやすい、魔法攻撃はボス・象とキリンの魔法と互角と言ったところかな。
つまり大きさと重量こそ大きく重いが、速さと魔法の威力・構築速度は俺の方が上か。
コイツがまだ、見せていない部分を見極める必要があるが、距離を取りつつ魔法をメインにして、隙あらば剣による攻撃を選択をしよう。
俺はフリーズランスで攻撃を行いながら、奴の突進・四肢・尻尾の攻撃を躱しつつ、四肢の足首への攻撃を行い、遂に突進攻撃を出来ない所まで追い込んだ。
すると奴は無属性の魔法防御魔法を展開した。
俺は奴の背中に乗り込む算段をしながら、正面から時計回りに廻りこもうとした。
すると突然、俺の体が動かなくなり、奴の方へ引き寄せられる様に空中に浮かんだ。
咄嗟に溜めておいたフリーズランスを放った、それは偶然にも奴の右目に突き刺さり内側を凍らせた。
何だ今のは?魔力が感じられなかったから、スキルか?おそらく超能力、サイコキネシスだろう。
只、攻撃できる類のものではなく、物を壊さない様に浮かせ動かせるスキルなのだろう。
それに弱点もある、魔法で攻撃してこなかった事から、魔法との両立はおそらくコイツには不可能だろう。
更に魔法攻撃が通った所を見ると、持続時間が最低1分は持つ魔法防御が、強制解除された感じだ。
もう一つ発見、今、俺は奴の死角を取り続けているが、サイコキネシスで捕まえる事が出来ない様だ。
油断大敵、残心、残心、心に隙を作るな。
奴の右側の後ろ足首を切り落とし、尻尾の付け根を切りつけ、左後ろ足首を切り落とし、更に左前足に向かおうとした時、両前足と尻尾に事前予測を感じ取った俺は、慌てて奴から大きく攻撃範囲から離れた。
驚いた。コイツこんな事も出来るんだ。
奴はジャンプして空中に留まり、遅いながらも空中で転回して、左目で俺の姿を捉える事が出来た様だったが、サイコキネシスで、俺を捕まえる事は出来ない様に思えた。
どうやら今のコイツのレベルでは、レビテーションとサイコキネシス・魔法の両立は出来ないようだ。
助かった、本当に両立する事が出来ないのか、ただ単にコイツが使いこなせないだけだったか、いずれにしても、確かにお前は強敵だったよ。
お前のレベルが低くて、お前が未熟で本当に助かった、心の底から本当に、そう思うよ。
俺は素早く奴の右側の死角に、回り込みながら魔法を構築していった。
氷魔法ならレベル4に相当する魔力を使用し、フリーズボムの様に爆発ではなく、貫通させる為の魔法、誰もが思いつく圧縮された高速ブリットを放った。
「フリーズショット」
放たれた魔法は、奴の首の右側付け目に命中をして、内側で分裂して反対側から、大きな爆発して出てきた。
その衝撃で空中にいた奴の体から首が離され、大きな体と共に床に落ちて倒れた
光の粒となって消えた後には、白い液体の瓶が4本と赤いスクロールが落ちていた。
単独による『メタモル=ベヒーモス』の討伐を確認しました。
称号ブレイブハート』をてにはいりました。
『ブレイブハート』の効果により
スキル『サイコキネシス』をてにいれました。
スキル『レビテーション』をてにいれました。
白い液体をアイテム鑑定をすると万能治療薬だと確認すると、4本とも収納し、2本を合成して万能治療薬2に変化させた。
赤いスクロールを使用すると
『収納魔法レベル2 8K』をてにいれました。
・・・・・・・
セーブポイントから地上に戻ると、まだ、お昼前なのに内部空間で、お母ちゃんが怒ったような、心配している様な、そんな顔をしている様だった。
俺はお母ちゃんが何か口にする前に、お母ちゃんに近づき両手で、お母ちゃんの肩に両手を置いて、
「アイテム魔法 万能治療薬2」
そう呟やき魔法のエフェクトが、お母ちゃんの体を包み込んで終わるのを待った。
すかさず解析で確認すると、緊張が緩み自然と涙が溢れ出てきてしまった。
俺は、お母ちゃんに抱き着いて、久しぶりに嗚咽と鼻水を交えながら、ガキの様に大声で泣いた。
やっとベヒモス戦まで来た。




