お母さん、我が家の『あのお肉』何処から来たんでしょうね?
「勇次郎、テレビで最強探索者芸人グランプリをやっているわよ。」
お笑い芸人が出るバラエティ番組が大好きな、お母ちゃんはテレビでやるスペシャル特番にチャンネルを回して、俺にリビングで一緒に見るように促した。
その番組は我こそは!と言うタレント事務所に所属している探索者芸人を募集して、予選を勝ち抜いて来た人達を集めて、スポーツテストの様に記録を測り、レベルアップの凄さをアピールするつもりなのだろう。
日本の芸能界の中には趣味で探索者をしている売れっ子タレントもいるが、女性モデルや芸能人の中にはレベルアップによるアンチエイジング効果を目的にした女性も少なくない。
只、本業が順調なタレントは、本格的に活動しているわけもなく、この特番に出てくるのはアルバイトで探索者を行って稼いでいる者がほとんどのはずだった。
実際、司会者とアシスタントの女子アナと、何人かの見た事がある芸人以外の参加者は、全員が無名芸人だった。彼らは優勝した時の賞金もそうだが、テレビで目立ってタレントとして、売れようと張り切っていた。
一般の探索者達は基本的にこう言ったテレビ番組に出ることは少ないと思う。それは高ランクの探索者になっていた場合、他国に誘拐されたり、ハニートラップを仕掛けられたりする可能性があるからだ。
日本では今の所そういう事はないが、実際にアフリカや中近東などでは誘拐されかけたり、家族を人質に取られたりして、働かされたりするケースがある。
中には子供を誘拐して奴隷の様に働かせて、上前をはねたりするケースもある。
ダンジョンのシステムに引っかかったりするのだが、ダンジョンの運営を行っているのが、テロリストやその国の上層部だったりすると、どうする事もできない。
現在、世界各国の中で、探索が進んでいるのは日本とアメリカで、ダンジョンの大きさが小さい分、八王子ダンジョンが世界でもっとも探索が進んでいる。
日本の探索者のトップは公務員探索者で、鍛えられた肉体と精神力とチームワークで、マッピングとボス討伐を効率良く進めていた。
日本の公務員探索者チームは、公務員としての給料の他に探索者としての手当てが歩合制で、支給されている。探索者と回収者で得た中から、その職種にどれだけ貢献したり、業務を行ったかで決まるのだが、ローテーションを組んで行っているので、ほぼ、均一した手当が支給されていた。
アメリカは軍人チームと民間人チームが、ほとんど互角で探索がすすんでいた。
アメリカは優秀な民間人チームと高額で取引をして、有力な情報やレアなドロップアイテム等を優先的に確保していた。勿論、彼らがドロップアイテムを民間の会社や金持ちに直接取引しても問題ないが、結局、高い税金を払う事になるので、そう言った事例は少なかった。
お母ちゃんとテレビを見ていたのだが、探索者芸人達の大部分は大した事はなかった。とは言え一般人から見れば、状況が違ってくる。
『100メートル走、優勝は土地丸選手で記録、7.1秒です、おめでとうございます。』
『400メートル走、優勝は軍間選手です。記録、35.2秒です、おめでとうございます。』
『片手重量あげ、優勝は茨着選手、記録は何と150㎏です、しかも、彼は利き腕ではありません、お前は本当に人間か?』
『垂直飛び、優勝は彩珠選手です、記録、200㎝ジャスト、おめでとうございます。』
「凄いわねえ、勇次郎。」
「ウン、ソウダネー。」
何て言うか、この人たちパーティー組んで地下20階層代を探索しているって言ってなかったか。
余程、凄い魔法やスキルに恵まれてんだな、何と言うか地力のレベルが低い、よくこれでテレビで出演する気になったもんだ。
運動音痴のこの俺が、単独で35階層のボスを倒して良い胸当てを手に入れているのに、探索者になって、日が浅い事を見ても、芸人とは言え、あんなに体格の良いマッチョな男が本当に情けない。
最前線で戦っている、公務員探索者から見れば、俺も似たような者か。
「勇次郎もあの人達位、出来ると良いはねー。」
「ソウダネー。」
お母ちゃん、最近うちの食卓に出てくる肉は、何処から来てるんだっけ?
その日の夜のニュースで某大国の軍隊が40階層ボスに、既に千数百人の犠牲者をだしている事、その結果40階層で攻略が止まっている事、それは日本やアメリカその他、攻略済の国の責任だと言って、40階層ボスの情報を公開しろと要求してきた。
翌朝には、日本、アメリカ、各国の政府、各国ダンジョン組織が合同で一般公開した。
5日後、再び500人の先鋭が挑むが、
一人残らず、全滅した。




