ヘタレな狼は犬の群れに紛れ込むのが上手い。
設定とある程度のエピソードはそろっているのに、なんで俺は表現力が下手なんだ。
「え!アイテム魔法ですか。」
「うん、そうだよ。」
本日は大平山ダンジョンで、月に何回かの給料を貰いに来ていた。
勿論隠蔽工作と情報収集をかねていたのだが、そこで俺は久しぶりにリア充大学生たちに出会った。
彼らは相変わらず羨ましい大学生活を送っていて、美人な彼女達と高橋君を、そのまま完成させた男前の5人で来ていた。
再会を果たした彼らと情報公開の手札として、収納魔法と誤解されない様にあえて、アイテム魔法をおとりにする事にした。
日本のダンジョンは一般人に自己責任で30階層の中型草食系エリアまで許可している。
勿論あくまでも見た目が草食動物に似ているだけで、実際には本物同様噛みつかれば痛いし、中には中型の肉食動物みたいなのもいる。
魔物と動物のイメージを間違えた油断しているととんでもない事にもなる。
実際に11階層から下では、死者は辛うじていないものの、重軽傷者も少なくなく中には部位欠損者や何人か意識不明の重症者もいる。
ポーション2ならば、手首から先、位なら新しく生やす事が瞬時に出来るが、所持していなっかたら悲惨な目に合う事になる。果たして本当に死者が出ていないかどうかは俺には分からない。
お互いの近況報告だが、彼らは目の前にいるエリート警察官の高橋君のお兄さんと今日から地下30階層に探索するそうだ。
現在の大平山ダンジョンの進捗状況は、40階層のボス部屋の前まで来ているらしく、現在は40階層のエリアのマッピングを完成させるのを優先させているとの事だ。
この程度の情報なら一般人に公開させても良いとの事だったので、高橋兄は高橋君に似たイケメン笑顔で話してくれた。
変わりに俺は10階層のフロアモンスターからアイテム魔法を取ったと言って、実際に魔石(水)を実演して見せた。
「という訳で、見事ハズレ魔法でした。」
「はあ。」
前回、斎藤君が言った事を思い出したのか、高橋君は何とも言えないような感じの表情をしていた。
そんな高橋君の心中をしってか知らずか斎藤君は口を開いた。
「俺達は・・」
斎藤君の言葉を遮る様に、俺は右手の掌を斎藤君に向けた。
「俺は君たちの個人情報を知りたい訳じゃないよ、斎藤君。」
「え、でも・・」
「俺が君たちに話したのは、君たちに話したほうが良いと判断しただけで、あえて、言うのならアイテム魔法は確かにハズレ魔法だが、それでも魔法であることには変わらないだろ?攻撃魔法や回復魔法・治療魔法や補助魔法の様な、華やかさはないけどね。」
「・・はい。」
さすがの斎藤君も俺が何を言いたいのかは、察してくれた様だった。多分、前回の後に高橋君から何か言われたのだろう。一瞬、高橋君の方を見たので俺にはすぐに分かった。
高橋兄は俺を見て
「村田さんは、この先どこまで攻略するつもりですか?」
「いや、攻略しないよ。」
「え、そうなんですか?」
「ああ、基本的に俺はここには、お金を稼ぐために来ているわけだし、あえて11階層から下を攻略する気もないからね、だって危ないじゃあないか」
「へえ、以外ですね。」
ん?高橋兄の様子がおかしい。
「いや、村田さんが何故か、こう言葉で口にするのが、難しいのですが、何となく署に来ている八王子の探索者と同じ気配とか雰囲気をしていたものですから。」
「いやいや、誤解だよ。第一、俺はここに、何回かきているだけで他のダンジョンにだって、行った事もないよ。」
やばい、こいつ気配感知でも持っているのか?
「本当ですか?」
何だか警察官から尋問を受けた、24時間警察の挙動不審者みたいじゃあないか。
「はあ、全く疑うのなら実際に俺のログを調べれば良いじゃあないですか。」
俺はため息をつきながら高橋兄に言った。
すると高橋君が空気を読んで俺に助け舟を出してくれた。
「兄貴も村田さんに対して何で職業病を出しているんだよ。」
高橋兄は苦笑しながら軽く会釈して
「大変不愉快な思いをさせてしまって、申し訳ありませんでした。」
この兄弟はなんて華のある笑顔をしていやがる。これ以上何も言えないじゃあないか、言うつもりもないけど。
この後は彼らが、セーブポイントを使ってダンジョンに向かったのを確認して、俺は午後4時に換金所を後にする途中、ガタイのでかい2人と俺より少し若い精悍な感じの男とすれ違い、斎藤君位大きい奴がいるなあ、俺の下に世代はあんなのがゴロゴロいるんだと思い家路についた。
勇次郎はヘタレです、だから小細工をするのです。




