閑話 ああ、素晴らしきかな、人海戦術(残酷な描写あり)
生まれて初めて、文字で戦闘シーンを描きました。難しく一番、時間がかかりました。
『どうしてこうなった。』
『我々の戦力は、日本の戦闘力を総合力では、確実に勝っているのに。』
『300人じゃあ足りなかったのか』
私を含めた現場の将校達や残り少ない兵達が、目にしているのは、この戦闘空間の入り口付近に陣取っている、敵性疑似魔力構成体と、その近くにある炭となった、魔法特化型の司令官の変わり果てた姿だった。
我が某人民国の、政府の高官や軍の上層部は、「世界に先んじて、迷宮を攻略するべし」とスローガンの元、行なった作戦は、我が民族の昔ながらの、兵士の大量導入であった。
国や我が党に絶対服従を誓った、優秀な人材は、『それなり』の消耗をだしながらも、迷宮を攻略していった。
11階層からは、我々の膝程の大きさしかない、兎や猫のような四足歩行の小動物のモンスター達は、確かに地上にいる小動物より速く、ありえない動きや、攻撃をおこなうが、レベルアップした我々の敵では、なかった。
21階層からは、馬・鹿・豚などの中型のおもに草食動物モンスター達だった。
31階層からは、それまでとは違い、肉食動物や、象・キリンといった大型草食動物のモンスター達だった。
31階層からの、損耗率は、これまでとは、比べるとあきらかに違っていた。
隊員たちも当初からの顔ぶれが、3割程変わったが、世界最大のこの迷宮を攻略すべく、続々と、後発部隊が、参加している為、戦力には、不足はない。
少なくとも39階層までは、ボスと呼ばれるモンスターも、我ら精鋭部隊の集中攻撃によって、打ち消してきた。そして、この40階層のフロアモンスターも多少、強いだけで39階層と変わらなかった。
通常、一般兵達は、ポーションは元より、スクロールを使うことは、禁じられている。
スクロールはドロップしてから、約24時間後に、モンスター同様、光の粒となって、消えてしまう。
また、使用人数も最大8名までで、魔法やスキルが手に入らなくても、最後の1人が、使い終わると消えてしまう。その為、ダンジョンを禄に入ったことがない様な、軍の高官や政府役人・また将来が約束された、彼らの息子や軍人・学生が、優先的に使われた。
我々を指揮していた司令官も、そんな一人だった。
私は田舎出身の貧乏農家の二男として生まれて、才能と努力を惜しまずここまで、這い上がってきた。
時には、友を裏切り、才能ある後輩の芽を摘み取り、運良く、同じく平民出身の上司に巡り合って、スクロールを、使う事を許された。
私は回復魔法と身体強化魔法を手に入れて、司令官が万が一、怪我をしても対処できるように、保険代わりとは言え、そばに置かせていただいた。
日本の探索者達が、8名のチームが40階層ボスを倒した、と情報を得た我が軍は、日本に追いつくべく、情報を得た翌日に、40階層ボスを討伐に向かっう様に命令が出た。
最初、目視で500メートル先、部屋の反対側の壁際に、初めて見る15メートル程のモンスターが静かに佇んでいた。『鑑定』持ちに確認させたところ、それまで聞いた事がないモンスターで、レベルも低かった。
見た目、鈍重そうな姿で、いつも通りの展開だと確信した。そう判断した我々は、そいつに対して、前衛・後衛と陣を構え、作戦通りに左右に散開して、奴の逃げ場を防ぐ陣形をとった。
我々が陣形を構え終わったころ、モンスターの目が、わずかに光っているのに気が付いた。
魔法使いたちが、各々の魔法を構築している間に、司令官は、第一攻撃を放つ為に構築しておいた、魔法を放ったと同時に、奴はすさまじいスピードで、部隊の右側に突っ込んで、攻撃してきた。
そこにいたのは、明らかに先程とは全く違う、進化した様な個体だった。
体付き、色、凄み、威圧、獣性、殺気を纏う、王者の風格を持った化け物が目と鼻の先にいた。
そこから先は、我々は蹂躙されるだけだった。
我々の槍が、剣が、棍棒が、斧が、全く歯が立たず、武器が壊れていくだけだった。
我々の放つ魔法は、奴の周りにある膜に、はじかれて、通じず。
そして、真っ先に逃げたはずの、司令官は、ボス部屋の入り口の前で、いつの間にか、入り口の前にいる、奴の放った魔法で、取り巻き共々、炭と化した。
『奴ら(日本人)は、どうやって、こんな化け物を、殺したんだ!』
そう思いながら
私は故郷に置いてきた、父、母、兄夫婦、可愛い姪御達の顔が、頭の中では、駆け巡っていた。
40階層のボスは、世界中のダンジョン共通して、同じモンスター、同じ強さ、同じ能力です。
本当に勇次郎は、ひとりで倒せるのでしょうか。
作者は、今のところ、勇次郎にひとりで、頑張って貰うつもりです。




