「隣の芝生は青い」そう言っておきながら、「自分の庭の芝生は、もっと青い」と気ずかない馬鹿が、ここにいる
キーワードに「勘違い」・{チート」をいれるかどうか、本当は迷ったんですよ。
東京都内にある八王子ダンジョンを、バランスのとれた若きエリート8名が、上からの命令を無視して、40階層を独断でボスを倒した事で、厳重注意をうけた頃、『迷宮省』つまり『ダンジョン省』の上層部では、当初から懸念していた深刻な問題に、直面していた。
ダンジョン内でのドロップアイテムの輸送が、効率的ではないからである。燃焼機関がつかえない為、人力でのリアカーを使用して運び、階段は文字どうり人力で、上の階のボス部屋の途中にある、セーブポイントで待機している、リアカーに載せて地上空間に持ってくる、という手段しかないからである。余談ではあるが、下の階からボス部屋に戻る事が出来ない事を、ここに記載しておく。
ダンジョン省の上層部は、ダンジョン攻略の優先を、『多少』遅くらせて、公務員探索者の全体的な、レベルの底上げを図り、また、日本各地のダンジョンの攻略の平均化、をはかることにした。
講習会で知り合った、体育会系大学生と、その彼女達と分かれた俺は、再びダンジョンの地下1階層を、小1時間程、階段で降りて探索して、地上に戻ってきた。公務員探索者がせっせとと鉱物資源を、運び出してダンジョンの外にある、倉庫の様な検品所に、運び込んでいる横を通り、買取所で、俺は家のダンジョンで採取した、鉱物資源を、キャリーバッグ1個分を換金した。
それぐらいの個人の買取が、不自然ではないと判断したからだ。実際、俺の前に並んでいた、年配の探索者は俺より大きいキャリアバッグを、重そうに引きずっていた。
「本日は、ありがとうございます、運が良かったですね。最近だと、こんなに鉱物資源だけを、納めることは、めったにないんですよ。」
「・・ははは・・た、偶々ですよ偶々。」
「税引き133800円になります。ありがとうございました。」
俺は使い道の分からない、重さの割に二束三文にしかならない、自宅の敷地内の裏山の岩の、目立たない場所に放置して、ブルーシートで隠してある『魔石』以外の鉱物資源を、適当に種類を混ぜて、キャリアバック1個分を換金した。
エンカウント率の低いスライムエリアから戻った俺は、少しだけやり過ぎたようだ。
なるほど、前に並んでた年配の探索者の方は、魔石を含めていて、バッグいっぱいには、入っていなかったようだ、引きずっていたのは、ただ単に疲れていただけ、だったのだろう。
『これからは気を付けよう、反省、反省。」
スーパーで勤めていた頃、残業がつけられない月の、手取り額よりウン万円少ない、お金(給料)を1日で、稼いだ事になった俺は、出来るだけ目立たない様に、自然に換金所を後にした。
「・・・『アイテム魔法』は、・・・ハズレ魔法・・・」
家路に着くペダルを漕ぐ俺の頭には、リア充大学生の、無自覚な言葉で満ちていた。
「言い返せねえな・・・リポシードリンク10本分のアイテムボックスだなんて・・・。」
将来とお金と、・・無意味な嫉妬に悩みながら、軽いめまいを自覚しつつ、母が待つ家に戻っていった。
一方その頃、隣の大陸の某大国では、世界最大のダンジョン、40階層のボスに挑んだ、某大国の先鋭300名の軍人パーティーが、一人残らず壊滅した。
俺がその事を知ったのは、3か月、経ってからだった。
勇次郎はこの時点で、戦闘面ではないところで「チート」です。
「最強」ではないけれど「チート」です。




