表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の剣~88の輝き~  作者: 春春
9/10

『エトワール・ローレンスⅡ』

『教会は8つの国と不可侵条約を結んだ。また、8つの国同士でも条約を結ばせた。教会が8つの国に要求したことは、今後他国への侵攻をしないこと、各国に教会を設置することである。8つの国は教会の要求を受け入れた。

 その代わり8つの国は二つのことを教会に要求した。一つは、8つの国に十二分に土地を与えることである。この要求は教会側にとってたいして問題ではなかった。しかし、もう一つの要求は教会にとって最悪の要求だった。それは、今後自国で手に入れた星剣は教会の干渉を受けないというものである。

 教会は8つの国の監視と星剣の収集という理由で教会の設置の要求をした。教会は、8つの国が星剣の収集を行うことは分かっていたのである。そして、星剣を手に入れれば教会で回収しようと考えていた。独裁的ではあるがこれが争いをなくす手段と考えられていた。しかし、手に入れた星剣に干渉できないのであれば何の意味もない。

 8つの国は、二つ目の要求がのめないのなら他国への不可侵を約束することはできないと言っている。教会は世界の平和のためこの要求をのむことにした。

 この条約により、星剣は教会の管轄下から離れることになったので、星剣を探す者はさらに増えることになった。                                  -星歴書より-』


「私は、メグレズ“知識”の力に適合した第四番目の巫女です。」


 エトワールの言った内容についてエリザとダリウスは何を言っているのかわからなかった。しかし、アスクとエトワールのやり取りを見る限り、自分たちのような一般人は決して知らない、あるいは知られてはいけない内容だということは理解できた。


「お二人が知らないのも仕方がありません。まず、何からお話しするべきでしょうか。」


 そう言ってエトワールは顎に手をやり考える素振りを見せる。一方、エリザとダリウスは自分たちがどのようなことを聞くべきかわからなかったのでエトワールの発言を待つしかなかった。


「お二人は星剣が教会によって二種類に分けられていることを勿論ご存知ですよね。」


 エトワールの言った通り星剣は教会によって二種類に分けられている。「刻印もち」と「無印」との二種類である。星剣の見た目は二種類とも、形の違いはあるものの刀身が光を放っていることに変わりはない。しかし、「刻印もち」はその名前の通り鍔の中央に刻印が刻まれている。これが、星剣を見分ける目印である。

 だが、教会は刻印のあるなしだけで星剣を分けたわけではない。星剣を分けた最大の理由は星剣から与えられる力の違いである。

 星剣は過去の魔族との戦争で人間が魔族を退けるために、神が自らの力を星に宿し地上へ落した。その星が剣へと姿を変え今の星剣になっている。だが、神の力を宿した星剣はこの世界に88本しか存在しない。

 この世界に星剣と呼ばれる剣はごまんと存在する。その星剣を握ると身体能力が向上し、常人の2倍3倍以上の力を発揮することができる。しかし、「刻印もち」は身体能力強化とは別の力を人間に与える。与える力は星剣によって様々で、全ての「刻印もち」がどのような力を与えるのかは把握しきれていない。だが、一つ言えることはどの「刻印もち」も与える力は一国をその星剣一本で滅ぼせる程に強大だということである。この圧倒的な力の差から教会は星剣を二種類に分けたのだ。

 エリザもダリウスも星剣が二種類存在することは知っている。多分この世界の人間なら知らない人間はいないだろう。二人はエトワールの言葉に黙って頷く。


「その『刻印もち』の中に“ウルサ・マヨル”という星剣が存在するのですが、私はその星剣と深い関わりがあるのです。では、その星剣について」

「ちょっ、ちょっと待って!そんなこと私たちに教えて大丈夫なの?教会に消されたりなんてしないわよね?」


 エリザはエトワールの話しを語気を強めて途中で遮る。同時にダリウスもエトワールの話しを止めようとしていた。ここでようやく二人は今からエトワールが話す内容の重要性に気づいた。

 星剣の名前とその力を説明する。これは「刻印もち」の星剣を持つ者なら決して行わないことである。なぜなら、相手に自分の星剣の弱点を晒し対策を考えてください、と言っているものだからだ。敵になら尚更言わず、味方にも信頼しているごく一部の人間にしか教えないのが常識である。

 それをエトワールは教会が必死に隠してきた星剣の情報を、何のためらいもなく教えようとしているのである。


「お二人がどのようなことを心配しておられるのかはわかっているつもりです。しかし、心配する必要はありません。この話しを聞いてお二人の身が危険にさらされることはありませんから。それに、情報を知っていても今まで普通に過ごしている方がおられますので。」


 そう言ってにっこりと微笑みながらアスクを見る。二人はどこからそんな根拠のないことを言えるのかわからない、といった顔をしているが、アスクという実例がいることがその証拠になる。多少の心配はあるが二人はエトワールの話しの続きを聞くことにした。


「話しを続けさせていただきます。先ほど話した“ウルサ・マヨル”という星剣ですが、通常星剣は一本に一つの力しか宿っていません。しかし、この星剣は一本に七つの力が宿っているのです。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ