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星の剣~88の輝き~  作者: 春春
8/10

『エトワール・ローレンスⅠ』

『88本の星剣の中には、特別な力を持つ12本の星剣があった。その12本を黄道十二星剣“黄星剣”と呼んだ。星教徒はその力の強大さから黄星剣を優先して収集することにした。しかし、教会側が手に入れられた黄星剣は一本だけだった。

 手に入れることができなかった残りの11本について、星教徒が数本見つけられなかったのもあるが、教会側に星剣の適合者が存在しなかったことが黄星剣を手に入れられなかった原因の大きな理由だろう。そのため、残り11本は他の者が手にすることとなった。強大な力故悪用されることを懸念した星教徒たちだが、11本の持ち主は大きな事件を起こさなかったので、星教徒はひとまず安堵した。

 11本の黄星剣が覚醒してから数年8つの国できた。黄星剣の持ち主のうち8人が自分の国を作ったのだ。しかし、残り3人は8人のように目立った行動をしなかったので、教会は三本の黄星剣の場所と持ち主を把握することができなかった。                          -星歴書より-』


 エトワールの言った言葉にエリザとダリウスは驚いていた。だが二人が驚くのも無理はない。

 この世界で「シュヴァリエ・ローレンス」の名を知らない者はいないであろう。この世界にはいくつかの国があり、それぞれに力があり少なからず世界に影響を与えている。

 しかし、この世界は星剣の存在が圧倒的な力と影響を与えている。その星剣の管理・収集をする教会はこの世界で一番の力を持っているといっても過言ではない。さらに、各国同士の争いの防止と星剣の収集のため教会は世界各地に教会を建てている。よって、世界の抑止力としても働いている。

 そんな教会の最高責任者であれば、この世界で一番の権力者ということになる。今対面しているエトワールがそんな人物の娘と知れば驚かない人間などいない。

 二人がエトワールに対してどのように接するべきかと考えていると、そんな二人の姿を見てエトワールが慌てて言葉を付け足す。


「むっ、娘といっても血縁関係はありません!私は元々捨て子でして、シュヴァリエ様に拾っていただいて養女として迎え入れていただきました。ですが、表向きは娘ということになっているのでそのように言ったのですが。混乱させてしまったようで、すいませんでした!」


 別にエトワールが悪いわけではないのだが三人に向かって頭を下げる。それからまた三人を見ていった。


「私のことはこれからもエトワールとお呼びください。接し方や言葉遣いを変えていただかなくても大丈夫です。今の私はシュヴァリエ様の娘としてではなく、エトワールという一人の人間として皆さんとお話ししているので。」


 そう言って真っ直ぐに三人を見つめて話す。その真剣な態度から、多分エトワールは誰と話しをしても地位や権力など関係なく平等に接することができる人間だと二人は感じ、今まで通り接することにしようと考えた。

 そんな話しを聞いた後どんなことを聞くのかと思ったエリザはアスクを見ると、なぜかアスクは驚いていた。


「何を驚いているのアスク?アスクはエトワールが教皇シュヴァリエの娘だって予想してたんでしょ?」


 そう聞かれたアスクだが、当の本人は二人とは全く違うことに驚いていた。そしてぼそっと呟くように言った。


「まさか、あいつに幼女趣味があったとは………。」


 アスクは大きく目を開き口に手を当て、知ってはいけないことを知ってしまったといった顔をしていた。アスクの発言にエリザとダリウスは思わずベッドからずり落ちそうになり、エトワールは苦笑いを浮かべている。

 エリザに「驚くところはそこじゃないでしょ」と言って肩を叩かたアスクは我に返った。アスクにとってはよっぽど衝撃的なことだったらしい。

 今度会った時からかってやろう、と小さく言ってにやっと笑うアスクの顔は恐ろしく悪い顔をしていた。悪だくみはひとまず措いときアスクは簡単に自己紹介をしたエトワールに質問をした。


「あいつの実の娘だと思っていたから捨て子とは驚いたよ。無理にとは言わないがシュヴァリエに会った時のことを聞かせてくれないか?辛いなら別にかまわないが。」

「大丈夫です、お話しします。私がシュヴァリエ様とお会いしたのは多分6歳頃でした。私は物心ついた頃から一人でして自分の年齢もわかりませんでした。ですが、シュヴァリエ様が私を養女にしてくださったときにおっしゃいまして、それから十年経ちましたので6歳頃かと。」

「じゃあ、今は16歳か。そんな状態ならどこで生まれたかもわからないな。」

「そうですね。どこで生まれたかはわかりませんが、6歳頃までどこかで育てられていた、という断片的な記憶はあります。ですが、詳しいことはわかりません。」


 エトワールの答えに嘘はなさそうだと感じ、アスクは次の質問をすることにする。


「シュヴァリエには会った時から今まで、何か特別変わったことを言われたりされたりしたか?」

「?いいえ、特別何か言われたりされたりなどはありませんが。強いて言うなら捨て子の私を大切に育てていただいたぐらいでしょうか?」

「どうしてそんなこと聞くんだよ?エトワールが教皇さんに何かいかがわしいことでもされてると思ったのか?」


 ダリウスがこのようなことを言うのももっともだ。「何かされたか」と聞かれればダリウスのように考えることもあるだろう。ましてや男なのだから。


「そんなことが聞きたくて聞くわけないだろ。俺はシュヴァリエが無意味なことはしない奴だと知っている。あいつのすることには何か意味があるはずなんだが………。」


 アスクはそう言ってエトワールをじっと見つめる。

 そんな見つめられているエトワールは、恥ずかしさ半分、困惑半分といった顔をしている。だが、ふとエトワールは先ほどからシュヴァリエについて語るアスクの口ぶりに疑問を感じたので質問をする。


「アスク様はシュヴァリエ様を呼び捨てでお呼びして随分親しいようですが、古い付き合いか何かなのでしょうか?シュヴァリエ様にそうような人がいるとは聞いたことがないのですが。」

「俺のことはアスクと呼び捨てで呼んでくれ。様付けで呼ばれる程偉くないからな。シュヴァリエとは、まぁ古い友人というか悪友ってとこかな。そんなに親しくはないがな。」

「教皇を呼び捨てで呼べるんだから親しいんじゃないの?」

「あいつも俺に“教皇”だの“様付け”だので呼ばれるのを嫌うから呼び捨てで呼んでるだけだよ。」


 エトワールとエリザの疑問にアスクが答えるが、この世界に教皇のことを呼び捨てで呼ぶ人は多分アスクだけだろう、と二人は思った。てか、古い友人ってアスク何歳?とダリウスに突っ込まれるくらいである。


「シュヴァリエと俺の関係なんてどうだっていいんだよ。それよりまだまだ聞きたいことがあるんだから覚悟しろよ。」


 そう言ってエトワールのことに話しを切り替える。アスクにとってあまり掘り下げて欲しくない話題のようである。


「この質問がある意味本命なんだが、その前にエトワールのそのローブの紋章については聞いても大丈夫か?俺がではなくこの二人がってことだ。」


 エリザとダリウスはアスクの質問の意味がわからずきょとんとしている。

 しかし、アスクがこのように言う理由がエリザとダリウスにはわからなかったが、エトワールは質問の意味をしっかり理解しているようで頷いて答える。


「やはりアスク様はご存知なのですね。ですがエリザ様とダリウス様に聞かれても問題はありません。むしろ、私のことを知っていただきたいのでぜひ聞いていただきたいくらいです。」


 そう言ってにっこりと微笑んだ。しかし、アスクに「様付けぇ」と言われすぐに苦笑いに変わる。その反応を見て諦めたのか、アスクはそれ以上何も言わず話しを続けた。


「エトワール、お前は巫女なのか?それとも今は何番目と言うべきなのか?」


 エトワールはアスクの質問をある程度予想していたが、「今は何番目」という言葉に驚きの表情を見せる。しかし、すぐに表情を戻しアスクの質問に答えた。


「私は、メグレズ“知識”の力に適合した第四番目の巫女です。」


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