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星の剣~88の輝き~  作者: 春春
7/10

『旅の理由Ⅲ』

『教会は星剣がこの世界にまだあるという知らせをうけた後、直ちに捜索を始めた。だが、星剣の捜索は順調に進むことはなかった。

 星戦以前では誰でも星剣を手にすることができた。しかし、見つけた星剣を星教徒が掴もうとすると、星剣は拒絶するように星教徒を吹き飛ばした。しかし、拒絶するのは88本の星剣だけで、他の星剣には何の問題はなかった。このような問題が各地で発生し、やむを得ず放置しなければならない星剣が多くでた。まるで星剣が意思を持っているようである、と当時の星教徒は語った。

 その後、星剣が見つかれば手に入れるため、我こそはと挑戦する者が後を絶たなかった。今も多くの星剣が世界のどこかに眠っている。                        -星歴書より-』


「おいアスク、いったいどこで話をしようってんだ?」


 どこに行くのか疑問に思ったダリウスは前を歩くアスクに疑問を投げかけた。後ろの二人も同じことを考えてるようである。


「この村で俺たち四人だけで話しができる場所は多分一つしかないだろう。」


 そう言ってアスクは少し歩いてから足を止めた。ダリウスたちが連れてこられた場所は自分たちが泊まっている宿屋だった。


「ここなら盗み聞きをされない限りは大丈夫だろう。まぁ、この村にそんなことをする人はいないと思うがな。」


 アスクの言葉に三人は納得し宿屋に入ろうとした時、ふとダリウスが言った。


「そういえば今回の森の件、村長への報告はどうする?」


 ダリウス自身忘れていて今思い出したようにアスクとエリザに問いかける。エリザは何も言わずアスクに笑顔を向ける。今はアスクとエトワールの問題だからアスクが決めて、と言いたそうな顔をしている。

 アスクは少し考えたあと、エトワールに質問をする。


「お前自身の話しをするのに時間はどれだけ必要になる?もしも夜までとなると村長への報告を先にしようと思うが。」

「それほど時間は頂かないつもりです。私のことを後回しにして、村長様への報告を先にしていただいてもかまいませんが。」

「村長には昨日の夜に一通り報告したし、今朝のは不安要素を消すための確認程度だからこれが終わった後でも大丈夫だろう。二人はそれでいいか?」


 アスクの考えを聞く前からどうするか決めていた二人は、すぐに頷きアスクに同意した。そして、四人は宿屋のアスクとダリウスの泊まっている部屋に向かった。


 二人の泊まっている部屋はいたってシンプルな部屋だった。ベッドが二つと机とクローゼットが一つずつ。一つのベッドはきちんと整理されていたが、もう一つのベッドは寝間着や腕当てが乱雑に置いてある。エトワールとエリザは聞くまでもなくどちらがどちらのベッドを使っているのか一目でわかった。エリザは呆れるようにダリウスに言った。


「こういうこともあるんだから、アスクを見習ってもう少し片付けなさいよ。ほんとだらしないわね。」

「別にいいだろ、ここは俺のスペースなんだ。俺が何をどうしようと俺の勝手だ。それにアスクには迷惑をかけていないし、自由にさせろ!」

「そういうことを言ってるんじゃないの!ローレンスからも何か言ってあげなさいよ!」

「わ、私は気にしませんので大丈夫ですよ。」

「ローレンスだってこう言ってるんだからこれでいいだろ!」


 エリザとダリウスが言い合いをし、いきなりエリザに話しを振られ困惑するエトワール。助けを求めるようにエトワールはアスクを見る。

 一方、アスクはこの二人のやり取りを見慣れているのか止めようともしない。だが、エトワールの視線に気づき仕方なく二人を止める。


「二人とも、そろそろエトワールに話しを聞きたいんだが?」


 アスクに止められ、決着がついていなかったのか二人は渋々言い争いをやめる。

 アスクはエトワールにどこに座ってもらおうかと悩んでいると、エリザが自らアスクのベッドに腰掛けたので、机の椅子に座るよう促した。アスクとダリウスはそれぞれ自分のベッドに座る。エリザはアスクが隣に座った時、なぜか顔を赤くして嬉しそうにしている。


「それじゃあ、全部話してもらおうかエトワール。」

「はい、わかりました。私は」

「おいおいアスク、酒場でも思ったんだがいきなり名前で呼ぶとは大胆だな。」


 エトワールに話しを聞こうとしたときダリウスが茶化すように話しに割って入ってきた。ダリウスの行為にまた余計な事を、と言おうとエリザが身を乗り出すのをアスクは止める。

 ダリウスの発言でまた二人が言い合いを始めるのではないかと思い、エトワールは慌てて答える。


「私は気にしませんので、そのまま名前で呼んでいたただいても大丈夫ですよ。もちろん、エリザ様とダリウス様も名前で呼んで下さっても大丈夫ですので!」


 だそうだ、とアスクはダリウスに向かって言う。だが、エリザもアスクが初めからエトワールに親しくすることに疑問をもっていたらしく、そのことをアスクに尋ねる。


「でも私の疑問に思っていたわ。アスクがこんなに親しく接するなんて珍しいもの。」


 エリザは少し悔しそうにアスクに問いかける。ダリウスは、だろっと言いたそうな顔をいている。そんな二人を見てアスクは早く話しを聞きたいが仕方ないと思い、一つ小さく溜息をついたあと二人の疑問に答える。


「ローレンス。この名前は俺の知る限り世界に一人しかいない、ある男の名前だ。俺はあの男があまり好きじゃないんだ。名前を呼ぶたびにあいつのことを思い出したくないから下の名前で呼んだ、ただそれだけだよ。」


 アスクのことだから何か特別な理由があってそう呼んでいたのだと思っていたが、自分の好き嫌いで呼んでいただけとわかり、ダリウスは拍子抜けし、エリザは少しホッとする。だが二人は、アスクの発言のある部分に疑問を感じた。そのことに対してエリザがアスクに向かって聞く。


「ローレンスといえば私も知ってるわ。王都オーベルヴィリエ教会の最高責任者、教皇シュヴァリエ・ローレンスよね。………え?てことは、まさか………!」


 エリザの驚きはダリウスも同じだったらしく二人してお互いの顔を見る。アスクは気づいていたので驚きはしないが、これ以上話しを振られるとエトワールの話しが一向に聞けないので、エトワールから話すように目で訴える。エトワールはアスクに応えるように、ゆっくりと話し始める。


「改めまして、私の名前はエトワール・ローレンスと申します。王都オーベルヴィリエの教会に所属する星教徒です。先程エリザ様がおっしゃったように、私はシュヴァリエ様の娘ということになっています。」

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