『少女との出会い Ⅳ 』
『大戦は続いた。王都を中心に発生した争いは戦火を拡大し、大陸全土にまで及んだ。星教徒は民の為、世界の為に星剣をふるい、魔徒は己の欲望の為にのみ星剣をふるった。
戦いが続いて数年、魔徒のもつ星剣が黒く染まっていることに星教徒は気付いた。星剣は神の力を宿し星のように輝く。星剣の力はふるう者の感情により大きく左右される。安心・感謝・幸福・勇気・信頼などの正の感情を強くもつと星剣は力を増す。一方、焦り・恐怖・嫌悪・嫉妬・殺意などの負の感情を強くもつと星剣は黒く染まり力を失う。
しかし、魔徒のふるう星剣は輝きを失っているにも関わらず、星の輝きを放っていた時の星剣と変わらない力を示した。この剣を負の感情を餌にする魔族から魔剣と人々は呼んだ。 -星歴書より-』
食事を終えた三人は、村長に依頼の報告をするために店を出ようとした。エリザが扉に手を掛けようとしたとき、勢いよく扉が開きローブを着た少女が飛び込んできた。
少女は飛び込んだ先に人がいるなどと考えていなかったので、エリザの存在に驚き避けることができずぶつかると覚悟した。しかしエリザは少女の突然の登場に驚きはしたが、すぐさま少女を受け止める態勢になり少女を受け止めた。
だが少女がエリザに飛び込んだ姿勢が前傾姿勢だったこともあり、豊満なエリザの胸に顔をうずめる格好になってしまった。
「やわらかい………。」
少女はうっとりとした表情でエリザの胸をふにふにと数回揉んだ後、はっとした表情でエリザから身を引く。そして、先程の発言に対し恥ずかしく思い顔を赤らめた。
エリザから離れた拍子にローブのフードがとれ、隠れていた顔が現れた。
零れ落ちた金色の髪はエリザよりも長く腰まで届いていた。店に差し込む光が少女の髪に反射し輝いて見える。大きくぱっちりと潤う金の瞳。透き通る様な肌により髪と瞳はさらに存在感を増している。少し幼さを残した顔立ちからはかなさを感じるが、それが少女の美しさを一層引き立てた。店の中が静かになるほど目を引く少女は、それほどまでに美少女であった。
そんな少女がエリザに向かって勢いよく頭を下げる。
「すいませんでした!ぶつかってしまって!慌てていて不注意でした。」
「気にしなくて大丈夫よ。怪我はない?」
「大丈夫です!ありがとうございます。……………あの、出会っていきなりで申し訳ないのですが、お伺いしたいことがありまして。」
(確か銀髪で赤い瞳で上下白色の服を着てるって言ってたよね。うん!)
少女は女医から聞いたことを思い出し尋ねようとしたとき、エリザの後ろにいる男の存在に気づき驚いた。少女が驚くのも無理はない。なぜなら、その男は少女が探している人物とそっくりなのだから。
そんな驚いた顔をした少女にじっと見つめられて、さすがに我慢できなくなったアスクは少女に話しかけた。
「俺の顔に何か付いてる?」
「い、いえ!何も付いてないんですけど………。」
少女は慌てて否定した後、何か言いたそうな顔でアスクをチラチラと見ている。そんな少女の態度にアスクはどうしたものかと顔を曇らせる。
困ったアスクは二人に助けを求めようと考え、まずダリウスに助けを求めようとしたが、こういう場面で気が利く男ではないとわかっていたのですぐにやめた。そして、エリザの方を見てどうにかしてくれと目で訴えかけた。
エリザはアスクの顔を見てクスッと笑った後、少女に話しかけた。
「さっき聞きたいことがあるって言ってたけど何かしら?」
「は、はい!その人を探してまして。アスクさんという方はいますか?」
そう少女は聞いたが、アスクへの反応を見るにもう見つかっているが念のためにといった感じに聞こえる。そんな少女の問いかけに、アスクは一歩前に踏み出し名乗った。
「俺がアスクだけど、何か用?」
アスクは少女が女医から自分のことを聞いて、助けた礼をしに来たのだろうと考えた。しかし、傷ついた人を助けるのは当たり前のことなので礼などいらない、と思いアスクは
「お礼をしに来たのなら別にいいよ。見返りを求めて助けたわけじゃないから。」
「もちろん、お礼をさせていただくために来たのですが、他にも用がありまして………。」
また少女は先ほどと同じように何か言おうかどうか迷っている。だが、少し悩み決心がついたのか少女はアスクの目を真っ直ぐ見て言った。
「アスク様!私の騎士になってください!」