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梟悪譚  作者: シープネス
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戦いの中でオルゴールの針は折れてしまい、体の楽器にもヒビが入った、もはや主である眠り姫の指示を思い出すことが出来ない・・・それでも幽霊管弦楽団(ファントムオーケストラ)の行動に迷いは無かった。


幽霊管弦楽団(ファントムオーケストラ)は、ずっとずっとずっとずっと・・・ずっとむかし・・・かつて白国と呼ばれた国が滅んだ日に生まれた。


あの日、起こった事を彼等は忘れない。

永遠を求める愚かな権力者、それを盲信する聖騎士、人間の暴走を諌められない無能な天使たち。

あの時の自分は・・・自分達は、愚かな計画の燃料となるべく集められた無力な存在だった。


誰もが目を背け、真相を隠蔽されて、例え罪人として名誉を汚されようと、そして自分達が面影を残す亡霊となりはてても、我々は決して忘れない。

世界樹の種の力を借りて、眠りの黒茨を生み出した偉大なる女王の慈悲を忘れた事など一度も無い。


しかし、運命は再び巡る。


傍らに立つ偉大なる主の娘から感じる世界樹の鼓動。

悍ましい天使、それを守る愚かな花守の聖騎士。

王族の匂いと天使の加護を感じる勇者の少年。


あの時と同じ、眠りと安らぎを引き起こす黒茨と同じように、

主たる彼女の心から世界樹の根が伸びて我々の内側に届くが、


”彼等は統一された意思の元で”

贈られる深い慈悲に満ちたその眠りと安らぎから逃れ、

主と共に戦うべく、自身の魔力を主に送り込んだ。



***


リンが心中に抱える世界樹の種が持つ【心を繋げる(バベル)】の権能が、

今・・・最悪の形でその効果を発揮する。


***



幽霊管弦楽団(ファントムオーケストラ)の正体は、亡霊化した下級天使の群体である。


彼等の本来の役割は”駒”である。

彼らは、本来であれば上位者に従うだけの存在であり、彼等だけでは行動や意思を統一出来ない。


そして、次なる役割は”砦”である。

醜く悍ましい祝福と光に満ちた天上世界から地上を侵略するべく、彼等は空よりも遥かに魔力に満ちたこの世界に送り込まれ、降り立った瞬間に地上の魔力を吸い上げて蓄え、橋頭保を作り上げる役割を持つ。



・・・。



簡単に言えば、下級天使が死霊化すると、馬鹿みたいな魔力許容量を持ちながら、全く魔力制御の加減が効かない。

主は人間だから魔力の供給を加減しよう、とかそういう事をそもそも思いつかないし、思いついても加減が出来ない。


眠り姫が彼等を楽器とオルゴール、そして楽譜で制御するのもオシャレだからとかそういう温い理由ではなく、単に直通回路を繋げると流れ込んで来る魔力で術者自身が爆弾化するからであり、もちろん眠り姫は彼等に望んで単独行動を赦しているのではなく、眠り姫であっても彼等を直接制御出来ないのである。



そんな相手を直接制御しようとするとどうなるか?

魔力を水とすれば、リンと死霊を繋げている世界樹の根は超巨大なホースであり、リンは氾濫する大河が直で流れ込んでくる小さい風船のように・・・


結論から言えば、リンは恐らくネクロマンサー史上最大圧力の魔力制御失敗により即死した、伝説になれるレベルの超失敗である。



死霊の魔力は人間のそれとは違って性質は瘴気に近く、一瞬で内側から爆散したリンから放出された凄まじく高濃度の魔力は都市の大通りと中央広間を含む店舗を軽く消し飛ばし、隣に居た幽霊管弦楽団そのものはもちろんのこと、他の死霊・人間・人獣・狩人・天使・勇者・近くに潜伏していた野次馬・マジックアイテム経由で戦闘の様子を間接的に観察していた青国騎士団の高速偵察兵など、様々な物を軒並み超高濃度魔力汚染により蒸発・霧散させた。


そして、周囲に拡散しつつも立ち上る魔力は肉眼でも目視できるほどの高濃度を維持したままで、その瘴気に近い性質と拡散圧より急速に高高度まで上昇。


はるか上空に通る大気性魔力ラインと接触して反応、都市周辺だけが一瞬で夜になったかのように黒い霧雨となって数分間降り注いだが、その場に居合わせた、もしくはその過程を運悪く直接・間接的に観察した者の大部分は蒸発しており、数少ない目撃者である爆撃を行っていた青・・・偶然通りがかった傭兵団は高速偵察兵が”霧散”した姿を見て即時撤退、後に今回の爆撃に関して青国騎士団は一切関わっていない事を声明として出した。



さて・・・歴史は勝者が作る物。



今回の騒動で序盤に死んだ者は祭壇から復活して、無茶苦茶になった都市に驚きながらも急ピッチで建物を再建し、街を掃除しながら次々と復活してくる都市の住民や冒険者たちと言葉を交わし、街の再建と共に準備を整えていく。


冬の少し寒い風が吹き抜ける焦土と化した都市の中心で、戦後処理を目的としたお茶会の準備が進められる。

誰が勝者なのか、それどころかどうやって負けたのかすら分からない、不安なアフタヌーンティーが・・・もうすぐ始まる。

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