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梟悪譚  作者: シープネス
39/41

39:竜星雨

後の公式な記録上において、今回の騒乱は、”駐留する衛兵隊長により、その場を通りがかった傭兵団を雇った上での武力行使により結末した”の一文に限られる。


当然ながら、この記録には非常に不審な点が多い。


この都市は国境に近いとはいえ、”偶然その場を通りがかった傭兵”とは、目撃者によれば”不自然に所属を隠蔽した”完全武装の100名近い飛龍兵団であり、そんなものが普通にそこらを移動している訳が無く、なにより資金面でも身分面でも一介の衛兵隊長に雇える兵力ではない。


また、文章内の”武力行使”の詳細は伏せられているが、実際に行われたのは超高高度からの爆雷石投下による絨毯爆撃である、一都市の騒動に対する行使にしてはあまりにも過剰すぎる。


”この傭兵団は、所属を隠した青国騎士団の飛龍隊である可能性が非常に高い。”

”しかし、勇猛果敢であるはずの彼等が都市に突入しなかったのは何故か?”

”彼等は【都市内に居る誰か】を恐れたのではないか?”


疑問は更に膨れ上がる・・・。


”国境侵害の恐れすらあるこの事態に対して、赤国は最後まで騎士団を派遣していない。”

”それどころか、この騒乱時に王都は厳戒令を発令、自体の全てを隠蔽している。”

”そして、この騒乱に対して一切の責任を追及する事すらなく口を閉ざした。”


・・・。


事件の真相を嗅ぎ回るとある情報屋は、当時の目撃者”から有力な証言を得る。

雨粒の如く降り注ぐ爆撃の中を、たった一騎で悠々と駆け抜けるナイトメアの重装騎兵。

そしてその腕に身を任せるフクロウの仮面を付けたネクロマンサーを見たと・・・。

哀れな目撃者は、路地の暗がりに怯えながら恐怖を押し殺したように呟く。



「・・・眠り姫の再来だ。」



***



リンは思った、100万回ほど思った。

今回の件が終わったら直ぐとこかに高飛びしよう。


ネコさんったら【とっておきのお宝】とか言ってたからてっきり、町の外に脱出できる緊急脱出トンネルでも用意してるのかと思ったら【青国騎士団のコネ】で街に爆撃してもらうとか馬鹿じゃないの?


しかも、この騒乱の中でどさくさに紛れて今後の政治的優位を取りに行くとか言い出して馬鹿じゃないの?


そして、私に爆撃を避けられるからって一人で暴れてきてくれって頼むとか馬鹿じゃないの?


それを受けて、爆撃の雨の中を突っ切ってる私も馬鹿じゃないの?


あ、今路地裏から私を指さした人、そういう表情をリンさんに向けるのは違うよね?


貴方が私に向けるべきは恐ろしいナイトメアとテラーナイトに誘拐されてる可愛い女の子を助けるための義憤の表情であって、この事態の黒幕を見たような絶望の表情を見せるのは違うよね?・・・あ、直撃。



路地裏に直撃した爆雷石が建物の壁を吹き飛ばしながら視界の端に消える。

血と臓物に染まる石畳も、ナイトメアの足を止めるには至らない。

降り注ぐ爆発の余波で飛び散る破片も、偶然にも飛んでくる誰かの流れ弾も、シャドウサーペントの装甲で守られた馬鎧を貫く事など出来ない。

本来であれば死霊がネクロマンサー意外と交じり合う事は有り得ない、しかし今彼等は、世界樹の種を通じて互いに繋がり合っていた。

心を繋げる(バベル)】、かつて人々の心を繋げようとして多くの所有者を狂気に追いやり、最終的に封じられた世界樹の種は、皮肉にも今、人ではない者同士を繋げることでその真価を発揮していた。


名も無き迷宮の怪物の瞳が降り注ぐ魔力弾を捉え、ナイトメアは駆け抜け、シャドウサーペントは常に流動してダメージを抑え、鋭く振るわれるホネッコの馬上槍が道を切り開く。


リンは馬上でテラーナイトの腕に抱えられたまま、尋常でないスピードで動く視界と事態をボーっと眺めつつ、これ万が一にも逮捕されたら罰金で済まないよね?などと場違いな事を考えていたが、世界樹の種が律儀にリンの疑問に回答する。


(過去の判例によれば都市への大規模破壊工作は、全財産没収と所属国領土からの1000年追放刑ですね。)



バレる前に金持って逃げよう。



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